焦げ茶色の君と僕
だから大人になって
見返してやるんだ
君が言った言葉は
あの日感じた高鳴りは
いつ止んでも
おかしくない
君の今が
それを物語っている
350円の弁当片手に
埃舞う
解体ビルの一階で
腰を下ろした
顔は拭くが
土埃が
簡単に落ちる訳でもなく
米粒を噛みながら
時々
シャリジャリと鳴る
視界の中には
同じ風体
作業員の大なり小なり
忘れているのは
小さな傷と汚れを
気にする事
喰い終われば
茶を飲みながら
ひたすら休む事に
集中するんだ
焦げ茶色の君が
たまの休みに笑う
良く駄弁った喫茶店で
僕から誘う方が
いつの間にか多くなったな
何気に思って
少し寂しくなった
焦げ茶色の君が
不意に真顔になる
喫茶店の窓から
何処か遠くを見ている
君がその顔をするのも
いつの間にか
多くなったな
確かな事だけど
大丈夫だって言いながら
何かを誤魔化している
わかっているよ
今は
そのプライドが
必要なんだよな
工場内の音が
長方形の箱に
閉じ込められている
専用の手袋と帽子
作業服には薬品の染み
染み抜きをする気は無いから
洗濯機は二つある
防塵マスクを着けて
ローラーハンドルで
薬品を塗って部分接合
風力発電機のモーターカバーを作る
削ったりするから
ガラス繊維が飛んで
工場内は時間毎に
違うキラキラがある
吸い込んだら
二度と出てこない
あのキラキラに囲まれて
僕は一日を終える
焦げ茶色の君が
僕を飲みに誘う
いつもの居酒屋で
ビールを頼む
君が飲みたい時は
いつの間にか
僕も飲みたかったりする
断る理由が
無いから良いのか
断る理由が
有った方が良いのか
焦げ茶色の君と
僕は乾杯をする
君は
今日はナンパしようって
言いながら
いつものように
行き着けのスナックへ
何となく分かっているけど
今はいいか
言わない優しさ
君が頑張ってる理由も分かる
僕は何を
頑張ってみるか
たまに君を
遠くに感じるけれど
自分で何とかする事だ
それもプライドだ
僕のプライドだ