第88淡 対スライムその75
「グ、グレートだぜっ……。」
調整池の畔で鋼杖をまじまじと眺める俺。
ビベイロの道具屋に付加を頼んでから1ヶ月近く。
昨日午後、それを受け取り、今朝から試し打ちをしていた所である。
付加された鋼杖は、ステータスでもオープンした際の表示が『鋼杖⬆反応向上F』となっていた。
効果は、能力の補正と同様で、反応向上Fの場合、装備者の反応値を概ね2割増しする。
俺の反応値は19だから、装備後は23相当の反応が発揮できることになる。
で、実際どんな感じだったかというと冒頭の感想通り。
「レベルアップじゃ1しか数値が上がっていかないから実感し難いけど、こうやって装備する・しないで比較すると違いがよく分かるな。」
装備した瞬間も身体が浮き上がるというか所謂ブーストされたような感覚がしたと思ったら、素振りの鋭さが明らかに増していた。
鋤に装備を変えて振ってみると、より如実であった。
「うん、これは大金がかかるだけあるかも……。」
しかし、こうなると実戦で試してみたくなるのが人の性。
獲物を求めてスライムホイホイへ移動する。
予想通りであれば、ビッグピンクスライムが発生しているはずである。
「……よしよし、湧いてる。」
発生しているのを確認したら、まずは、片手で拳大の石を投擲。
反応が良くなったからといって、伍火球にはまだ対応出来る次元じゃないという事で、セオリーは曲げない。
「フンッ!」
ヒュッ……ガンッ
ボゥゥッ✖5
投石に対して、伍火球のご返杯が来る。
もちろん、俺は通り樹の陰に入って、これをやり過ごす。
あとは投石と樹の陰への回避の繰り返しで、ビッグピンクスライムの魔力を使い果たさせたら、いよいよ近接戦闘に移行である。
「反応値は、反射神経とかにも影響してるから……そこまで劇的なビフォアアフターがあるわけじゃないだろうけど、どういう感覚の違いが出るか……。」
ヒュッ……ヒュッ……
疑問を確かめるべくビッグピンクスライムの攻撃圏内に入った俺に飛んでくる触手のワンツーパンチ。
俺は、咄嗟に頭を左右に振ってワンツーを避けると同時に、杖を打ち上げ気味に叩き込む。
ドゴォッ
重打を込めた一撃にビッグピンクスライムの身体が浮き上がる。
ヒュッ……ヒュ……
「お構い無し、ね。」
そんな態勢でも構わず、ビッグピンクスライムは、触手ワンツーを飛ばしてくるが、しっかり打ち筋を見て回避する俺。
「……うん、何をするにしても、1挙動目が早くなってる。」
プラセボという思い込みの効果なんてあったが、そんなちゃちなものではなく、
楽々と回避から転じて渾身の一撃を見舞う等、今まで出来なかった事が出来るようになったのである。
付加の効果を総合的に確認出来たというわけだ。
そんなわけで、次々とカウンターを打ち込んでビッグピンクスライムには早々に退場して貰う。
致命傷を受けて地面に消えるビッグピンクスライム。
そろそろレベルも上がらなくなるかなと思ったが、燻製の材料確保に狩りもしているせいか上がっていた。
おまけに低級の魔力回復薬もドロップ。
「ビッグちゃんもなかなかオイシイ相手なんだけどな~。この感じなら、もうそろそろ上位種とやってもいいか……。で、またお金が貯まってしたら、また装備に付加って感じだな。」
ビッグピンクスライムも相手として悪くないが、俺にはアレハンドロという目標がある。
魔力回復薬を拾いながらも、上位種との対戦や装備の強化について思考を巡らせる。
「ただ、気にかかるのは……麻痺効果のある雷属性の攻撃をしてくるみたいだからな。樹の陰に入れば防げるのか。対策を考えとかなかないとな……。」
難敵を予期して、胸の奥から炎が燃え広がるような感覚が広がる。
にわかに好戦的な顔を浮かべる俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:7歳
身長:129cm
体重:28kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:88
状態:正常
体力:38/38
魔力:11/11
筋力:32(➕1)
反応:19
耐久:21
持久:21
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅱ
能力:棒術経験値向上D、棒威力向上D、重打E、擦過耐性E
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅱ、格闘術Ⅰ
加護:なし
装備:鋼杖⬆反応向上F、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




