第八話 ケロベロス降臨
第八話 ケロベロス降臨
小さな草原
この草原は、見渡す限り草原になっているわけではない。
とは言っても、そんなに小さい訳ではない。
遠くに、魔導士の塔が見える。アリスとナイツの行き先はそこだ。
草原に入った二人は、気持ちよさそうにしていた。
「やっと抜けたわ、森より草原の方が何倍もいいわ」
「確かに気持ちいなぁ~」
草原に入ったところで、一人の商売人が座り込んでいた。
「あそこに人が座っているわよ」
「おお~あれは、出張よろず屋じゃないか!意外とレア品とか売ってたりするんだぜ」
「へ~話を聞いてみましょう」
二人はよろず屋に近づいた。
しかし、よろず屋の主人は、元気がなさそうだった。
不思議に思ったアリスは、声を掛けた。
「元気なさそうですね?」
よろず屋の主人は顔を上げて話し始めた。
「はぁ~、なんとか草原を渡りたいのだが、邪魔が入って渡ることができないんだ」
アリスは首を傾げた。
「邪魔って、どうかしたんですか?」
「いや、いいんだ、君たちにお願いするわけにはいかないよ」
「そんなこと言わずに、話だけでも」
「ああ、草原を通ろうとしたら、怖いモンスターに出くわしたんだ。必死で逃げてきて何とかここにたどり着いたが、あの草原の真ん中らへんを見てくれ」
アリスとナイツは草原の真ん中らぐらいをジーっと見てみた。
「何かいるなぁ~」
「あれは、ケロベロスだ。レベル30ほどあれば倒せるんだが、俺はレベル20しかない。」
「そうか、なら、俺らも」
どん!アリスはナイツを蹴飛ばした。
「なら、私たちが討伐しますよ」
「おい待てよ、俺たちはまだ」
「いいじゃない、修行よ、修行!」
「でも、君たちは見るからにレベルも低そうだけど」
よろず屋の主人は疑っていた。
「見た目で判断しないでください。こう見えてもレベルは30ありますから」
「おお~これは助かる。なら、よろず屋として全力サポートします。全品半額と武器や防具は無料レンタルします。」
「いいの?」
アリスは喜んだ。
「まぁ~見ていってくださいな。」
「一つお願いがあるの、なんかいい防具持っていない?」
「あっ俺も武器を!」
よろず屋は自慢げに話しだした。
「よくぞ聞いてくれた。旅するよろず屋「エクスカリバー」、覚えといてください!」
「今日はとっておきの武器と防具を準備しています。」
よろず屋は、細長い剣を出した。
「これは、疾風の剣と呼ばれる、ウィングブレード!破壊力は劣るが、軽く素早く攻撃を出すことができる!ケロベロスなどの4本足のモンスターに最適だ!」
「おお~それ借りるぞ!」
「モンスターを倒したら、半額でお譲りしますよ!」
そして、よろず屋は、ブーツと服を袋から出した。
「これは、古き時代から着るものを求め続けた防具である。そなたのスタイルならなんか入りそうな気がしてな。今まで着ることができるものはいなかった。」
その防具は、見るからに女性専用装備に見えた。
女性が大昔に居なくなってから、この国にとっては謎のアイテムとしてたくさん転がっていそう。
「ねぇ着られたらただで頂戴!」
「なんと、私もずっと売れずに、処分しようと思っていたが、素材が良すぎて捨てきれなかったとこなんだ。差し上げよう」
「この剣もいいか?」
「ダメだ!このクソガキ!」
調子に乗ったナイツにイラっとしたみたいだ。
アリスはその間に着替えていた。
軽さ重視で網目になったセクシーなブーツと黒い光沢で透けている網掛けコルセット。
コルセットが胸部まであり胸を強調する服だ。
レースがたくさん使われているボンテージ風の装備だ。
「エロかわいいけど、なんか、ただの変態みたいじゃない」
「いや~びっくりしましたよ、その形が合う人がいるなんて」
よろず屋は、まさか本当に着られるとは思っていなかった。
「それは、超軽量装備で、アルゴメタルという固くて軽い素材なんだ。しかし、めったにお目にかかれない品物なんですが、使える人がいなかったんです。」
「確かに軽いわ!ありがとう!」
「しかし、あなたは、どこの種族でしょうか?見たこともない体ですので」
「私もわからなくて自分が何者なのか調べるために旅しています。」
「そうでしたか、ご武運をお祈りしています。」
「ありがとう、討伐してくるわ」
アリスとナイツは、草原の真ん中を目指して歩き始めた。
真ん中に近づいてきたとき、周囲から10匹のライガーが現れた。
「おっと、アリス!ライガーのお出ましだ」
「ライガーってなによ!」
「狼みたいなもんだ!推奨レベルは5だ。俺たちなら何とか出来る」
ナイツはライガーが3匹いる方角へ走った。
ライガー3匹も飛び上がって襲い掛かってきた。
「ジャンプしたなライガー、もらったぜ」
ナイツは、少し加速してライガーの下をくぐった。
その時剣を抜き真ん中の一匹を切って倒した。
残り2匹が襲い掛かってきたが、1匹をよけ、タイミングがずれて飛んできたライガーをかわし、その時にそいつを倒した。
もう一匹は背後から襲ってきたが、分かっていたため、振り向き斬りで倒した。
「どうだ!何てことないだろ!」
「ナイツ!危ないファイヤーボール!」
ナイツの背後からさらに襲ってきたライガーをアリスが倒した。
「よそ見しているからよ!」
「すまん、すまん」と頭を書きながら、返事をしていた。
「よし、残り6匹だ!」
「見ていろ!」
ナイツは6匹の中心に走って入り込んだ。
「アリスが倒れている間に修行した強さ見せてやる」
ナイツは剣を腰に当てて、低い体勢になった。
そして、6匹のライガーが同時に飛び込んできた。
「ナイツ!」とアリスが叫んだ。
「横断扇風」
ナイツは、早いスピードで、1回転した。
ライガーは6匹同時に倒れた。
「すごいじゃない!やるじゃない!」
アリスとナイツは、ハイタッチをしてその勝利を喜んだ。
「少しは強くなっただろ!」
「うん、なんかいい感じだね!」
ドスン!
