第76淡 対スライムその64
春も半ばを過ぎた辺り。
俺はスライムホイホイの中で一際存在感を放つ半透明な赤色のスライム、ビッグレッドスライムと対峙していた。
ボボボボボボゥッ
「その手は桑名の焼き蛤(死語)っ!」
足元から立ち昇る火の手。
ビッグレッドスライムが放った炎柱である。
俺はそれを横っ跳びをして回避する。
しかし、これで安心は出来ない。
ボウゥッ……ボウゥッ……
回避した先に火球が飛んでくるのだ。
「そうはイカの金時計(死語)っと!」
バンッ……バンッ
無論、これに備えていた俺は、難なく火球を鋤で弾き飛ばす事に成功する。
それでも、まだビッグレッドスライムに対して油断は禁物だ。
ボボボボボボゥッ
「おっと!……やっぱ魔力的にもう1発あったか。」
レッドスライムは3回の魔法使用で打ち止めであったが、ビッグともなると1回上限が上がるようである。
ステータス全体を見ても……
種族:ビッグレッドスライム
状態:正常
体力:50/50
魔力:16/16
筋力:10
反応:6
耐久:16
持久:10
……といった感じで、レッドスライムに比べ体力に加えて魔力と持久の数値がちょっと上がっている。
まあ、反応値が低いまま代わり映えしないから、俺の優位は揺るがないけどね。
「魔法は4回までか……ほいじゃ、接近戦、いっちょやってみっか~。」
4回目の火柱を避けた後、魔法攻撃をこれ以上してこない事を確認したら、近接戦闘に移行だ。
ヒュッ……ドスッ
とは言え、近付きながら逐次、石を投擲して、しっかり削りを入れる俺。
折角、磨いた投擲術を錆び付かせたくないからね。
そして、スライムの手前に辿り着く頃には、投石より身体を削られ、サイズ的にもレッドスライムとそう変わらない大きさになるビッグレッドスライム。
「……さて、物理攻撃のお手並み拝見といこうか。」
これまでの傾向からビッグの攻撃範囲は最大1.5m程度。
呼吸を整え、万全の態勢をとって範囲内に歩を進める。
ビュンッ
「むっ!?」
ガンッ
飛んできたのは大人の拳くらいの太さの触手ストレート。
スピードは、高校生が遊びで殴る振りをする程度で、はっきり言って遅いが、重みの方はレッドスライムより確実に上がっていた。
鋤で受けた衝撃からすると、感覚的に大人の本気パンチくらいの威力かな。
とりあえず、俺の体重からすると、何もしなければぶっ飛ばされてしまう威力であるが、
筋力にものを言わせて踏ん張ればどうという事はない。
「こういう感じなら、真っ向勝負で打ち合っても大丈夫そうだな……どりゃっ!」
ドスッ
2発目の触手ストレートが飛んでくる前に弱突きを入れる。
触手ストレートがまた飛んできても鋤の柄でしっかり受け止め、また弱突きだ。
ガンッ……ドスッ、ドスッ……ガンッ……ドスッ、ドスッ
隙の少ない弱突きであれば触手ストレート1発に付き2発反撃が出来る。
これを俺は3回程繰り返す。
「フシュー……。」
するとダメージが限界に達したビッグレッドスライムは空気の抜けるような音をさせて、地面に消える。
残るのは薄紅色の液体の入った小瓶。
低等級の体力回復薬である。
また、この経験値により、レベルも順当に上がっていた。
「よしよし、夏には、第2次探索を計画してるからな……レベルにしても、回復薬にしても、多くあって困るもんじゃないからな。」
俺は、そう呟きながら、小瓶を拾い上げる。
スライムホイホイを除けば、同じような日常が繰り返されるこの田舎暮らしに少しは、新風を吹かせようと今度は特定の方向をぐっと探索しようと計画しているのである。
「隣村くらいまでは行っておきたい所だけどな~。何処まで行けるやら……。」
ポリポリと頭を掻きながら、森の奥に目線を向ける俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:7歳
身長:121cm
体重:24kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:76
状態:正常
体力:37/37(➕1)
魔力:10/10
筋力:28
反応:17
耐久:19
持久:19
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅱ
能力:棒術経験値向上D、棒威力向上D、重打E、擦過耐性F
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅱ
加護:なし
装備:×牛引き鋤、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




