第六話 異世界のひみつ
第六話 異世界のひみつ
魔族の国が滅びたのは、世界に恐怖を与えていた。
一夜にして、大地はえぐれ、星を滅ぼすほどの禁術の発生と魔族の神といわれる魔神が現れたこと、そしてその魔神が、大魔神となり降臨したこと。
禁術は、アリスが発生させたが、世界は、魔神仕業と思い込んでいる。
真実を知るのは、大魔神ダンタリオンとアリスだけである。
禁術は大昔に究極魔神のリリスが使ったと歴史に刻まれている。
それを、各種族が力を合わせて封印した。
まだ、なぞは残る・・・。
アリスの中にいるもう一人の存在。
魔王グロトリアが吸収したといわれる残りの9人。
アリスに呼び掛けてきた人。
闇のドラゴン。
アリスにとってはすべてがなぞのことだ、この世界を知ること、そしてこれから何をするか、それがアリスの課題だった。
各国は領土の奪い合いをやめて、休戦状態になっていた。
魔族の国にはバリゲートが張られ、立ち入り禁止になっている。
まだ、魔神の仕掛けた罠があるといわれている。
いつかアリスが行くことになるが、それはまだ先の話だ。
大きな事件から一夜が過ぎた。
3畳ほどしかない宿屋にアリスは寝ていた。
日差しが顔に当たり、まぶしそうに起きた。
「う~ん」
「はぁ~」
いきなりの出来事で朝起きてからの整理がついていない。
とりあえず、ベッドから起き上がり、部屋を出て、外の蛇口から水を出し、顔を洗った。
「さぁ~何をしようかしら」
とりあえず、やることはなかったが、生きるためにこの世界を知らなければならないと思い。町の住民にいろいろ聞いて回ることにした。
この町が、魔族の国と白魔導士の国の間にあること、両国の者がこの町を利用していたこと、意外だったのは、領土の奪い合いをしている割に兵士同士は、威嚇などはしていことが分かった。
どうやら国を運営するうえで、各国のバランスを保つために行っていたみたいだ。
「戦いでしか、できないなんておかしな政治ね」
アリスは呆れた顔をして声にだした。
町にいたかなり歳を取ったおじいさんが話しかけてきた。
「戦いは、この世界では、歴史の深い伝統なのだ。お金などで、政治をやるところもあるが、それではこの世界は成立しないのじゃ。」
「戦ったら誰かが死ぬじゃないの!」
「そうだ、この世界では、死者が必ず必要なのじゃ。」
「死者が必要って、どういうこと?」
「この世界は転生の国と言われている。もちろん前世がこの世界の者が多いが、異世界から転生されるという例もある。弱いものは消え去り、強いものは生き残るが、転生し
さらなる強さを求める。生まれたままの人など数少ない、もはや転生しているものだらけじゃ。」
「そうなんだ、私は異世界から転生されてきたみたいなの」
「そうなのか、そんな気がしたが、しかし、異世界から転生されるのには理由がある。」
アリスは興味深々になり、長くなると思って近くの樽に座り、股の間に両手を置いて前のめりになり、話の続きを聞いた。
「おお、聞いてくれるか、久々に歴史に触れるとしよう。」
「この世界は、源世界といい、源となる世界なのだ。もともとすべての種族がいたのだ。」
「そんな、なら人間も?」
「おぬし最弱の人間も知っているのだな、その通り、一部生き残っているという噂はあるが、人間はこの世界から追放されて、地球というところに飛ばされたのだ。」
「星が違うってこと?」
「それは違う、時空を通して二度とこの世界に来られないようにした。それをしたのは、大昔の人たちじゃ、今は全く見たことはないが、神々の国の仕業と聞いている。」
