出逢い
低時間クオリティ
これは二十年以上昔の話でノンフィクション、実話です。
ただ、何分遠い過去の事なので本当はエピソードがいっぱい有ったのですが、俺の記憶からゴッソリと抜け落ちてしまってます。
その中でも今だに忘れていない話を記そうと思います。
高校を卒業した俺は、東京へと上京して専門学校に入学し、それと同時に念願の一人暮らしを始める事になった。
学校は遅くとも夕方前には終わるので、小遣い稼ぎに簡単なバイトでもやろうと思い、一日三時間だけレンタルビデオ店の店員を始めた。
今でこそレンタルビデオ店(レンタルDVD店)は、G〇OやTSU〇AYAのような巨大チェーン店が幅をきかせているが、当時は個人経営の街の小さなレンタルビデオ店がゴロゴロと有った。
俺が入った店もそんな店で、昼の12時から夕方6時まではオーナーの店長が、夕方6時から夜9時までは俺が、夜9時から閉店の夜12時までは、また別の店員其々一人だけが時間内を受け持つというシフトだった。
店員全員合わせてもたった三人だけ、店には常時店員が一人しか居ないという小さなレンタルビデオ店だった。
そこで俺は、三人の自称“見える人”と出逢った。
その三人を仮に、Aさん、Bさん、Cさんとしておこう。
因みに俺には霊感の類いは皆無で、今の今まで本物を見た事は無い。
人物紹介で先ずはAさんだが、この人は二歳程俺より歳上だったと思う。
俺が働く時間帯に俺と入れ替わりに店を辞めた人で、記憶に有る限りでは、中肉中背、眼鏡を掛けた優しそうな容姿をしていた。
Aさんが辞めるまで引き継ぎをAさん本人から教えて貰っていたんだけど、何の運命の巡り合わせかAさんも俺と同じガチガチの漫画アニメオタクだった。
なので話が合ったし、俺の後に店を任されている人とも仲が良かったので、辞めた後も用も無いのによく店に来て俺達とダベっていた。
俺とは歳が近い事もあったんでプライペートでも付き合いが良かったが、オタクに似合わず空手使いだった。
そして、三人の中で最も霊感が強く、自称霊そのものがハッキリ見えると言っていた人だった。
次にBさんだが、この人は俺の後に店に入る人。つまり夜9時から閉店までの唯一の店員だ。
Bさんの本職は設計事務所の従業員で、本職が終わった後、小遣い稼ぎで店員をしていると言ってた。
年齢は三十代前半ぐらいで、見た目は荒〇弘をもっと若くして多少イケメンにしたような感じだったかな?
この人も変わった人だった。本場の少林拳の使い手で、よく蛇拳や太極拳の型を見せて貰っていた。
そして、Aさんの次に霊感の強い人で、自称霊的なモノが煙として見えたり、掌から気配を感じると言っていた。
最後にCさんだが、この人は店長の幼馴染みなんで、俺が店に入るとよく店長とダベっていた。
なので、元々店員だったAさんともBさんとも仲が良かったし、当然俺とも仲が良くなっていった。
年齢は五十代ぐらいで、見た目はAさんと同じく眼鏡を掛けた年相応に優しそうなおじさん。若い頃は柔道をやっていたという。
しかも、ここでまたまた奇妙な巡り合わせがあった。
仲良くなって気付いたんだが、Cさんは街の不動産屋に勤めていたんだけど、その不動産屋は俺が住んでいたアパートの管理会社でもあった。
家賃を払いに不動産屋へ行くと、Cさんが対応してくれたりもしていた。
そして、三人の中では最も霊感が弱いが、霊的なモノを感じると体調が悪くなると言っていた。
これから記す事は、その三人と共に体験したり、聞いた話です。
もう一度言いますが、それでも俺は今だに見た事は有りませんし、あくまでも三人は自称見える人です。
Aさん曰く。
「浮遊霊や地縛霊の99%は動物霊。人間の霊なんて滅多にお目に掛かれない」
「病院や学校は、人の願望や欲望といった思念が渦巻いている。だから夜は霊が集まり易い」
「霊は、綺麗な水と大気と土の有る場所を好む。だから滝でよく心霊写真が撮れる。自然の多い川も同様」
「自分が見える事に気付いたら、付いてくるから一々祓うのが面倒だ」
「逆に良い人には霊が頼って寄って来てしまう」
「絶対に見えない方が幸せだ」
Aさんと一緒に歩いている時に尋ねました。
「今、見えますか?」
「わざとチャンネルをずらしてるから見えてないよ。チャンネル合わせば見えるけど」
店でAさんに尋ねました。
「今、俺に付いてますか?」
「付いてないよ」
「付いてた事って有りますか?」
「有るよ。近藤パーリー君が風邪気味だとか体調悪いとか言ってた時ぐらいだけどね」
店でAさんが足を開き目を閉じました。
次に目を開いて頭の上を指さし言いました。
「チャンネル合わせたから今は見えるよ。ほら、そこに居る。猫だけどね」
店でBさんが目を閉じて俺の背中に両手をそえました。
「何やってるんですか?」
「いや、俺に付いてる霊を全部お前に押し付けてやろうとしたけどダメだ。お前を守護している霊は強い」
店でCさんと会話しました。
「霊感のせいで一々体調崩すって面倒ですね」
「でも、よっぽどじゃない限りは大丈夫だけどね。大抵は寒気程度だよ」
「そうなんですか?」
「ただ面倒なのは、ヤバそうな物件だと俺にお呼びが掛かるんだよ」
「分かるんですか?」
「入った瞬間、直ぐに分かるよ。あっ、此処ダメだってね」
俺とAさんとBさんが道を歩いていると、急にAさんが明後日の方向を向きました。
それに気付いたBさんが声を掛けます。
「なんだ?居るのか?」
「ええ、向こうの方角ですね」
するとBさんは、言われた方向に向かって掌を翳しました。
「ダメだ。遠すぎて俺には分からん」
「多分、ラブホテルじゃないですかね?」
「なら、有り得るな」
俺も二人の会話から霊的なモノだとは分かっていましたが、何でラブホテルなら有り得るのか尋ねました。
Bさんからの答えは。
「ラブホテルも学校や病院と同じで思念が渦巻いてるんだよ。不倫なんかが良い例だ。男と女がスッ裸で大喧嘩してんじゃねぇの」
店でAさんに尋ねました。
「Aさんが今までの中で、ここはヤバい!と一番感じた場所は何処ですか?」
「ホ〇ルニュー〇ャパン跡。通り過ぎただけでも頭が痛くなる」
当時は、まだ焼け跡がそのまま残っていました。
同じ質問をBさん、Cさんに尋ねました。すると。
「「ヤッパリ将門の首塚だろ」」
逆に一番安全な場所は何処かと尋ねたら、三人とも。
「「「御所」」」