第68淡 対スライムその57
「キタ━━━(゜∀゜)━( ゜∀)━( ゜)━( )━( )━(゜ )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━━!!」
海岸に響く俺の歓声。
「イエス!イエスマイロード!トゥトゥトゥメリ~ッ!!」
いや待て、落ち着け俺。
この俺、アルベルトはこの場をクールに去るぜ。
カルベリオ村に向けて、ゆっくり歩きながら、深呼吸。
これにより急激に上がったテンションも落ち着いて来た。
何にテンションが上がっていたのかというと、職業のレベルアップに対してである。
「苦節3年……まあ、これでもカルロス爺さんから聞いた尺度からすると、かなり早く上がったみたいだけど、ようやく中堅格になれたか~。
日々の鍛練が実を結んでホント良かったわ。」
レベルアップの感慨に一通り浸ったら、次は、新たに1つ得られる能力の選択だ。
「う~む、経験値向上や必殺技系も良いけど、防御系統の能力がそろそろ欲しい所なんだよな~。
1番は回復系なんだけど、職業的にないみたいだし……。」
どの能力にするかは、職業レベルが上がる兆候が見えてから、それなりの期間があったので、多少は絞り込んでいる。
そして、物理、属性、状態異常のいずれかの耐性にしようという所までは決めていた。
「物理耐性を上げて、強みを活かしたゴリ押しタイプの戦士もありだけど、
だいたいそういうのって、属性攻撃とか状態異常攻撃でコロッとやられちゃったりするからな~。」
漫画やアニメ、ゲームなんかでもそういう展開が鉄板だしね。
まあ、装備や所持品、ソロなのかパーティなのか等によっても変わるだろう。
「気ままに暮らすには、ソロプレイを基本にしつつだろうな。
……となると支援を受けないのが前提になるから、属性か状態異常がオンゲーの常道かな。」
ちなみに属性の方は火や水、風等、
状態異常の方は、麻痺や毒、混乱等といったものだが、
全属性や全状態異常耐性、全属性・状態異常耐性なんていうのもある。
もちろん、こういった汎用性が高い能力は、特定のものを対象とした耐性より格段に効果が低い。
火属性耐性は、Sレベルともなると無効化どころか火のエネルギーを吸収・回復に使えるらしいが、
全属性・状態異常耐性なら、Sレベルでもせいぜい半減くらいまでだ。
これに物理耐性を兼ねると更に効果が低くなるので、俺の中では選択肢としてない。
しばし、腕組みして、能力の選択ウィンドウを前に思案する俺
「……ファンタジー的には、魔法に対する耐性にするのがいいのかね……と思いつつも、君に決めたっ!!」
結果、俺がチョイスしたのは、『擦過耐性』。
なんぞ?と思うだろうが、擦過というのは、物が擦ったり掠ったりする事であり、それに対しての耐性が上がるというもの。
要は、擦り傷や掠り傷をなくすための物理耐性の能力の一種である。
前にカルロス爺さんに能力について色々聞いた時には、擦過耐性を持ってる奴なんて今まで1人しか見た事がないらしいから、かなり日陰、且つ、サンプル数が少ないから一般的に謎な部類の能力みたい。
物理耐性は、コロッとやられたりするからとディスっておいて選んだ理由は、俺の戦い方に帰結する。
俺は、横っ跳びを経験値稼ぎの主体であるスライム狩りで多用しているが、勢いよく横っ跳びすると、アニメじゃないので、やっぱり擦り傷を負ったりする。
探索でも森がほとんどだから、枝の跳ね返りや蕀に引っ掛かったりで掠り傷が出来る。
……地味ぃ~に痛いんだよね。
まだ、横っ跳びは、1度の戦闘当たり2~3回で済んでるからいいものの、これが増えれば、怪我する確率も高まるし、そうなると動きが鈍ってじり貧になる。
それは絶対回避したいものであった。
「……そもそも多少耐性があろうが、そういう攻撃をまともに受けてしまった時点で致命傷だろうしね。
そうならないクラスの能力レベルにするには、だいぶ時間がかかるだろうし……。」
更に、俺の成長率から考えれば、汎用性の高い全属性耐性を極めるとかは無理そうなため、ここは擦過一点突破にする事にしたのだ。
ついでに、擦過というのが属性等に関係なく適用されるのならば、弾ける範囲の攻撃なら無効化出来る可能性もある。
能力の裏技的な活用法だったりしたら……なんて期待している。
結局、そんな皮算用もあって、地味な能力を選んでしまったが、これから実用性を検証していく必要があるだろう。
そんなこんなで、午前中は海岸でエビルクラブやエビルシースラッグ叩きをした後、
午後からはスライムホイホイ初号機でブラウンスライム叩きだ。
「そりゃっ!」
ヒュッ……ドスッ
まずは投石でブラウンスライムを削る。
ボウゥッ
当然、反撃の火球が飛んでくる。
それを鋤を角度を調整しなから振るって弾く。
「……いつもより熱くない?」
心なしか火球の熱で、前回なら肌が一瞬ヒリヒリしたものだが、
プラセボ効果でなければ、今日はそれを感じない。
早速、能力の効果を感じた気がしてテンションの上がった俺は、3発の火球をやり過ごすと、
重打付加の突き2連続で、一気にブラウンスライムを仕留めにかかった。
ドゴォッ、ドゴォッ
「フシュー……。」
「職業レベルが上がった事により、攻撃の威力に関する補正も上昇してる感じがする。
……何はともあれ、それも含めて、また色々と試していかないとだな~。」
そして、地面に消えるブラウンスライムをバックに、この新しい能力等の検証要領について思考を巡らせる俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:6歳
身長:116cm
体重:22kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:68
状態:正常
体力:35/35(➕1)
魔力:9/9
筋力:26
反応:17
耐久:18(➕1)
持久:17
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅱ
能力:棒術経験値向上D、棒威力向上D、重打E、擦過耐性F
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅱ
加護:なし
装備:×牛引き鋤、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




