第91淡 対スライムその78
「ヒァーウィーゴーッ!!」
ドゴォッ
「フシュー……。」
俺の放った強烈な突きをくらって致死ダメージに至ったスモールパープルスライムが地面に消える。
残るのは白い包み。
低級の麻痺耐性薬である。
スライムパープルスライムと初遭遇してから約3ヶ月、冬も終盤に差し掛かっていた。
「……スモール級相手なら、耐性薬は使わないでおいても大丈夫そうだな。」
暖かくなってきた風を頬に感じながら、ドロップされた白い包みを拾い上げる俺。
今回は、麻痺耐性薬を使う事なくスモールパープルスライムと戦っていた。
雷線単発なら、気を付けていればそうそう当たるものではないからである。
「さてと、今日の分の経験値稼ぎはこれでいいとして……例のものは、どんな風に仕上がってるかだな。」
そして、スライム叩きが終わったら思いを巡らせるのは、装備について。
と言うのも、2週間程前、前回鋼杖に付加して以降の稼ぎをはたいて、
鋼鉄製短冊籠手の購入及び付加の依頼をしていたのだ。
しかし、まだ集団保育所が始まっていないため、ビベイロへの出発は午後イチとなる。
カルベリオ街道をひた走り、ビベイロの街に着いたら、脇目もふらず道具屋に駆け込む俺。
「いらっしゃいませ……あら、アル君じゃない、また来たのね~。今日は?」
迎えてくれたのは、この道具屋の看板娘的な若い女性店員。
前回、鋼杖の注文をして以来、店を訪れる度に何かと声をかけてくれる。
そればかりかアル君と親しげに名前を呼んでくる。
「こんにちは~、えっと……。」
……名前はなんだっけな。
「ちょ、ちょっと!ニーナよ、ニーナ=アロンソ!!
まだ覚えて貰えてないなんてお姉さん、ショック……。」
ポニーテールに束ねられたピンク色の髪を揺らし、派手に嘆くニーナ。
「あっ、いや、走ってきたので息を整えてただけですよ、はは……。
そ、それより今日は依頼してた品を受け取りに来たんですよ!出来てますか?」
「そうなの?ちょっと待ってて。」
笑って誤魔化す俺であったが、そこは店員としての仕事、ニーナは奥の工房に確認に行ってくれる。
去り際に「皆、ニーナちゃんニーナちゃんって名前を教えなくても言ってくるくらいなのに……。」等と不満そうにぼやいていたが……。
「……外見は良いけど、自分が人気者って分かって動いてそうだし、深く関わると面倒くさそうな女だな。」
こちらも小さくつぶやきながら、待っていると、間もなくしてニーナが包みを抱えて戻ってくる。
「出来てるわよ~。カウンターで現物を確認にしてくれる?問題なければ前金で全額貰ってるから、引換券と交換ね。」
包みが開かれるとそこには鈍い輝きを放つ籠手。
鋼鉄製の小札を重ねて作られ、防御力と動き易さを兼ね備えた品だ。
大人サイズのものなので俺の手には余るが、当面は革手袋に詰め物等の処置をして使う予定である。
今の俺の筋力であれば多少握りの甘さがあっても差し支えないからね。
「これは……よいぞ、よいぞ。」
一目で気に入った俺は、目立つ瑕疵がないかを確認、籠手を受け取ったら、さっさと家路に就く事にする。
一刻も早く装着感やら試してみたくなったのである。
「試すのが待ち遠しいな……金貨2枚、付加に金貨6枚ぶっ込んだ品だし。」
ちなみに単なる鋼鉄製籠手ならもう少し安くなるが、短冊仕様になると特注品になるため、値が張る。
付加については、Fランクであれば、装備の種類に関わらず相場はこの値段だ。
以上を加味して、今の稼ぎから考えると、防具を全て鋼鉄製にし、かつ、付加をするとなると最低でも1年半分の稼ぎが必要となるだろう。
「……先は長いけど、装備の充実っていうのは、なんだかんだで楽しみでもあるんだよな~♪」
行きより荷物が増えたはずなのに、足取りが軽くなる俺。
スキップさえ飛び出す始末であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:7歳
身長:131cm
体重:29kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:91
状態:正常
体力:38/38
魔力:11/11
筋力:33(➕1)
反応:20
耐久:22
持久:21
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅱ
能力:棒術経験値向上D、棒威力向上D、重打E、擦過耐性E
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅱ、格闘術Ⅰ
加護:なし
装備:鋼杖⬆反応向上F、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




