二十四話〜紗雪の悩み〜
「白山さん、お待たせ」
「えへへ、早く行きましょう」
白山さんと一緒に廊下を歩く。
「星野先輩の部活紹介とても良かったですよ」
「そうかな? そう言って貰えると嬉しいよ。有難う」
「はい! どう致しましてです! 」
白山さんはまるで太陽みたいな性格だな……。見てるこっちまで明るい気分になる。
「ところで、どうして僕と一緒に帰りたいって思ったの? 」
「星野先輩に相談したい事が有ったからです」
「相談? 」
「はい……」
白山さんはそう言った途端に表情を曇らせた。
どんな内容の相談なのだろうか。
入学早々にイジメを受けたとかそういう類の物なのか…。
僕が色々と考えていると、白山さんが口を開いた。
「あの……実は私、中学の頃ソフトボール部に入ってたんですけど此処の部活にはソフトボール部が無いって部活紹介で初めて知ったんです……」
「そうなんだ……」
「はい……。受験する前に高校の情報を集めてなかった私が悪いのは分かってるんですが、代わりの部活に入るしかないですよね……」
「残念だけどそうなっちゃうね……」
落ち込んでいる白山さんを見るのが辛い。
ソフトボールに青春を捧げた日々が無駄になってしまったのだ。
きっと白山さんにとっては死んでしまう位に辛い事だろう。
「ですよね……。相談に乗って下さって有難う御座いました。少し気が楽になりました」
儚い笑顔を見せながらそう答えた白山さん。
「どう致しまして。余り思い詰めない様にね」
「はい! 」
白山さんに明るい笑顔が戻る。
「白山さんには明るい笑顔が一番だよ」
「えへへ……。有難う御座います! 」
その後、白山さんと帰り道が別れるまで色々な話をした。
「私の帰り道はこっちなので此処でお別れですね……」
寂しそうな表情を浮かべる白山さん。
「そんなに寂しそうな顔しなくても良いよ。また月曜日に会えるんだから」
「あはは……そうですね。じゃあまた月曜日にお会いしましょう! 」
「うん、じゃあね! バイバイ! 」
僕は白山さんに向かって手を振った。
「星野先輩、一緒に帰れてとても嬉しかったです! さよなら! 」
白山さんはそう言って自転車を漕いで行った。
今日は良い日だったな……。と思ったのも束の間。
「明日は先輩の家に行く予定が有ったな……」
僕は憂鬱な気分になりながら帰った。




