第26淡 対スライムその22
バコンッ
「見たかっ!これぞ神主打法だ!!」
俺の鋭いスイングが火の玉ボールを真芯で捉える。
打った瞬間分かる。
打者の夢、ホームランだ。
しかし、ボールは彼方に飛んでいくことなく、その場で霧散しまう。
そりゃそうだ、ボールはボールでも火球だからね。
俺がしてるのも野球じゃなくて、スライム狩りだし。
「いざ尋常に……せいっ!」
ドカッ
「喰らえっ、重打!!」
ドガンッ
あ、技の名前を叫ぶのは雰囲気で察してくれると有り難い…。
「……フシュー。」
何れにせよ、今日も怪我なくスモールイエロースライムを倒す事に成功……
カルロス爺さんにステータスの伸び具合に関する質問等をしてから、1週間が過ぎようとしていた。
レベルも3日前に1つ上がってLv26だ。
ステータスは、代わり映えしないが、地道に上げてくだけだから、その辺は気にしていない。
今は、全く気にもならないな
何しろそんなレベルだのステータスだのは些細と謂えるような断トツの問題を俺は、抱えているのだ。
それは…………
「俺に妹が出来るという事だぁ~っ!」
……そんなに母さんの身体をジロジロ見たりしないから、気付かなかったけど、
よく見たらちょっとお腹がポコッてしてたよ。
もう妊娠6ヶ月だってさ。
「確かに冬場、母さんが体調崩してるような感じだったのは知ってるけど、まさかね……。
だって、つい最近も父さんと夜の仲良しを……。
……あ、安定期ってやつか……。」
前世の保健体育を急速に思い出して独り納得する俺。
それはさておき、どうする?
いや、どうしようもないんだけどさ。
ここで身の上の話をすると男兄弟&クソ姉貴は前世でいたけど、妹はいなかったわけ。
憧れではないが憧れではないが……
「俺を……俺を……『お兄ちゃん』なんて呼んだりする存在がこの世に生まれちゃうわけでしょ。」
妹属性ではないものの、オタクとしてこれは、ヤバイ……いや、バヤイ!
なかなかの美人である母さんとそこそこ悪くない外見の父さんの間に出来た娘だから、可愛いこに育つはずだし。
……ちなみに名前は、メイシャになる予定。
これについては、些か納得していない部分もある。
それは母さんに妹が出来る事を告げられた昨晩に話は遡るが…………
「アル~、ちょっとこっち来なさい。」
まだ夕食にはだいぶ早い時間帯にテーブルに呼ばれる俺。
父アレハンドロと母マルタは、ニコニコと上機嫌な様子で椅子に座っている。
「なぁ~に~?」
それに対して俺は、ある種の胡散臭さを感じながらも、態度には出さず、可愛く小首を傾げる。
「なんだと思う?」
俺が席につくのを待って逆に聞いてくるアレハンドロ。
質問に質問で返すなーっ!
っと言ってやりたいのは、やまやまだったが、そこは大人になって子供らしい解答を考える。
「わかった!今日のおしょくじは、ウサギさんだっ!!」
うん、中世風世界観の田舎の子供としては、なかなか模範的な解答だ。
実際、ウサギ肉は美味しいし、アレハンドロが狩りで獲ってきた時は、家族でご馳走として扱ってるしね。
「ブー、外れだ。……実はな、新しく家族が増えます。」
「えっ!ペット飼うの?
アナみたいな大きいのはやだよ~。」
アナというのは、牧場の方で飼っている雌の大型犬の事である。
前にアレハンドロがそろそろ狩りに同行させる犬が欲しいと言っていた事を思い出し、あ~あの事ねという感じで俺は少し興味を失い始める。
しかし、俺の予想を裏切りアレハンドロは首を横に振る。
「それも違うよ。アルに妹が出来るんだよ。」
「…………へっ?……。」
アレハンドロの発した言葉の意味が、すんなり理解出来ず、間の抜けた声を出してしまう俺。
そこでアレハンドロは、固まる俺に近付き「つまりだ、秋頃にはアルはお兄ちゃんになるんだよ。」と追い討ちをかけてくる。
「……お……に、い……ちゃん?」
俺もようやく新しい家族の意味が掴めくる。
不意に身体の内側から沸き上がってるエネルギー。
「イヤァッホォオオゥ!!」
そのエネルギーを叫びに変換した俺だが、発散し切れず拳を突き上げながら、跳び上がる。
「ア、アル!?」
俺のハッスル振りに今度はアレハンドロが固まる番だったようだ。
俺の方は俺の方で、頭の中がワッショイ└(゜∀゜└) (┘゜∀゜)┘ワッショイとお祭り状態になってしまい、アレハンドロを気にする余裕などない。
意味もなく両腕を振ってツイストダンスのような踊りさえ飛び出す始末であった。
「……と、とりあえず、アルは喜んでくれてるみたいだよ、マルタ?」
若干引き笑いを浮かべたアレハンドロが母マルタに声をかけると、
マルタは、俺の喜びの舞いを先程と変わらぬ慈愛に満ちた笑顔で見つめているのだった。
………………で、30分程して、俺が落ち着きを取り戻した頃。
「で、産まれる妹の名前を考えてるんだけど、アルは、こんな名前が良いとかあるかい?」
よくある子供の名付けトークに移行していた。
ちなみにエコー検査なんてものはないこの異世界でどうして産まれる前から性別が分かっているかというと、
母の勘とかそういうものではなく、占いである。
占いと聞くと母の勘とそう変わらなく聞こえるが、そこは異世界である。
胎内の微かな魔力をタロットカードみたいのに感応させて、占うものなのだ。
分かるのは性別だけたけど、原理的からすると、鑑定みたいなものだろう。
妊娠5ヶ月以上となると、その的中率も9割を越える。
そんなわけで妹の名前である。
金髪兄妹の妹の名前といえば決まっている!
「ア、アルティッ……ィイシア!」
あ~、気合いを入れ過ぎて途中噛んじゃったわ。
とりあえず、俺は、将来、覆面を被らなければならないな。
「……ほ~、アルティとメイシャか。あまり聞いた事のない名前だけど、良い響きだな。」
はい?
「そうね、私はメイシャって名前が気に入ったわ。」
はい?
「うん、村長にも相談してみるから、確定とは言えないが最有力候補だね。」
はいはいはい!
俺がすぐに違うと言おうとしたが、時既に遅し。
「マルタ、アル。夕飯前にちょっと村長の所行ってくるわっ!」
急にイメージが湧いたのか、居ても立ってもいられなくなったアレハンドロがマッハの早さで家を飛び出して村長さんの所に行ってしまったのだ。
そして、何故か村長だけでなく、他の村人もその名前を気に入るというオマケ付き。
結果、我が妹の名前はあっという間にメイシャに決まってしまったのである。
チーーンッ……。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:3歳
身長:96cm
体重:15kg
出身地:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:26
状態:正常
体力:21/21
魔力:3/3
筋力:16
反応:12(➕1)
耐久:12
持久:11
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅰ
能力:棒術経験値向上E、棒威力向上E、重打F
技能:棒術Ⅰ、投擲術Ⅰ
加護:なし
装備:溝堀りスコップ、麻の服、木皮の靴