「神か~、魔神とかもそれと同じ?」
「それは、わからないのだ。神の輪、その輪の力に時空を操る力があると聞く。ここ100億年ほどは、神が現れたことはない、神になるための研究は行われていた。」
アリスは心の中で思った。「神はたぶん隠れている。ダンは、ただの使いだと思っていたけど、魔神だった。」
「何か思い当たることでもあるのかね?」
「いいえ、なんでもないわ」
「ところでおぬし、見たことない姿をしておるな!」
「それは、女だからじゃないの?」
「女じゃと、わしは、1800歳になるのじゃが、女は一度も見たことはない。1万年前に追放されたと聞いたが、生きていてよかったわい」
「女が追放?なぜ?」
「わからんが、争いの種だったらしい。男と女は重要な関係にあったという。」
「そうなのね」この世界ではいろんなことを制限しているようだと感じていた。
「ざっとそんなところだ」
「ありがとうおじいさん。でも一つだけ気になることがあるの」
「なんでも言ってみなさい」
「1800年も生きることができるの?」
「なんとそんな常識を知らんとは、この世界では、死は、時とは関係がない。生きるか死ぬかは、外部からの影響できまる。戦いで敗れるか、餓死するか、病の魔法にかかるかだ。」
「なるほど、不死身ではないけど、寿命に悩まされないでいいってことね。いろいろとありがとう。」
突然村に、鎧を着たナイトたちが3人現れた。
「こんなところにいたのですが、城から出るときは、護衛をつけてくださいと言ったではありませんか。」
「すまんの~ついつい忘れておったわ」
「困ったお方です。白竜軍の総領とあろう方が散歩などとは、今はそれどころではありませんよ」
3人のナイトにおじいさんは連れていかれた。
「えっ偉い人?白竜軍ってなによ」
当然、話しかけてきた若造がいた。
「白竜軍っていうのは、竜を使える騎士たちが集まる軍さ、さっきのおじいさんは、白竜軍総領 白竜さんだ、そのままの名前だが、竜を召喚できる人の一人だ。」
「あんただれ?」
「人に名前を聞くときは自分から名乗るんじゃないのか?」
「あんたが先に話してきたんですけど、ご説明ありがとう」
アリスは若造に背をみせて歩いていこうとした。
若造は慌てて声を掛けた。
「分かったよ、待てよ。俺は、ナイツだ」
「ナイツさんね、ありがとう、さようなら」
一瞬振り向いたがそのまま歩き出した。
「お前、この世界何も知らないんだろ」
「それがどうしたの?」
「いや、なんていうか、俺が一緒に旅してやるよ」
「結構!」
「分かったよ、一緒に旅をさせてください」
「でも、私はあなたのこと何も知らないわ、私の名前はアリスよ」
「ごめん、アリス。調子乗ってしまったんだ。下から物を言うとなめられてすぐにそっぽ向かれると思って」
「逆よ、逆。お願いするのに上からって。まぁいいわ、旅するって言われても何をするの?」
アリスは振り向いた後、腕を組んで、ナイツに話しかけた。
「俺には目的がある。アリスにはないのか?」
「今は分からないの・・・。」それを聞かれるとアリスは下を向いた。
「なら、一緒に探そう、見つかるかもしれないよ。俺は、あの禁術で、友を失った。」
あっ!とアリスは思った。私が解き放した魔術で、ナイツの友を殺した。でもそんなこと言えないと思っていた。
「それは・・・残念だったね」かなり焦った。
「ありがとう、動揺してくれて、だから、魔神を倒しに行くんだ。まだまだ弱いけど」
アリスは、考えた。魔神ね。私もダンにはもう一度会わないといけないと思っているし旅するぐらいならいいかな?
