第58淡 対スライムその48
春を迎え、俺は5歳になった。
1歳と半年になる妹メイシャは、ちょろちょろ歩き回るようになり、家の中では俺についてくる。
そのため、俺は、全面的に世話を任されるんじゃないかと少し前まで、内心ヒヤヒヤしていた。
いや、目に入れても痛くない可愛い妹、世話をしたくないわけじゃないし、実際、面倒もそれなりに見ているつもりだ。
しかし、全面的にとなると経験値稼ぎに支障が出てしまう。
メイシャをおんぶしてとかそういうイメージのやつは、勘弁被りたいわけである。
幸いにして、母マルタは、娘にくびったけで、逆に過剰なくらい世話をしたがってるので、今の所、そうなる事もなく、俺は、集団保育所に向かう事が出来ていた。
父アレハンドロの方は、マルタに構って貰えなくて、寂しそうにしているが……放っておく事にする。
さて、今日も集団保育所を抜け出した俺が向かうのは、恒例となっている朝のスライム叩き。
調整池東側のスライムホイホイ2号機にである。
「オレンジスライムがまた湧いてるはずだけど……よしよし、居るね。」
オレンジスライムと2度目の対決。
ちなみにスライムホイホイ初号機は、秋の収穫祭以降、再構築してから、しばらく放置というか、養殖用に使用している。
初号機も魔素を溜め込んで発生ペースが向上しているので、計算上、夏頃には、ビッグオレンジスライムを拝めるはずだ。
強化されるであろう炎柱対策等、多少考えなければならない事もあるが、とりあえず、目の前のオレンジスライムを倒す事に集中しよう。
「スプリットフィンガードファストボールっ!」
俺は、落差は小さいが球速を出せる……俗に言われる高速フォークをオレンジスライムに投球する。
手の小さい俺には、まだ完璧なフォークは無理だしね。
ボスッ
オレンジスライムに球威ある拳大の石が命中。
……ボボボボボボボゥッ×2
すると反撃とばかりの炎柱2連チャン。
「バッチこーい、ほらきたまき!」
これを俺は、横っ飛びを繰り返して危なげなく回避する。
あとは、触手ストレートをいなしながら、鋤を叩き込んでいけば、空気の抜けるような音とともにオレンジスライムは霧散する。
「……うんうん、このパターンなら、ビッグオレンジスライム相手でも問題なく倒せそうだな。
もちろん、油断は禁物だけどさ。」
スモールオレンジスライム、オレンジスライム、いや今まで遭遇したスライム系に対する必勝戦法は変わらない。
楽観を排しつつ、しっかりと自信を持って臨めそうな感じである。
「……レベルの方は上がったかな~。」
おもむろに自分のステータスを確認すると、オレンジスライムを倒した事によってレベルが上がり、Lv58になっていた。
そればかりか、棒術の技能についてもⅠ→Ⅱに変化している。
棒術にしても、投擲術にしても、主たる攻撃手段については、中堅クラスになったという事である。
確かに最近は、カンフー映画のようにぐるぐる回したりといった曲芸的な動きも含めて、ほぼほぼイメージ通りの鋤を使いこなせてるしね。
あとは、肝心の職業や能力のレベル。
「前回、職業レベルが上がってから、しばらく経つけど、次いつ上がるのか全く兆候が掴めないからな~……。」
俺の知恵袋、カルロス爺さん曰く、熱心に訓練を重ねているような騎士や冒険者であっても、一人前になってから中堅と呼ばれるまでには、10年近くも掛かるらしいから、焦っちゃいけないのは分かってるんだけどさ。
そういう奴らにしたって、生活があるし、毎日実戦をしているわけでもないから、
経験値稼ぎ自体を生活の中心にやっている俺としては、一人前になってから5年後には、中堅クラスにまで上がりたいというのが本音であった。
で、欲を言えば更に10年でベテランクラスにまで到達というね。
一応、棒術経験値向上は、職業戦士としての経験値補正もあるらしいので、そこにも淡い期待を持っている。
「さてと、軽く森を探索したら……海岸で蟹でもぶっ叩くかな。」
とにもかくにも今は、地道に経験値を積んでいくしかない。
才能のないやつは努力するしかないって
やつだね。
そういう境遇……嫌いじゃない。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:5歳
身長:109cm
体重:19kg
出身:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:58
状態:正常
体力:29/29
魔力:8/8(➕1)
筋力:22
反応:16
耐久:16
持久:16
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅰ
能力:棒術経験値向上E、棒威力向上E、重打F
技能:棒術Ⅱ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅰ
加護:なし
装備:×牛引き鋤、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




