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枕の下に 希望の上に(6)

焦げ茶色の君と僕

だから大人になって

見返してやるんだ

君が言った言葉は

あの日感じた高鳴りは

いつ止んでも

おかしくない

君の今が

それを物語っている




350円の弁当片手に

埃舞う

解体ビルの一階で

腰を下ろした

顔は拭くが

土埃が

簡単に落ちる訳でもなく

米粒を噛みながら

時々

シャリジャリと鳴る

視界の中には

同じ風体

作業員の大なり小なり

忘れているのは

小さな傷と汚れを

気にする事

喰い終われば

茶を飲みながら

ひたすら休む事に

集中するんだ



焦げ茶色の君が

たまの休みに笑う

良く駄弁った喫茶店で

僕から誘う方が

いつの間にか多くなったな

何気に思って

少し寂しくなった




焦げ茶色の君が

不意に真顔になる

喫茶店の窓から

何処か遠くを見ている

君がその顔をするのも

いつの間にか

多くなったな

確かな事だけど

大丈夫だって言いながら

何かを誤魔化している

わかっているよ

今は

そのプライドが

必要なんだよな




工場内の音が

長方形の箱に

閉じ込められている

専用の手袋と帽子

作業服には薬品の染み

染み抜きをする気は無いから

洗濯機は二つある

防塵マスクを着けて

ローラーハンドルで

薬品を塗って部分接合

風力発電機のモーターカバーを作る

削ったりするから

ガラス繊維が飛んで

工場内は時間毎に

違うキラキラがある

吸い込んだら

二度と出てこない

あのキラキラに囲まれて

僕は一日を終える




焦げ茶色の君が

僕を飲みに誘う

いつもの居酒屋で

ビールを頼む

君が飲みたい時は

いつの間にか

僕も飲みたかったりする

断る理由が

無いから良いのか

断る理由が

有った方が良いのか




焦げ茶色の君と

僕は乾杯をする

君は

今日はナンパしようって

言いながら

いつものように

行き着けのスナックへ

何となく分かっているけど

今はいいか

言わない優しさ

君が頑張ってる理由も分かる

僕は何を

頑張ってみるか

たまに君を

遠くに感じるけれど

自分で何とかする事だ

それもプライドだ

僕のプライドだ


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― 新着の感想 ―
[良い点] 「焦げ茶色の君」の強い生き方が伝わってきて、胸を打たれました。 一番最後のくだりの、それに感慨を受けて何かを頑張ってみようとする「僕」の決意にも感銘を受けました。 全体的に力強さを感じ…
2017/12/15 09:19 退会済み
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