第一話 あの世とこの世の狭間
第一話 あの世とこの世の狭間
ドックン!ドックン!ドックン!
「なんだ?鼓動を感じるぞ?」
「なんだ!この気配は!?」
物凄い恐怖に包まれた感覚がある。しかし、何も映らない真っ暗な世界。
「え~っと、何をしていたのかな?」思い出そうとするが、思い出せない?
「ん?何か声がきこえる!」
微かに声が聞こえた。
「おい!大丈夫か?」
「起きて、お願い」
「早すぎないか?」
「一緒に旅するって決めただろ」。
少し、何かを思い出してきた。しかし、まだ思い出せない。
「ん?別の声も聞こえる」
まったく違った声が聞こえた。
「こいつは、さまよっているのか?」
「多分そうです」
「こんな中途半端な奴は見たことないぞ」
「過去の歴史を調べてみます」
なんだか落ち着いた感じだが、まったく記憶にない人たちの声だ。
「ん?なんだ?もう一つ別の声が聞こえる」
しかし、前の2つとは全く違う気配を感じる。
とてつもない低い声で、邪悪な悪魔の声にも聞こえる。
「ついに来たか!この日を待っていた。おい、引張出せるのか?誰にもこいつを取らせる気はない」
「はい、任せてください」
何が何だかわからないが、3つの会話は全く別のところだということは分かった。
はじめの方は、きっと、私に声を掛けている。2つ目の方は、いつもと違う感じの状況に困惑している感じ。3つ目は、何かを企んでいる感じだった。
目を開けてみようと思った。
その時、真っ暗な世界が、一面真っ白になった。
「えっ?私はどこにいるの?手も足も体も見えないし、動きを感じない」
周りを見渡す感覚だけはあった。
「これじゃ、何もできないじゃない」とすごく困惑した状態になった。
その時一粒、紫色をした水晶玉が宙にぷかぷか浮きながら現れた。
突然声が聞こえだした。
「貴様は、なぜここに来た?」クールな声で紳士的な声だった。
「私が聞きたいぐらいよ!」
「貴様、女か・・・。」と言って少し黙っていた。
「女ですけど、なんか問題でも?」
「ありえん、過去にこんなことなかった。貴様は、ここで帰ってもらおう」
「意味がわからないんですけど?いきなり帰えれと言われてもここがどこかも分かりません」
「ここは、あの世とこの世の狭間だ!」
「えっ?ちょっと待って、私、死んだの?」
「まだ、死んではいない。しかし、女がこの狭間に来ることはないのだ。我々は異世界で力を出す男どもを、求めてこの狭間を作ったからだ。女は必要ない」
なんか意味が分からないけど、女、女ってムカつくと思った。
「私、男ですけど!」と嘘をついてみた。
「嘘丸出しだな!まあいい、帰りたいかそうでないかを選べ」と言って2つの世界が目の前にぼんやりと映り出した。
その映像を見て、すぐに思い出した。
友達と旅行の計画を立てるために喫茶店にいって、打ち合わせが終わりかえっている途中だった。
「でも、なんでみんな泣いているんだ?」
「
貴様は、はしゃいだあまりに、車を見ていなくてトラックにひかれたんだ」
寒気がした。「そんな・・・・・・。」
「戻ってもいいが、障害も残るし、復活できるかわからんがな」
そんなことを冷静によく言えるなと思いながらも聞いていた。
「ねえ、私の状態って教えてくれない?」
想像したくないけど、状態によっては戻りたくないと思った。
「知ったらあの世を選ぶぞ、それでもいいのか?」
ものすごく怖くなった。
「一瞬でこの狭間に来ることが出来たのはラッキーだったな、痛みを感じる前だったみたいだ。知りたいなら特別教えてやる」
鼓動が急激に高まった。
「
信号をギリギリで通過するために加速したトラックにぶつかったんだ。速度は時速100キロ、貴様は、ぶつかってから吹っ飛んで、ガードレールに刺さった、ぶつかった速度が速すぎたせいで片腕は、骨折。首の骨も折れている。これ以上は言わないでおこう。」
「これ以上って・・・、十分悲惨な状況よ、もう戻りたくないわ・・・」
私にはあきらめるしかなかった。
「
なら、すぐにあの世に連れ去ってやる」
「
そうしてください・・・・。」
「ゔっ、なんだ!この重圧は」
突然紫色の水晶玉が苦しみ始めた。
ペキッ!水晶玉にヒビが入り始めた。
そして半分ぐらいヒビが入った時だ。
真っ赤に光りながら別の真っ赤な水晶玉が現れた。
「失礼!紫くん。君はここで消えてもらうよ!」あの邪悪な声だ!
「うわ~~~~~~~~~~~」パキンッ!と完全に紫の水晶玉は割れた。
「何かヤバイ予感がする・・・・。」
赤い球がこちらに向かってきた。
「残念ながら、あなたには、あの世にもこの世にもいてもらうわけにはいかない。私に手を貸してもらいます」と強引に私の選択を妨げた。
「あなた誰ですか?とんだ失礼やろうですね!」と震えながらも反論した。
少し黙っていたら、「えっ意外と強気で行けば何とかなるかも」と思った。
「お前は、女だったか・・・。」
こいつも女、女って、「なによ」
「黙れ!」
すぐに言い返された。
「まあ、よい。お前が女であろうと、力があるのであれば。間違えであればすぐに消えるだけだ。」
何かを期待しているかのような感じがした。
突然、別の声が聞こえてきた。
「そっちに行っちゃだめだ!」
「えっ?なに?」
「どうした!」
もう一つの声には気付いていないことが分かった。でもどうやってばれないようにするのか分からなかった。
「あの~どこに行くのですか?」
「お前にとっては異世界だ!」
「・・・・意味不明・・・なんですか異世界って」
「時期にわかる」
「だから、そっちに行くな!自由転生できなくなるぞ!」
「自由転生?・・・・」
「そいつに耳を貸すな」
「自由転生は、自分のなりたい姿とは別にランダムで転生してしまう。それはあっちの国のやっていることだ。我が国にはそれでは勝てんのにな」
複雑だが、少し異世界が理解できた。
「自由転生の理由は、必要な勢力を国が決め、何に転生するかは、国が決めていということだ。自由と響きがいいが、国の自由だ。お前は、わが国の極秘魔法で見つけた存在だ。まさか、女だとは思わなかったが」
意外と親切じゃないと思いながらなぜか安心していた。
「だから、そっちは悪の国だ!」
若い男性の声は強くなった。
「黙れ!こわっぱ!」
「お前は、グロトリア!」
「こいつは女だ。引き下がれ」
「女を転生しても、大して強くないぞ、何か企んでいるな!」
「俺もわからんが、弱ければお前らに殺されるだけだ」
勝手に弱いとか女だとかなんかムカつく会話しかしていなかった。
「すまん、健闘を祈る」
どうやら異世界は戦争中なのかもしれない、争いに弱い女はいらないと言われたような感じだった。
行くなら歓迎してくれるほうに行く方がいいと思いながら、悪の国と言われる方を選ぶのであった。