アリスとナイツは背後に嫌な気配を感じた。
高さ3メートル長さ6メートルのケロベロスが目の前にいたのだ。
「きゃっ!びっくりした。顔が3つ?犬?」
「なにのん気なこと言っているんだよ!殺されるぞ!」
ケロベロスが「わお~」と吠えた。
「やっぱ犬じゃない!とりあえず情報はないの?弱点とか!」
「ごめん、ごめん、弱点は、しっぽだ。ケロベロスは獣で炎に弱いはずなんだが、炎の攻撃をしてくる。情報はそのぐらいだ!」
「ありがとう!何とかしないとね!」
ケロベロスは、とびかかってきた。
間一髪で、かわした。
「このサイズで、このスピードは異常よ!逃げていたらいつか死んじゃうわ」
「そうだな、なんかいい方法はないか・・・。」
ケロベロスはしっぽを振ってきた。
「こいつ後ろにも目があるみたいな動きするなぁ~」
ケロベロスはアリスの方を向いた、口に炎らしきものが見えた。
「アリス来るぞ!」
ケロベロスは、炎を3つの頭から吐き出した。
アリスは、1つ2つと避けられたが、3つ目が避けきれない。
「アイスシールド」
アリスは両手を前に突き出し、氷の盾を作った。
その間に、ナイツがケロベロスの胴体を斬った。しかし、傷1つつかなかった。
「めちゃめちゃ固いぞ!こいつ」
「勝つ方法はあるの?」
同じような戦いを何度も繰り返しているが、全然勝てそうにない。
体力も消耗し、スピードも低下してきた。ケロベロスは余裕だった。
ケロベロスがまた炎を口に含んだ。今度は少し長い。
「ケロベロス必殺技のフレアが出るぞ!俺たちのレベルでは防ぎきれない」
その時、地震が起きた。ゴゴゴゴゴゴ!
「地震?」
「いや違うぞ?草原だけが揺れている」
ケロベロスも一度、フレアをやめた。
魔導士の塔から、何者かが見ていた。
「助けに行きますか?」
「いや、あの草原で何かが起ころうとしている」
「あの者のどちらかがそのカギだ」
地震が収まり、ケロベロスはまたフレアの準備に入った。
「アリス遠くまで逃げよう、せめてダメージを軽減させるんだ」
「分かったわ」
2人は走りだした。ケロベロスの口は炎が今にも出てきそうなぐらい飛び出していた。
「きゃっ!」とアリスは転んだ。
「何やっているんだ!」
「いいから逃げて!」
「ダメだ!俺が盾になる!」
目の前に立ち、攻撃をまともに受けるつもりだ。
とある者「やはり助けましょう」
「いや、まだだ!」
「我慢できません」
「おい、待て」
ケロベロスはフレアを放した。
3つの炎がクロスしながら、2人をめがけて飛んできた。
「さすがに死ぬかな?」
すると、アリスの足元が急激に光った。
何が起きたか分からなかったが、アリスは手に剣を握っていた。
「何この剣?」
「私は巫女の剣、待ちわびていました。今は、あなたに力を貸しましょう。この剣でフレアを斬り、両手で天に剣をかざし、シャインブレードと叫んでください」
何が何だかわからないアリスは、今は信じるしかないと思い。立ち向かった。
「ナイツどいて」といいナイツを手で薙ぎ払い。
フレアを切り裂いた。
そして、言われたとおりに天に剣をかざした。
剣は、光を吸い込んでいた。
ケロベロスが突進してきた。
「まだなの?」
「まだです。天の力を十分にもらって攻撃しなさい。」
ケロベロスは、3つの頭を真ん中に集め、攻撃態勢に入った。
そして、突進が当たる寸前。
「今です」
「シャインブレード!」といい剣を振り下ろした。
剣は光の斬撃となり、草原の真ん中に大きな切込みを作った。
ケロベロスは真二つになり、その場で倒れた。
ナイツは腰を抜かしていた。
「すげー技だな」
巫女の剣は急激に重くなり、アリスでは持てなくなった。
ドスン!と地面に刺さった。
アリスは、女の子座りでその場に座り込み、一息ついた。
「助かったぁ~」
そして一時は、その草原で休憩することにした。
とある者「なんということでしょう。まさか、秘宝の剣が出てくるとは」
「昔から、この草原には噂があったが。今日明らかになるとは」
「あの剣を回収しますか?」
「もちろんだ、しかし、あの方を連れてこなければ秘宝の剣は持つことが出来ない。あの者が持てた理由は謎だが」
「あの剣は、推定100トンあると思われます。」
草原での戦いは、奇跡的にもアリス達の勝利に終わった。
アリスは、何か特別な使命があると、徐々に感じ始めていた。