十一話〜恋の好敵手〜
「え? 麗奈先輩がどうしてここに? それにお兄ちゃんはどうして抱き付かれてたの? 」
あまりの出来事にびっくりし過ぎて、状況が飲み込めない状態の遥。
「……今日はちょっと遠出して買い物しようと思ったから……私が翔にした……幾つかの質問に答えて貰ったご褒美に私が抱き付いた……」
「成る程〜、気分転換ですね。 って……ヘっ? ご褒美の質問は何だったんですか? 」
遥が困惑と軽蔑が入り混じった顔で僕を見る。
嗚呼、我が妹よ……そんな哀れそうな顔で僕を見ないでくれ……。
「……遥と蒼井さんの口論……遥の事をどう見ているのか……蒼井さんとの仲と……翔に今、付き合っている女性が居るかを聞いた……」
「あ……成る程です……」
遥は気不味そうにそう言った。
「先輩に獅子神ドリンクを分けて貰ったよ」
「え? 売り切れてたの? 」
「……私が見つけて……全部買い物カゴに入れたの……。質問に答えて貰う為に……」
見事に釣られたさ……。 因みに獅子神ドリンクは、三本だけ買い物カゴに入れて残りの二本は売り場に戻した。
「あ……あはは……。私が教えたお兄ちゃんの好きな物を覚えていらっしゃいましたね。素晴らしい記憶力です」
「……翔の事……好きだから……忘れない……」
「え……? 」
僕と遥は同時に声を上げた。
「……翔が野球部に……入部届けを出しに来た時からずっと……好きだった……」
「そうだったんですか……」
遥が驚いた表情をしながらそう言った。
僕もびっくりだ。 先輩が僕に好意を持っていたなんて全く知らなかった……。
「……でも翔は蒼井さんと付き合うと……私の友達から聞いたから……告白する事を諦めた……」
「それはすみませんでした……」
僕は申し訳無い気持ちになり、先輩に謝った。
「……謝らなくて良い……。気にしないで……」
「はい……。有難う御座います」
「……翔……」
先輩が真剣な顔をする。
「はい、先輩。 何でしょうか」
「……もし蒼井さんが別れた理由を話して……仲直りして復縁しなかったら……私と付き合う事を考えてみて欲しい……」
先輩は其れ程までに、僕の事が好きなのか……。
僕は――
「はい、良いですよ」
そう答えた。
先輩の事は嫌いでは無いし、話していて楽しいからだ。
「……有難う……」
優しく微笑む先輩。
「どう致しましてです」
「麗奈先輩、良かったですね」
「……うん……。そろそろ帰らないと……」
先輩のその言葉を聞き、僕はスマホで時刻を確認した。
時刻は17時45分になっていた。
約1時間30分もスーパーの中で買い物をしていた事になる。
「もうこんな時間だったんですね」
「……そうみたい……」
「お兄ちゃん、そろそろレジに行こう」
「だね、早く帰ろう」
そして僕達と先輩はレジで会計を済ませ、買い物袋に買った品物を入れて行った。
「先輩、獅子神ドリンクどうぞ」
「……有難う……。またね……」
「はい。 さよなら」
先輩は僕が奢ったドリンクを受け取ると、足早にスーパーを出た。
「お兄ちゃん、行こっ」
「うん」
僕達も外に出て帰路に就いた。




