第92淡 対スライムその79
「ランランララ、ランランラン♪」
鼻唄混じりに、カチャカチャと調整池近くで倉庫代わりにしている樹の洞前で装備を整える俺。
季節は春を迎え、森も若葉の緑が目にも鮮やかな頃。
鋼鉄製の短冊籠手を手に入れてから約3週間が経過していた。
その間、使用感はもちろん、防御力から耐久性の確認に加え、表面加工まで施している。
現在は、籠手全体が墨色で覆われ、渋い見た目。
紅茶、酢等を使って黒錆加工をした結果だ。
とりあえず、構造上、特にこだわって左手首から二の腕かけて取り付けた一際大きく分厚い鋼板、
これを小盾のように使って避けきれない攻撃をはじく運用を考えていたのだが、
試用した限り、使用感や防御力も上々であったし、
籠手全体の鋼札を比較的厚めし、ヘルスパイダーの糸、通称ヘル糸を使って繋いでいるため、耐久性についても全く問題はなかった。
ただ、その時、可哀想だったのは2週間前、試用のためにタコ殴りにされた猪、ワイルドボアでる。
━━━2週間前━━━
「……ブモゥッ!」
2m近い巨体を揺らし、俺に突撃してくるワイルドボア。
「そんなに興奮すんなってっ!」
ドゴッ
勢いの乗った状態の頭突きを正面から受け止めるのは流石にリスクが高いため、俺は左手で裏拳を繰り出し、横っ面に鋼板をぶち当てて、軌道を逸らす。
ワイルドボアが俺の体格からは到底考えられないような重い攻撃を受け、混乱したのか一瞬動きを止めたの見て、今度はこちらから接近。
ドコドコッ……ドゴッ……ガスッ……
お次は横っ腹にワンツーストレートからフック、アッパーとコンビネーションパンチを叩き込んでいく。
事前に樹に打ち込んで試したが、籠手の装備した俺のパンチ力はセダンクラスの自動車が衝突した威力に匹敵する。
これにはいくら巨体を持つワイルドボアでも、血へどを吐きつつ、殴られた衝撃で横倒しの状態になった。
「これでとどめだっ!」
ドゴォッ
「ビギィ……。」
最後に組んだ両拳をハンマーのように振り下ろすと、ワイルドボアは頭部を大きく陥没させられ、血の海の中で息絶える。
「……うん、強度はもちろんだけど、付加した筋力向上の効果もバッチリだな。」
血染めになった籠手を軽く振るいながら、満足そうに頷く俺。
ちなみに籠手による筋力向上効果がない場合、普通自動車から軽自動車の衝突並に威力が下がるみたい。
俺のステータスの中では数値が断トツで高いだけに効果も大きいのだ。
━━━現在━━━
「……そういえば、丹精込めて樹の皮で作った防具の方は、ああやって防御力の確認とかちゃんとしてなかったな~。
わざわざダメージ受けるのもって敬遠してたけど、いざという時のために把握だけはしとかないいけないかも?……。」
装備が完了した俺は、ワイルドボア相手に籠手の性能を確かめた時の事を思い出して、あれやこれやと呟きながら、スライムホイホイに向かう。
スライムホイホイに発生していたのはスモールパープルスライム。
倒し方は、これまで通り投石で挑発して、魔法を散々使わせたら、あとは杖でぶっ叩くだけの簡単なお仕事です。
全攻撃に重打を乗せる事で手早く倒し、レベルアップの経験値と低級の麻痺耐性薬をゲットだぜ。
「……そろそろ普通のパープルスライム相手にしてもいい頃かな。」
装備の強化に手応えを感じ、次のステップを検討し始める俺。
春という事もあり、ゴブリンかコボルト狩りも出来るかもしれない。
加速する経験値稼ぎは誰にも止められない!
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:8歳
身長:131cm
体重:29kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:92
状態:正常
体力:38/38
魔力:11/11
筋力:33
反応:20
耐久:23(➕1)
持久:21
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅱ
能力:棒術経験値向上D、棒威力向上D、重打E、擦過耐性E
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅱ、格闘術Ⅰ
加護:なし
装備:鋼杖⬆反応向上F、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ鋼鉄製短冊籠手⬆筋力向上F、木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




