第十六話 この世界の派閥
第十六話 この世界の派閥
アリスとナイツは、七剣豪から何とか離れることが出来た。
しかし、目的を失っているナイツは、仲間を殺したアリスと一緒に居るのは楽なものではなかった。
ナイツは、自分がアリスを憎むことになった理由があまりにも複雑な状況だったため、まだ自分の意思が固まっていない。
七剣豪に気付かぬうちに生活を縛られ、自分で作り上げた性格でないこと、アリスの中にいるカリンの力があったからだということ。アリスも仲間であること。
世界を旅するときに見つかると思ってアリスについていくことを決めた。
精霊たちに会うにはどうすればいいかはさっぱりわからない。
空が黒い雲で覆われて以来、モンスターはかなり強くなっている。
七剣豪たちのような、世界を維持するために封印を続けたツケが返ってきたのだろう。
神の力を手に入れた者の目的は、強い者が制する世界にするためだ。
この二つの派閥には、アリスは入らないと決めていた。
精霊なら何か知っていると目的地をそこにしたのだ。
何も考えずに、ずっと南に進んでいた。それには理由があった。
カリンが知っていたのだ。
表で会話をすると、ナイツに刺激を与えるため、アリスとカリンは心の中で会話をしていた。
「精霊の国は、ずっと南!とりあえずひたすら南に行きな!」
「なんでそんなに親切なの?」
「まぁ~あれよ!いいことあるってことよ!」
「意味が分からないわ、私にもいいことなの?」
「それはどちらともいえないかもなぁ~」
「とりあえず行けばわかるのね」
ナイツは、アリスの前を歩いていた。
考えずにモンスターとの戦いに集中して気をそらすためだ。
出てくるモンスターをなぜか次々と倒していた。
まるで、鍛えられて動きを考えながらトレーニングしている感じだった。
動きは機敏で、一回一回の剣が重そうな感じだ。
デーモンが現れた。
さすがのナイツもデーモンは強いのではないか。
しかし、ナイツは恐怖を感じていなかった。
デーモンは斧を縦に振り下ろしたが、ナイツは横に揺れて、心臓に向けて剣を突き刺した。
ナイツは、ほとんどのモンスターに先行攻撃ではなく、相手の先行攻撃を避けて攻撃するカウンターし一撃で倒していたのだ。
「避ける!相手に隙ができる!そこを狙う!よし、どのモンスターにも使えるな!」
カリンはアリスに話しかけていた。
「あんたは、鍛えなくていいの?」
「まぁ~いいかな!」
「あんた、後でしらないわよ」
「後でとはどういうこと」
「精霊の国に行くなら、私の力は使えなくなる」
「そうなの?一つになってしまうの?」
「あぁ~鈍いわね、逆よ、その逆!」
「分かれるってこと?」
「そうよ」
「ええぇ~!それじゃ私、メチャクチャ弱くなるってことじゃないの」
「だから鍛えなくていいのって聞いているのよ!」
「はぁ~、ナイツには気を遣うから私は鍛えなくていいわ」
「まぁ~勝手にしな」
アリスは何もせずただ歩くことにした。
ナイツは、なんか巨大なモンスターまで、考えながら倒していた。
アリスは、こんなにもバンバン倒されるとナイツの強さが恐ろしくなってきてしまっていた。
かなり南まで移動してきた。
「カリン?どこに精霊の国はあるの」
「ここよ!」
「えっ!何もないじゃない?」
「魔法で開通しないと通れないのよ!」
しかし、何もないところにモヤモヤができていた。
「あんた、本当にラッキーだね、あのモヤモヤに入れば、精霊の国に行けるわよ。」
「ありがとう。ナイツ!あそこに入りましょう」
ナイツは黙ってついてきた。
モヤモヤに入った二人は、謎の空間にふらついていた。
「うわぁ~、バランスが崩れる」
「きゃ~!フラフラするわ」
そして、その周りのモヤモヤが無くなり始めると、景色が見えてきた。
真ん中には大きな木があり、周りには属性を意味する小さな町があった。
「真ん中の大きな木の根元に地下への入り口があるわ、そこの儀式台の近くまでいきましょう。」
2人は、人の形をしている生き物が1人もいないことにびっくりしていた。
