第74淡 対スライムその63
ドパンッ
鋤によって打ち上げられ、宙を舞うレッドスライム。
春の陽に半透明の身体がキラキラと光を放っているその身は、既に投石や突きによって削られ、元の半分以下のサイズになっている。
「落ちろ蚊トンボっ!」
ドゴォッ
そこに重打を付加した強突き。
レッドスライムは、空中で踏ん張れないためか、触手突きを繰り出す事も出来ずに、なすがままに重打を受ける。
「フシュー……。」
そして、空気が抜けるようか音と共に地面に消えていった。
「お~、また小瓶をドロップ♪色的には体力回復薬かな?」
レッドスライムが居た場所に残された小瓶。
低等級の体力回復薬であった。
基本レベルも上がって74になっていた。
「……さてと、ルーティーンが終わった所で、ゴブリン探索に出掛けますか~。」
現在、冬の後半から探索を続け、東西に1㎞、南に2㎞、実地確認を終えている。
羊毛紙に描き込んだ地図の範囲もそれに合わせて広がって……
海海海海海海海海海海海
海海海海浜浜浜海海海海
海海海浜林林林浜海海海
浜浜浜牧畑□林森浜浜浜
森森林牧畑丘池森森森森
森森森森丘山丘森森森森
森森森丘山山山丘森森森
森森丘山山山山山丘森森
森丘山山山山山山山丘森
※1 □:カルベリオ村、牧:牧場、畑:田、浜:海岸、池:調整池、林:人の手が入ってる森
※2 1マス約1㎞四方
……こんな感じ。
南の丘沿いには、所々、窪みや浅い洞穴があるため、ゴブリンやらが住処するには持ってこいの地域と言えよう。
去年、ゴブリン狩りをがっつり出来た分、今年はあんまり期待しない事にしてるけどね。
そんなこんなで、カルベリオ村西側の牧場端から2㎞程南下。
丘に当たった所で、丘沿いに南西方向へ更に2㎞。
前日までに俺の中で、目星を着けていた辺りである。
……というか今週になってまだ確認してないのがその地域だけなので、そこに居なければ今期は、遭遇する確率は低くなってしまう。
頼むゴブリン……。
淡い期待を抱きつつ慎重に進む俺。
しかし、なかなかその兆候は出ない。
諦めかけたその時、微かな鳴き声が耳に飛び込んでくる。
その様子からすると、こちらには気付いていないようで単調なやり取りを繰り返していた。
前進速度を捨てて、神経を研ぎ澄ませているのが功を奏したわけであるが、その鳴き声はゴブリンのものではなかった。
「……う~ん、ガウガウ鳴いてる気がするから、野犬か狼か、はたまたコボルトかって所だな。」
いずれにしても、ゴブリンよりは、文字通り格段に鼻が利く相手だ。
風向風速は、西からの微風であり、
風上に位置しているわけではないが、念のため身体に土埃をまぶしておく。
「ゴブリンの強さから考えると普通の狼の方がコボルトより手強い気もするけど……ここはコボルトきぼんぬだな。」
取らぬ皮算用をしつつ、鳴き声がした方に20m程近付く。
「ガウウ……」
「ガウガウ……」
そこまで接近すると鳴き声の主が、複数体居る事が分かってくる。
距離にして、40mもないくらい。
そこで、風上ではないとはいえ、これ以上近付くのは危険と判断した俺は、距離を保ったまま樹の隙間から奥を見通せるような場所を探す事にする。
まあ、相手が野犬や狼だった場合は、これでも俺の存在に気付かれる可能性があるけどね。
そういう意味で、相手がコボルトである確率は、高まったかもしれない。
「……この辺りなら……お~お~、居るじゃんコボルト。」
俺が見通した先には、洞穴の前で何やらガウガウ鳴き合ってる茶色い毛並みの犬が数匹。
直立二足歩行している時点で普通の犬ではない。
それで俺と同じくらいの身長という感じ。
うん、コボルトだね。
「……よしっ……。」
俺は、コボルトを発見して、思わず小さくガッツポーズ。
更に、よく観察するとその奥の洞穴には、他にも何匹かコボルトが居そうな状況で、
昨年のゴブリンの集落程とは言えないまでも、結構な狩り高が見込まれる。
「駆逐してやる……。」
そんな事を呟きつつ、激闘の予感に胸を高鳴らせる俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:7歳
身長:120cm
体重:24kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:74
状態:正常
体力:36/36
魔力:10/10
筋力:28(➕1)
反応:17
耐久:19
持久:18
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅱ
能力:棒術経験値向上D、棒威力向上D、重打E、擦過耐性F
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅱ
加護:なし
装備:×牛引き鋤、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




