九話〜すれ違う心〜
「遥っ! 」
僕は精肉売り場へ向かった筈の遥を探したがそこに姿は無かった。
一体何処へ行ったのだろうか……。
「変な人に絡まれてなければ良いけど……」
僕はスーパーの売り場をくまなく探して行った。
するとお菓子売り場の所に遥が居た。
僕は話し掛けようとしたが、隠れて様子を見る事にした。
何故なら遥にとって最悪な人物と会話をして居たからである。
その人物とは……光ちゃんだ。
彼女は何やら遥に対して気に食わない事が有るらしい。
光ちゃんが遥に危害を加える可能性が有りそうだ。
もしそうなった時は、飛び出して遥を助けるつもりでいる。
僕は耳を澄ませて、二人の会話を聞いた。
「光先輩……教えて下さい! 何故お兄ちゃんを一方的に振ったのですか? 」
「遥ちゃん……。悪いけど話す事は何も無いよ」
「どうしてですか!? お兄ちゃんはとても傷付いていたのに! 」
「五月蝿いなぁ……。 他のお客さんの迷惑になるから大声出すの止めてよ。 カケちゃんには私が理由を話す時が来るまで待ってて貰うって事になってるから」
「そんなの信用出来ません! 話さずに逃げるつもりでしょう!? 光先輩……貴女は最低です! お兄ちゃんの事を弄んで……」
遥の声が段々嗚咽混じりになって行く。
「はぁ……。勝手にそう決め付けるの止めてね? 別に遥ちゃんに信用して貰おうなんて全然思ってないよ。 悪いけど私嘘付くの嫌いだから。 カケちゃんの事も弄んでなんかない」
光ちゃんは溜息を付いてそう遥に冷たく言い放った。
「ッ……! 信用して貰おうなんて全然思ってないって……酷いです……! 」
光ちゃんの心無い言葉にショックを受けた遥は泣き出してしまった。
僕は直様走って助けに行く。
「遥! 大丈夫!? 」
「お兄ちゃん……ごめんね……。ダメみたい……」
涙を流して失神した遥が僕に凭れ掛かる。
僕は遥を抱き留めた。
「あはは……。やっぱりそう言う関係だったんだね……」
光ちゃんが僕と遥を見下す様な目で見ながらそう言った。
「違うよ! 遥とは妹以上の関係にはならないよ! 」
僕は必死に光ちゃんに伝える。
「ふーん……。本当かな……? 」
光ちゃんがニタリと笑った。
「本当だよ! 僕は光ちゃんの事が大好きだよ」
嘘偽りの無い本当の気持ちをぶつけた。
だけど僕のその行動は無意味だった。
「遥ちゃんからね……カケちゃんの匂いがしたんだ……」
「……? 」
「カケちゃんからも遥ちゃんの匂いがした……。 多分だけど……抱き締めてキスしたのかな……? 」
「ふふっ……。それだけじゃないんだよね……? 遥ちゃんの手からもカケちゃんの匂いがした……」
教室の時と同じ様に目のハイライトを消しながら、不快な笑みを浮かべる光ちゃん。
物凄く怖い。
「うふふ……。私にはカケちゃんが思ってる事が解るよ……? 遥ちゃん可愛いもんね……? 」
「カケちゃんの事を一途に想ってくれるし……優しいし……」
「スタイルも良いし……そりゃ実の妹でも手を出したくなるよね……」
「……違います……」
意識を取り戻した遥が光ちゃんを睨み付けて言った。
「キスをして手を繋いで抱き合って一緒にソファーでお昼寝したのは事実ですけどそれ以上の事はしてません……」
「ふーん……お昼寝したんだ……。 どうしてそうなったの……? 」
「私がお兄ちゃんに告白しました。 どうしても大好きって言う気持ちを伝えたかったんです……」
「へぇ……。遥ちゃんってブラコンなんだね……」
「何とでも言って下さい。 でも兄妹だからそう言う関係になってはいけないって私は言いました」
「カケちゃんはどう答えたのかな……? 」
「僕のせいで遥を苦しめていたからごめんって謝ったよ」
「成る程ね……」
「抱き締めたのは遥を苦しめてしまった事に対してで、キスしたのは光ちゃんと別れたって遥に言わなかったからそのお詫びだよ」
「へぇ……。もう聞きたい事は無いから良いや……。 悪いけど私早く会計済ませて帰るね。 家に帰るのが遅くなるから」
光ちゃんは面倒臭そうにそう言うと早足でレジへ向かって行った。
「光先輩にお兄ちゃんと仲直りして、またやり直して貰おうと思ってたんだけど無理だったみたい」
すっかり疲れ果ててしまった遥がそう言った。
「そうだったんだね。 遥、僕の為に有難う」
「お兄ちゃんの為だもん。 どう致しまして」
僕達が歩こうとすると周りに沢山の客が集まっていた。
どうやら騒ぎを聞きつけて集まって来た様だ。
恐らく会話を聞かれていただろう。
「お騒がせしてしまってすみません」
僕達は客達に頭を下げて謝った。
「今回は大目に見ますが次からは気を付けて下さいね」
「はい。 本当に申し訳御座いませんでした。 以後気を付けます」
店長の人にも謝罪をし、買い物を再開した。




