第五話 魔神現れる
第五話 魔神現れる
2週間たってもグロトリアは出てこなかった。
「一体何が起こっているのかしら?」
アリスは気になっていた。
3週間ほどたった時だった。急に大きな叫び声が聞こえた。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「何?何の声?」
声が聞こえる方に走っていった。研究室からではなかった。闘技場の方であった。
闘技場まで走っていくと、少し変わった魔王の姿があった。
「ついに手に入れた。これで俺も大魔王になれたのではないか?」
「よくぞ耐え抜きました。大魔王になったかは力を試すしかありません。」
魔王グロトリアは、両手を空に向けた。
「はぁーーーーーーー!」強大な魔力を感じる。そして、その両手の間には、闇の魔球が現れた。それはどんどん大きくなり、魔王の2倍ほどまで膨れ上がった。
「これこそ我が求めていた力、この魔球を放ちたいが、それは楽しみに取っておこう。おや、アリスじゃないかいいところに来た。貴様の力ももらうぞ」
グロトリアは、2メートルにもなる魔剣を召喚し、アリスに向けて放した。
魔剣はものすごい勢いでアリスの心臓へ向かっていく。
その時、魔剣が止まった。
「何が起きた」魔王は驚いた。
「グロトリア様焦ってはいけません。アリスの力は未知の世界。多重転生でうまくいくとも限りません。」
「ダン、俺は分かる。そいつの力を秘めているかもしれないが、それが開花する前に吸収する必要がある。おまえもわかっているのではないか」
「・・・・・・」ダンは黙り込んでいた。
「どうした、ダン?」
「その通りです。魔王様。イヤ、魔王君かな」
「なんだ貴様、俺に逆らうつもりか。」
「もう。魔族の国は、魔王と私とアリスの3人、完全に滅ぶ国だ。アリスの力は、グロトリア、貴様に渡さん。」
「ダン?貴様何を企んでいる?」
「企んでいる?はははっ!すべて計画通りです。」
ダンは、魔法を唱え始めた。ダンの真下に真っ赤な魔法陣が現れ、ダンを赤い光が包み込んだ。
「一体なんだ!」
そして、現れたのは、ただのローブを着ていた使い魔の姿のダンが、腕や足、そして背中に謎の紋章が刻まれ、胸には魔晶石と言われる石が埋め込んであった。
「赤い魔法陣に魔晶石に紋章・・・。」
「やっと気づいたか、私の名は、魔神ダンタリオン!」
「魔神!」アリスと魔王は一斉に声を上げた。
「その通り、なんのために貴様に多重転生をしたと思っている?」
魔王は、下向きになって考えた。そして、はっと理解したかのように顔を上げた。
「まさか、私を殺して吸収するためか!」
「その通りだ!わかっているなら話は早い。その前にアリス、お前は逃げろ!」
「えっ?私を逃がしてくれるの?」
「勘違いするな、いずれお前の力ももらう。巻き込まれて死んでは困るだけだ」
「それは困るわね、遠慮なく逃げさせてもらうわ」
アリスは外への方へ走り出した。
「逃がすわけにはいかない」と魔王が追いかけようとしたが、目の前の地面に槍が刺さった。
「グロリアス、お前の相手は俺だ。」
「ま~いいだろう、魔王とてこれほどの強大な力を手に入れたんだ、魔神にも負けぬ」
そして、魔王と魔神の戦いが始まった。
魔王は、両手に頭の大きさぐらいの魔球を出し、魔神に向けて解き放った。
しかし、魔神は、当たる直前で消えた。
「どこに行った」魔王はあちこちを見た。「上か」
魔神は、かなり高い位置まで移動していた。そして、手を空にかざし。魔神の槍を召喚した。魔人の槍は、穂先が3本になっており、竜の骨で作られた柄でできていた。
その槍を魔王に向けて解き放した。
