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二十話〜一歩前進?〜



「やっと終わったか……。お腹空いた……」


四時間目の授業が終わって昼休みになった。



「翔、昼から新入生歓迎会だな」


昇が声を掛けて来た。


「そうだね。昇は部活紹介に出るの? 」


「ああ、俺の華麗なリフティングを新入生達に見せてやろうと思ってな」


「成る程ね。昇はサッカーが上手いからね」


「はははっ! お前だって野球が上手いじゃねえか」


「僕は大した事無いよ。足は速いとは思っているけど長打力が無いからね」


僕のスタメンの打順は1番で守備位置はセンターだ。


「でもヒットを打って塁に出るのが仕事なんだろ? 」


「うん、他には盗塁したりね。守備にも関わって来るから奥が深いよ」


「それは分かるぜ。サッカーでもモタモタしてるとボールを相手に取られたり、味方がピンチの時に助けられなくなるからな」


「だよね」


昇とそんな話をしていると、二人用の弁当箱を手に持った光ちゃんが申し訳無さそうに話し掛けて来た。


「鳳君、話してる所ごめんね。星野君に話が有るんだけど……ちょっと良い? 」


「ああ、良いぜ」


「有難う。鳳君」


光ちゃんはそう言うと、僕の手を引っ張って廊下に出た。



「うわっ! ちょっと、蒼井さん! そんな事しなくてもちゃんと付いて行くから大丈夫だよ! 」


「ごめん、でも言いたい事が有ったから……」


「そうなんだ……。僕も聞きたい事が有る」


「うん、星野君から言って良いよ」


僕は何故光ちゃんが朝に元気が無かったのか理由を聞いた。


「……くれなかったから……」


「え? 」


「光ちゃんって呼んでくれなかったから……! 」


彼女の目には涙が溜まっていた。


「ごめん……。そう呼んだら嫌かなって思ったんだ」


廊下に居た生徒達が何事かと僕と光ちゃんの方を見ている。


僕に対して冷たい視線が突き刺さる。


痛くて辛い。


「あ……ちょっと場所変えよう……? 」


周りの生徒達に気付いた光ちゃんが言った。


「うん……。了解だよ」


僕と光ちゃんは視線から逃げる様に走って屋上へ向かった。



「急に泣いちゃってゴメンね」


落ち着いた光ちゃんが謝る。


「ううん、大丈夫だよ」


「有難う。前みたいな呼び方はしないでって言ったけど、また前みたいに呼んで欲しいな」


「了解だよ。光ちゃん」


「うん、有難う。カケちゃん」


一番見たかった光ちゃんの満面の笑顔が見れた。


もう僕は今此処で死んでも良い位だ。


「カケちゃん、今日はお昼ご飯はどうするの? 」


「食堂で食べようかなって思ってるけど」


「珍しいね。てっきり遥ちゃんがお弁当を作ってくれてるのかと思ってたよ」


「今日は朝練で早出だったんだ」


「成る程ね。お弁当作って来たんだけど良かったら一緒に食べよ? 」


付き合ってた頃は遥と光ちゃんのどっちに弁当を作って貰うかでよく揉めてたっけ……。


二人の折角の好意を無下にするのは心が痛むから毎日交代で作って貰ってたな。


「うん、良いよ。」


「有難う。はい、カケちゃんの分」


手渡された弁当箱を開けてみる。


僕は中身を見て思わず赤面した。


何故なら、白米の上に振りかけられた桜でんぶの形がハート型になっていたからだ。


それだけではなく、おかずも全て同じ形をしている。


気持ちは嬉しいけど恥ずかしい。


「頑張って作ったんだ! 食べてみて? 」


「うん、頂きます」


僕は桜でんぶの乗った白米を口に運ぶ。


でんぶの甘さが白米に上手くマッチしていて美味しい。


「丁度良い甘さだね。美味しいよ」


「本当? ちょっと入れ過ぎちゃったかなって思ったんだけど……」


「そんな事無いよ。上手に出来てる」


「良かった〜」


安堵の表情を浮かべる光ちゃん。


おかずのハンバーグも食べてみた。


「これは……! 」


時間が経って冷めているのにふっくらとしており、噛むと中から肉汁が(あふ)れて来た。


「ふふ、驚いたでしょ? 」


「うん。とてもジューシーだね」


「焼く前にタネの中に氷を入れたんだよ」


「だから滝みたいに出て来たんだね」


「えへへ、そーなのですっ! 」


光ちゃんがウインクしながらピースサインをした。


可愛過ぎる……。


思わず失神してしまいそうな程だ。


「遥と同じ位美味しいよ」


僕は嘘偽りの無い感想を言った。


「どっちの料理が好き? 」


悪戯っぽく微笑む光ちゃん。


「勿論光ちゃんだよ」


本当は甲乙付け難いなんて口が裂けても言えない。


「有難う」


「どう致しまして」


その後は光ちゃんと一緒に弁当を食べた。


どの料理もとても美味しかった。


やがて食べ終わると、僕達は後片付けを始めた。



「ねぇ、カケちゃん……」


「うん? 」


僕が返事をして振り向くと光ちゃんの顔が目の前に有った。


そして次の瞬間――


チュッ…


()っぺたにキスされた。


「光ちゃん……? 」


「もう少し……待ってね」


恐らく別れた理由の事だろう。


「うん……」


 そう言うと彼女は微笑んで言った。


「有難う……」


後片付けを済ませた僕達は一緒に手を繋いで屋上を出た。




























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