第49淡 対スライムその44
カルベリオ村の家々に陽光が差し込む。
野鳥がさえずる気持ちの良い春先の朝である。
タッタッタッタッタ……
そんな清々しさとは裏腹に俺は、慌てた様子で集団保育所に急いでいた。
昔の人が春眠暁を覚えずとは、よく言ったもので俺は盛大に寝坊してしまっていたのだ。
「……近頃の俺の放置プレイっぷりには、目に余るものがあるな。」
ここ最近、子育ての焦点は、完全に妹のメイシャになっており、俺はほぼほぼご勝手にという感じになっているのである。
その結果、朝食後、俺がうつらうつらしている間に父アレハンドロも母マルタも野良作業に出てしまい、いつも俺が出る時間を過ぎてしまった。
もちろん、妹のメイシャもマルタに背負われて行ってしまっている。
まだ乳児なので、集団保育所には行かずに母親と一緒にいるのである。
「良いこ過ぎるのも問題があるんだな~。まあ、フリーダムなのは、外出するのに好都合だけどさ……。」
3歳児改め4月に誕生日を迎えた4歳児として、中身は、おっさんと言えど、寝てるのを放置されて……というのは若干寂しい。
ちなみに今更ながら、俺の4月1日生まれ。
前世でのエイプリルフールであるが、この異世界では、ただ春になった初日というだけである。
ちょっと何かしらの因果を感じるけどね。
未だにドッキリ大成功の立て札を持った人とかが出てきてもおかしくはない感覚だし。
まあ、身体が完全に作り替えられてる以上、ドッキリの線はないというのは分かってるが、誕生日の日付については、神様のイタズラ心からか?なんて思ってしまう。
……それはさて置き、集団保育所に到着したら、先ずは子守り役のアントニオをなだめる作業だ。
遅刻をした後のリカバリーを怠ると、これから俺への当たりが強くなっちゃうからね。
これはアントニオを誉め殺しにする事でクリア。
遅刻問題にケリを付けたら次は、経験値稼ぎだ。
「今日はガッツでガッツンガッツンいくぞ!」
俺の予定では、スモールイエロースライムを朝朝イチで倒した後、東の森でゴブリン狩りという流れ。
「炎のストッパーじゃいっ!」
ドスッ
先ずは、スライムホイホイのスモールオレンジスライムに会心の投球である。
ボボボボボッ
「ほいきたさっさ。」
連続の炎柱には、前回り受け身2回で、接近しつつ回避。
その勢いのまま、弱突きからの4連コンボだ。
「重打っ!」
ドガンッ
「フシュー……。」
4連コンボの最後に重打で、スモールオレンジスライムは霧散。
「よしよし、本日のノルマは達成できたから……」
そして言うや否や、勝利&レベルアップの余韻に浸る間もなく、カルベリオ村の西側に向かう。
探索開始である。
装備は試運転がてら、先程のスモールオレンジスライムとの戦闘の時点からフルで身に付けている。
外見上、幼児体型というのもあって着膨れしたようになっているから、樹に枝に引っ掛からないよう気を配らないといけないし、
走ると木製の短冊がぶつかり合って若干音がするが、ゆっくりであれば隠密行動にも差し障りない。
とりあえず、この格好を見られるわけにはいかないので、村や牧場の人目を避けて、南の丘沿いに進路を取る俺。
「先週からゴブリンの噂が出ているのが、西の牧場……という事は、コボルトを見付けた辺りでエンカウントする確率は高くなっているはず。」
俺の推測では、コボルトが居た洞穴辺りにゴブリンが住み着き始めており、
逐次北上して、姿を見せているのではないかという感じである。
つまり、地図でいうと村の南西側……
※1 □:カルベリオ村、牧:牧場、畑:田、浜:海岸、池:調整池、林:人の手が入ってる森、?は自作地図上では空白。
※2 1マス約1㎞四方
海海海海海海海海海
海海海浜浜浜海海海
海海浜林林林浜海海
浜浜牧畑□林森浜浜
森林牧畑丘池森森森
森森森丘山丘森森森
森森丘山山山丘森森
↑
この辺
そこに向けて森と丘の境を進んで行く形となる。
兆候上は、牧場外柵におけるゴブリンの目撃情報だけであるが、
前にカルロス爺さんとその手の話をした時に
「ゴブリンとコボルトは、似た生態や実力からライバル関係になり易い種族じゃな。縄張り争いで殺し合いに発展する事さえままある。」
らしい。
しかも、縄張り争いした後、勝った方は、負けた方が拠点にしていた場所を占拠して普通に使うとの事。
そんなわけで、俺が追い出したコボルトの巣を利用しているんじゃないかというわけだ。
まあ、コボルトが住み着く前は、ゴブリンが住んでいたのかもしれないが……。
「もう少しで、例の洞穴か……ここからは慎重にいかないとな。」
俺の記憶が確かならば、もう100mもない位置に、コボルトと遭遇した洞穴がある。
物音を極力させないようにしながら、近付く俺。
「洞穴は…………あったあった。」
歩を進める俺の目に飛び込んでくる洞穴。
前とそう変わりない様子である。
問題は、目的のゴブリンがその中に居るかどうかなわけだが、こればっかりは中に入って確かめるのも不測の事態になりかねないので、ひたすら待つしかない。
そのまま30分程、草むらの中で待機。
「う~む、なんか中に居そうな気配はするんだけどな~。」
一向にゴブリンを確認出来ない。
そのため、昼食に戻る時間も気になり出した所で、石を投げ入れて反応を見てみる事にする。
「どうか居ますようにっ!」
俺の投げた拳大の石が洞穴に吸い込まれていく。
ドスッ
……手応えあり。
洞穴の中から怒気をはらんだ息遣いが聞こえたような気もする。
さあ、出てこい。
いつ来ても俺の装備は、大丈夫だ、問題ない。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:4歳
身長:103cm
体重:17kg
出身地:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:49
状態:正常
体力:27/27
魔力:6/6
筋力:20
反応:15
耐久:15
持久:15(➕1)
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅰ
能力:棒術経験値向上E、棒威力向上E、重打F
技能:棒術Ⅰ、投擲術Ⅰ、探索術0
加護:なし
装備:×牛引き鋤、麻の服、木皮の靴、(戦闘時のみ木製短冊胸当て、同背甲、同肩当て、同籠手、同肘当て、同膝当て、同すね当て)