魔王は対抗して、両手で巨大な魔球を作り出し、魔神に向けて放した。
魔人の槍は魔球に飲み込まれ、魔球は魔神のもとへ向かっていった。魔神は両手を前にだし、魔球を受け止めた。そして、その魔球を手でゆっくり押しつぶして消し去った。
「さすが魔神だ、あの攻撃をつぶすとは」
「魔王よ、さすがだが、よそ見をしていると死ぬぞ」
魔王は周りを見渡した。魔王の周りには、無数の槍が魔王めがけて進んできていた。
確実に逃げられない。魔王は丸くなり、雄たけびと共に全身を大きく開いた。
「魔王波」魔王の周りにバリアみたいなのが現れ、それは巨大に膨れ上がった。
ド~ン。周囲が闇に包まれた。
すぐに闇が明けたが、魔王の城は、跡形もなく消え去っていた。
「魔王とは思えん力だな」
魔神は少し離れたところに静かに着陸した。
「時間もない、魔神の力を見せてやる」と言って胸の魔晶石が光り出した。
光に包み込まれて、現れたのは、神の輪と言われる。神の文字が刻まれた数個の輪が魔神を包んでいた。
「あれが、神の力か、お手並み拝見だな」魔王は、魔神に向かって猛スピードで、魔王の剣を突き刺そうとした。
その途中で、魔神が指を魔王に向けて、一言発した。
「エンド」
魔神の腕にある神の輪が回転し、手先に吸い込まれ、レーザービームみたいな光線を放した。
「何が起きた?」魔王は倒れていた。
「よくここまで騙されてくれた。感謝するぞ。」
「ダン貴様、うっ・・・」
「ソウルジョイント」
魔王から魂が現れ、それを、魔晶石へ取り込んだ。
地響きがなり始めた。ゴゴゴゴゴッ。
アリスは逃げている途中、「あれ?ダンの魔力。一体何が起こっているの?」
他の国もこの異変に反応していた。そして、ダンは天高く舞い上がった。
大きな赤い光は各国から見えた。みんながその光を見ていた。
赤い光はだんだん小さくなり、姿を変えたダンが空に浮いていた。
しかし、その姿はもう、ダンとは全く違っていた。皮膚は赤に染まり、肉体もかなりごつく大きくなり、全身が紋章で埋め尽くされていた。
「ついに手に入れた。大魔神になったのだ。これから、何をするかはお楽しみだ。」
大魔神は、一瞬にして消え去った。
この事件は、各国を恐怖に陥れた。「魔神が復活したぞ!」「噂によると大魔神だそうだ」
「究極魔神になってしまうと過去の伝説が起きてしまうのではないか」
町に着いたアリスは、そんな声をたくさん聴いた。
道端に座り込んでいる老人に、聞いてみることにした。
「みんなが言っている過去の伝説ってなんなの?」
「おぬしは、何も知らないのかい。昔リリスという究極魔神がいたみたいだ。神にもいろいろいるが、リリスは世界を滅ぼそうとしていた。星を破壊し、星の破片を降らせて立った一人で世界を相手にしていた。しかし、それを阻止するべく立ち上がったものもいた。究極魔神の力は、封印するのが限界じゃった。だから、復活したのではないかと騒がれておる」
「そうなの、ありがとう」
「旅のものよ、気を付けるんだ。これからは、荒れた時代がくる」
そう言っておじいさんが横たわって寝てしまった。
「とりあえず、逃げてはきたけど、魔族の国から来たのは禁句ね。武器も手に入れないといけないわ。それより休みたいな」
アリスは宿を探し泊まった。
世界の状況は大きく変化しつつあった。アリスは、魔法を体得したが、さほど強くはない、もう一人の自分はなぜかあれ以来出てこなくなった。
アリスの物語は、ここから始まる。世界を揺るがした破壊の魔力を使ったのはアリスだ、大魔神のダンダリオンが降臨したことにより、大魔神がすべての発端だと思われている。
2重転生の可能性もあるなか、今後どうなるのか、アリスは、一体何者なのか?