小さな精霊から大きな精霊まで多くの精霊が過ごしていたのだ。
そして、大きな木の地下入り口までついた。
見上げると空が全く見えないほどの大きな木だった。
地下の階段を降り、最下層部の儀式の間にやってきた。
すると目の前に光が差し込み、一人現れた。
「えっ?女?」
とアリスは驚いた。
「お帰りなさい!カリン!」
「どういうことなの?混乱しちゃうよ!」
それは、ナイツとアリスの戦いを抑えた、女神のような者であった。
名は「ハル」という。
「アリスさん、カリンとあなたを分離したいとおもっています。運良くもあなたが死ぬことなくここまでこられたおかげです。」
「ごめんなさい、私はまだ理解ができていないわ」
「そうですか、少し説明しましょう。あなたは二重転生されました。その相手がカリン!それは、ご存知ですね」
アリスはコクリと首を縦に振った。
「カリンはこの国の精霊です。」
「うそ~!確かに姿は見たことないわ」
「アリスさんの中には邪悪な魔力を感じます。カリンをそこから解放しなければなりません。」
「カリンの力ではないのですか?」
「違います。カリンはあなたの中で眠らされています。」
「なら、カリンと名乗って会話してくるのは誰ですか?」
「おそらくその邪悪な魔力の持ち主でしょう」
「ねぇカリン?本当なの?」
「・・・・・」
反応がなかった。
「精霊の皆さんいいですか?カリンを引き出します。」
精霊が突然出てきた。様々な属性の精霊たちだ。
精霊とハルが魔法を唱えて、アリスは白い光に覆われた。
そして、一人の女の子が現れた。
「ふ~ぅ!何とかでられたよぉ~。あっハルさん!お久しぶり!」
「ええぇ~!・・・かわいい~!」
クリクリの目に可愛い丸い顔、髪は長くキラキラ光っていた。
「あれ?アリスさん?私を無事運んでくれてありがとう!」
「まって、私がブラックアリスになるのはカリンじゃないってことよね?」
「そうです。その邪悪な魔力はどこかで感じたことがあるのですが、思い出せません。」
「まぁ~強さが変わるわけじゃないのね!」
アリスは、精霊の目的を知るために確かめた。
精霊は、属性のバランスを保ち世界を保持するのが目的だった。
簡単に言うと、裏方で守り続ける役目だった。
「なら、精霊さんたちは守らないといけないのね?」
「そうです、今世界は七剣豪の勝手な封印で膨らんだ時空に、邪悪な力で支配しようとする者が封印された怒りをもって解き放たれました。もしかすると、精霊を倒しにくるかもしれません。」
「なら、私は精霊さんを守るわ。」
「助かります。この精霊の国の各属性が占領されると、その属性に変わってしまい、恐ろしいことになってしまいます。」
「私はそんなに強くないの、だから出来ることをするわ」
「アリスさん、なら、精霊たちの力を分けてあげましょう。また、カリンを連れて行ってください。精霊の力を使いこなせます。」
「私が次の目的地教えるね」
カリンは明るくて可愛らしい感じだ。
そして、カリンが仲間に入った。
ナイツは、がっくりしていた。
「どうしたの?ナイツ?」
「俺が恨んでいたカリン、いや、カリンちゃんはいい子で可愛いじゃないか」
怒りの矛先を向けるところがなくなってきていた。
精霊の国では精霊の服をアリスは手に入れた。
なんと、女装備が精霊の国には普通においてあったのだ。
しかし、精霊と言っただけあって、魔法に対して強い素材らしいが、スケスケの装備だった。胸とパンツが丸見えだけど、もうアリスは諦めていた。
そう、興奮する者などこの世界にはいないのだ。
「アリス!これを受け取ってください!」
ハルに渡されたのは、純白の細い剣、ホワイト・プリンセスだった。
そして、気になる一言を言っていた。
「私は、全精霊の化身です。その剣に宿っています。きっと役に立つはずです」
「ありがとう!」
「ねぇねぇ、次は召喚獣の国にいきます!リリスいるかな?」
「ん?リリス?」
そして、3人は召喚獣の国を目指すことになった。