第81淡 対スライムその68
夏も終わりに近付き、海岸でエビルゼリーフィッシュを叩きまくる今日この頃。
「だっしゃぁーっ!」
バゴンッ……バッシャーン
杖の一振りでバラバラになるエビルゼリーフィッシュ。
「もうこいつら相手じゃ、素振りの練習と変わらないな……。」
そんなわけで、歯応えのある相手、スモールピンクスライムの元へと向かう俺。
道中、くるくるとバトンのように杖を回して操法の鍛練に余念はない。
移動しながら、目線は周囲を警戒しながら、更に考え事をしながらでも、こうして手に馴染ませていくの事が、いざという時の迅速な動作に繋がるのだ。
「……それにしても、日頃のお礼にお菓子をあげたのは不味ったな。」
で、考えていたのが、幼馴染み達への今後の対応である。
7歳と言えば前世でいう小学1年生であるが、ろくな情操教育もないこの世界においては、欲望に忠実で、まさにクソガキだ。
前述の理由で、半月程前に街で買ったチュロスのお裾分けをしたところ、すっかり味を占めて、会う度にくれくれが酷いのである。
エスカレートして、寄越せの大合唱をしかねない状況にまでなった。
流石にこの状況が続けば、俺の単独行動も大人にバレてしまうため、
クイーン・オブ・クソガキことマルタちゃんと地道な交渉を続けた結果、週1で何かお菓子を献上するという事で話がついたのが今朝の事。
「フランス人形みたいな顔してるくせに、余裕で胸ぐら掴んだり、肩パンチしたりするもんな~。」
思わず溜め息を漏らす俺であった。
まあ、燻製を売ったり、装備を整えたりするのに、これまでも定期的にビベイロには行ってるから、そのついでに買ってくればいいけどね。
ちなみに装備の強化については、体格に合う防具がなかなか売っていないため、ここ最近、ヘルスパイダーという魔物から採れるヘル糸というのを撚りあげ作成した紐を使って、木製短冊系の防具を作り直している。
ヘル糸自体、鋼杖に匹敵する値段がするのだが、それに見合うだけの強靭性を有しているため、
これを横糸縦糸して使う事で生半可な斬撃では切れない防具が出来つつある。
そうこうしている内にスライムホイホイ前まで到着。
中には予測通りスモールピンクスライムが鎮座していた。
「居る居る♪……それじゃ、早速っ!」
俺は、間髪入れず拳大の石を投擲。
ガンッ
これをしっかり命中させた所までは、いつもと同じだが、それ以降は、放って来るだろう双火球への対策が肝となる。
ただ、何も突拍子のない事をするわけではない、前世に自衛官として身に付けた基礎動作を忠実にするだけだ。
それは、射撃と運動である。
簡単には言うと石を投擲したら、透かさず樹の陰に身を隠すだけの話なのだが、地形地物を利用して隠・掩蔽を図るのは、戦闘員として最も合理的な防御手段と言えよう。
魔法に対しても火球のようなタイプであれば、敵の小銃射撃への対応とそう変わりないのだ。
これまでは、ステータス頼りに弾いたり、避けたりしていたけど、これからはそうもいかないしね。
ボゥゥッ×2
そうして、飛んできた双火球を樹の陰でやり過ごす俺。
「ほらほら、こっちだ。そいっ!」
ガンッ
次にスモールピンクスライムに挑発をしつつ、投石でダメージを与える。
するとまた双火球が飛んでくるわけだが、それも太い樹の幹でシャットアウトされる。
あとは、相手の魔力が枯渇するまで、この動きの繰り返し。
「……これで4度目、そっちは撃ち止めだなっ!」
ガンッ
4度目の双火球に対処した後、確認のため、投石を加える。
スモールピンクスライムからの撃ち返しはない。
そうなったら、近接戦闘に移行である。
「俺の鋼杖が唸りを上げるぜぃ♪」
ドゴンッ
ヒュッ……ヒュッ……
お互い距離が詰まったら、俺は直突き、スモールピンクスライムは触手ストレートによるワンツー。
触手ストレートを上手く避けきると、俺は振り下ろし、向こうは再びワンツー。
ドゴンッ
ヒュッ……ヒュッ……
今度はワンツーが肩口をかするものの、なんとか回避。
その後も何度かお互いの攻撃が交錯したが、俺への直撃は0で済んだ。
「フシュー……。」
対して俺の攻撃が全てクリーンヒットしたスモールピンクスライムは、薄藍色の液体が入った小瓶を残して撃沈。
「今回もほぼノーダメージで倒せたな……魔力回復薬のドロップあったし、上出来だ。」
俺は、おもむろに小瓶を拾いながら、満足気に頷く。
レベルも上がって筋力値は30に達している。
おまけに1年かかって擦過耐性もFからEに上がって、万々歳である。
探索とか藪を掻き分けていったりするのに地味に役立ってる能力なんだよね。
この先、重装備になったり長期間の活動となったりすれば、装備と身体の擦れに対しても絶大な効果を発揮するだろう。
素直に喜べる成果だ。
「……あとは午後から……お菓子代稼ぎのために燻製作りか、ハァ~ァ……。」
しかし、幼馴染み対応のために面倒な作業があるのを再び思い出し、その顔に影が差す。
なんであんなに自信満々に上からモノが言えるのか、とても真似出来ない。
そして、独り溜め息を繰り返す俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:7歳
身長:124cm
体重:24kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:81
状態:正常
体力:38/38
魔力:10/10
筋力:30(➕1)
反応:18
耐久:20
持久:19
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅱ
能力:棒術経験値向上D、棒威力向上D、重打E、擦過耐性E
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅱ
加護:なし
装備:鋼杖、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