「分かった。なら、魔神さんを倒しに行きましょう」
「いいのか、やったぜ!とりあえず今日は、お前んところの宿に泊まるよ」
そして、宿屋に入った。
なぜかナイツはアリスの部屋までついてきた。
「なんで、あんた、私と同じ部屋なの?」
「旅する仲間じゃないかいいだろ!」
「馬鹿じゃない?変なこと考えてんじゃないの?」
「変なことってなんだよ!普通だ、普通!」
アリスは、気付いた。「そうか、そもそも女と男の関係がないのか・・・。私だけ嫌な気分じゃない!王子様だったら喜んで同じ部屋でいいのに~」と心の中で号泣していた。
「とりあえず、分かったわ。だけど床で寝てね」とは言ったがまったく言うことを聞かずにナイツはアリスと一つのベッドで寝ることにした。
「何こいつ~というか、これが普通なのか~。はぁ~」
そして翌日。
「う~ん、なんだ?この柔らかくて気持ちいのは、饅頭みたいだな~」
ナイツはアリスの胸を、これでもかってぐらい揉んでいた。
「食べてみようかな~」と口を近づけた瞬間。
「ライトニング!」怒ったアリスがナイツの頭に思いっきり魔法を与えた。
「痛ってぇ~!」とナイツは壁まで吹っ飛んだ。
「何すんだよ!殺す気か」
「死んでもらっても構わないけど」アリスの殺意が本気で感じられた。
「仲間になった初日の朝だぞ、それじゃ先が思いやられるじゃないか」
「もし私の体に触ったら、次は、無いわ。」
「寝ぼけてて、お前の胸が柔らかいからだろ、その防御用のボディーをどうやって作ったかしらないが、とりあえず触らないようにするよ」
「やましい気持ちがないなら今回は許すか」と心で思った。
「よし旅に行こう!まずは町出て、各国を回ってみようじゃないか、何か手掛かりがあるかもしれない」
「そうねそうしましょう」
宿屋の主が怒鳴り声をあげた。
「またんかい、そこの二人。まさか宿賃払わない気じゃないだろうな」
「えっアリス、宿賃払ってないのか?」
「そうよ、だってお金持ってないもん」
「はぁ~?どうするんだよ」
「払って!仲間でしょ」
「くそ~俺もそんなに持ってないけどさ!いくらだ?おっさん」
「100ルピーだ」
「ぼったくりじゃね~か」
「2日分の宿賃と今朝壁を壊しただろ!それぐらい請求するわ」
ナイツは何も言えずに、50ルピーを出した。
「足りないぞ?」
「これしか持ってないです・・・。」
「そのブレスレット置いていけばいいぞ」
「まじか~耐魔力性が落ちちゃうけど、先に進まないから仕方ない」
悔し涙を流しながら、仕方なくブレスレットを渡した。
「お前との旅、一文無しからのスタートじゃないか」
「ありがとう。ねぇお金はどうやって稼ぐの?」
「町の案内所に行って依頼を受けてその報酬を受け取ればいい。わかったか、ってもう行ってるじゃないか」
アリスは、案内所に入り、依頼を受けていた。
「おい、待ってくれ、依頼を自分にあった・・・。」
「もう、受けて来たわよ!討伐1000ルピー!これならいいんじゃない?」
「どれどれ・・・・!お前ビッグスライムの討伐じゃないか!無理だぞ!レベル10は必要だ?」
「ねぇレベルってどうすればわかるの?」
「ギルドに行って、自分の技と倒したモンスターとかを登録するとレベルを計算してくれるんだ」
「そうなの?ま~私はまだ何もしていないから、レベル1かな」
「その通りだ、初心者魔法は俺に食らわせたライトニングだ。レベル1の魔導士なら使える。お前が魔導士で良かった。俺は、剣士だからな」
「私、魔導士?まぁいいかとりあえずはこのまま進んでみよう」
アリスとナイツは町の門を出ようとした。
門番が「今はビックスライムが出ているから気をつけろよ」
「は~い!気を付けます」アリスはのん気に返事をした。
「もしかすると旅はすぐに終わるかも・・・。」とナイツは考えていた。
それもその通り、一文無しがゆえに、依頼のキャンセル料すらないからだった。
果たして、旅はうまくいくのか?それとも、すぐに終わってしまうのか?