第56淡 対クラブその2
ガチンッ……
「いててて……こりゃ手が痺れるな。」
金属と金属がぶつかるような音とともに、鋤を握る手に痺れが走る。
俺が振り下ろした先にあったのは、50㎝を越える大きな巻貝の殻。
その中には、魔物の本体が入っている。
その名もエビルハーミットクラブ、所謂、ヤドカリのような魔物だ。
ステータスの方を確認すると……
種族:エビルハーミットクラブ
状態:正常
体力:8/8
魔力:5/5
筋力:5
反応:4
耐久:36
持久:3
エビルクラブと比べても耐久値が高く、実際に見た目も滅茶苦茶硬そうである。
もう12月に入ってしばらく経つという頃にも拘わらず、俺の額には汗が浮いていた。
「連チャンで魔物とエンカウント出来たのまでは良かったけど……こいつが相手じゃな~。」
エビルハーミットクラブと遭遇する少し前にエビルクラブ2匹と戦闘になっていたのである。
そこで軽く息を上げた所で、そのすぐ後に遭遇したエビルハーミットクラブとの戦闘に突入したわけだが……硬い、硬過ぎるのである。
貝殻の入口の部分も本体が入ってしまうと完全に閉じられるようになっており、死角はない。
前回、遭遇した時は、貝殻に閉じ籠る前にたまたま一撃目を当てたから、続けざまに攻撃して倒せたが、このようになっては、物理攻撃の効果は薄い。
重打でなら、貝殻ごと叩き割れそうだけど、鋤を傷めたりしたら割に合わないし……。
幸いな事に、こいつからの攻撃は小さなハサミによるものと、水鉄砲みたいな威力の水噴射なので、防御面での脅威はない。
とりあえず、叩いて駄目なら……焼いてみろ?
そう考えた俺は、浜辺に打ち上げられて乾燥した状態になっている海藻や流木をササッと、エビルハーミットクラブの周りにくべる。
あとは、生活魔法で点火すれば、カピカピの素材は、労せずして勢い良く燃え上がる。
ボウゥッ
「アチチッ……結構、いい燃え方するな~。」
少し距離を取って、ポイポイと海藻やらを足す俺。
しかし、エビルハーミットクラブは何の反応も示さない。
「あれれ?もしかして耐性があるとかかな……。」
「……ピギィーッ!」
2~3分程様子を見て反応がない事から、火属性への耐性を疑い始めた次の瞬間である。
奇声と共にスポンッと貝殻から飛び出してくるエビルハーミットクラブの本体。
「うおっ!?」
ドカッ
「ピギィィ……。」
俺は、驚きながらも反射的に鋤を振り下ろした所、俺の横を通り過ぎそうになっていたエビルハーミットクラブ本体に振り下ろした位置が調度重なる。
このジャストミートにより、エビルハーミットクラブは、小さく断末魔を上げて、動きを完全に停止。
どうやら倒せたみたいだ。
その表面は、焚き火による加熱で赤くなっていた。
「ふぃ~、少し焦ったけど、何の事ぁない。熱さに耐えきれなくなって、炙り出されただけか。」
もう既に汗も引いているのに、効かないのではと心配したのと驚いた分、思わず額を拭う動作をしてしまう。
そこでふと重要な事に気付く。
「あれ?……これって戦闘での経験値扱いになるんかな?」
……結論。
なってた。
自分のステータスを確認してみたら、これまで蓄積してた経験値と今回のでレベルが上がっていたのだ。
でも、いちいち焚き火をして倒すのは面倒だから、次からはエンカウントとしても、こいつはスルーだな。
コスパを考えて、取捨選択をする俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:4歳
身長:107cm
体重:18kg
出身地:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:56
状態:正常
体力:28/28
魔力:7/7
筋力:22
反応:16
耐久:16
持久:16(➕1)
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅰ
能力:棒術経験値向上E、棒威力向上E、重打F
技能:棒術Ⅰ、投擲術Ⅱ、探索術Ⅰ
加護:なし
装備:×牛引き鋤、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




