第60淡 対スライムその50
「俺は、バンカーの勝負師だぁっ!」
ドゴンッ
俺の渾身のスイングが芯を捉える。
……何の?
エビルクラブのだよ。
残像を残し、勢い良く飛んでいくエビルクラブ。
「こいこいこい……きたきたきたぁ!」
ガンッ
そして、15m程離れた場所に居たエビルシースラッグに見事命中する。
夏も終わりに近付き、海岸で思い切り経験値稼ぎするのもそろそろ終わりだ。
もちろん、エビルクラブにしてもエビルシースラッグにしても、他の季節にも居るには居るが、遭遇する確率が下がってしまう。
普通の動物と同じで、魔物にも活発に動く時期というのがあるのだろう。
そろそろエビルゼリーフィッシュが大量発生してくる時期でもあるしね。
そんなこんなで、石を投げるだけではつまらないと、遊び心を出して、鋤でヒットしたモノを飛ばして当てる練習もしている。
これが意外と繊細なスイングコントロールをしなくちゃいけなくて、鋤の取り扱いに新風を吹き込んでくれた感じで正解だった。
遊び心からではあるけど、遊びではなくちゃんとした鍛練だ。
「……今日はなかなか良い調子だな。もう一丁っ!」
もう1匹近付いてきていたエビルクラブにフルスイング。
ドゴンッ
1匹目と同じくしっかりを芯を捉え、かっ飛ばす事に成功。
ちなみに打撃音からも分かるように重打を併用している。
その前には、投石である程度、ダメージを与えているので、後は止めを刺すだけ。
「せいっ!せいっ!せいっ!」
俺は、動きの鈍くなったエビルクラブ2匹とエビルシースラッグに打ち下ろしを叩き込んで引導を渡す。
「ピギィー……。」
小さな断末魔と共に息絶える3匹の魔物。
「よし、次いこか~♪」
しかし、俺は満足する事なく、次の獲物を探し始める。
鋤をクルクル回したりしながら、海岸を東西に行ったり来たりだ。
こんな感じで午前中を過ごしたら、午後からはスライムホイホイ2号機の所に行く。
「……こっちにもビッグオレンジスライムが……うん、湧いてるね。」
今日のメインディッシュは、このビッグオレンジスライムである。
とは言え、初見の相手でもないので、倒し方は、分かっている。
「てぃっ!てぃっ!」
ドスッ✖2
こちらの投石2連発に対して……
ボボボボボボボゥッ✖2
向こうは、炎柱2連発を返してくる。
そこまでいったら、投石を再開してスモールサイズまで削り倒してからの接近戦だ。
「おりゃりゃりゃりゃぁ~っ!」
いつもの4連コンボ。
最後の振り下ろしは、重打併用である。
ドスッ……バスッ……バンッ……ドゴォンッ
「フシュー……。」
……ん?
ビッグオレンジスライムをすんなり倒せたのはいいけど、何か最後の方、いつもと感触が違うというか、打撃音も違う気が……。
掌をマジマジと見てみるが、特に変化はない。
「ステータスオープン。
…………あっ!」
不思議に思ってステータスを確認した俺の目に飛び込んで来たのは、『E』という文字。
棒術経験値向上や棒威力向上がそれであれば、代わり映えしないのだが、今回は、重打がEになっていたのである。
結論、重打の熟練度がF→Eに上がっていた。
加えてレベルも上がっていたが、今は、それ所ではない。
「IYHッ!!」
嬉しさで、思わず2mくらい跳び上がってしまう。
何せ通常であれば5万発近くも打たなければ到達出来ないものであり、職業や能力の経験値補正があっても1年以上かかったのである。
その間、毎日欠かさず、魔力をギリギリまで使って演練していた。
そのため、喜びもひとしお。
「これで、通常攻撃の約2倍を誇る攻撃手段を得たわけだ……フフフフッ、さっきのでは、いまいち実感が湧かなかったから、ちゃんと試したいな~。」
俺は、ブンブンと機嫌良く鋤を振り回しながら、打ち込むのに手頃な物を探し始める。
鋤を振るう威力は、棒威力向上Eの1.4倍と重打Eの1.4倍、そして最近まで詳しくは知らなかったが職業の戦士Ⅰの補正で1.1倍。
合わせると、普通の村人が振るう威力の約2.2倍も出せる。
もちろん、筋力や反応値の差ももろに出るけどね。
いずれにしても、威力が上がった事を早々に実感したい。
一刻も早く、試し打ちがしたくなってソワソワしている俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:5歳
身長:111cm
体重:20kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:60
状態:正常
体力:30/30
魔力:8/8
筋力:23(➕1)
反応:16
耐久:16
持久:16
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅰ
能力:棒術経験値向上E、棒威力向上E、重打E
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅰ
加護:なし
装備:×牛引き鋤、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




