第22淡 対スライムその18
この3日間の行動。
朝、調整池行って……
「おどりゃぁーっ!」
スライム叩いて~♪
昼、調整池行って……
「すどりゃあーっ!」
スライム叩いて~♪
夜は……
「むにゃむにゃ……」
しっかり寝る~
合間、合間に棒術の鍛練や生活魔法の練習を挟みつつもこんな感じの繰り返しだ。
もちろん、相手のスライムはビッググリーンスライム。
正直、俺にとっては近接戦闘だけでも倒せる魔物に成り下がり始めているが、技能のバランスも考えて投石も組み込んでいる。
カルロス爺さんの話では、何もない所に投石して鍛練するより、魔物相手にした方が熟練しやすいらしいからね。
実戦に勝る修行はないって事だ。
「チャーシューメーンッ!」
そんなこんなで、俺の会心の一撃でビッググリーンスライムが四散する。
「ビッグちゃん6匹で、やっと1つレベルアップっと…………さて、お次は、スモールイエロースライム待ちになるのか~。」
単調な日々を過ごしたせいで、レベルアップに際しても、次の敵に意識が行ってしまう俺。
しかし、ステータス確認もそこそこに場所を変えようした所で、何か違和感を感じる。
何か身体の奥にもぞもぞとしたものを感じるのである。
急に心配になって身体をあたってみるものの、何も異常はない。
そこでもう一度、ステータスを念入りに見てみる事にした。
「…………あれ?……見間違いじゃないよな。ついに……ついに職業レベルも上がってるっ!」
ステータス値はそこまで代わり映えしないのだが、職業が0→Ⅰになっていたのだ。
これに合わせてか能力の方も、棒術経験値向上がF→E、棒威力向上がF→Eに上がっている。
「危っね~、流してしまう所だったわ。」
しかし、これまで感じた事のない違和感の元はなんだろうという疑問は解消していない。
そのため、俺は何度も入念にステータスを眺めてみる。
「よく見たら、職業の所が微かに光ってる?…………あっ、これがそうか……。」
そこでやっとカルロス爺さんが『洗礼の儀』の時に言っていた事を思い出す。
「……職業レベルが上がったら、能力を1つ追加出来るって聞いてたけど、これがそうか。
感覚的には、こんな風に感じるんだな~。異常かと思って一瞬心配になったけど……。」
『洗礼の儀』から、日も経っていたため、すっかり抜け落ちていた。
まあ、微かな違和感を放置せず、原因究明した行動は良かったし、結果オーライとしておこう。
「能力をチョイスするためには……教会行かないといけないんだよな。もう少しスライム溜まり改2の工事を進めときたかったけど、時間かかるようなら困るし……早めに切り上げるか~。」
ただ、気付いた所で、この場ではどうしようもない。
神様の祝福である能力は、職業の選択と同じく神官職にある者でしか付与出来ないのである。
俺は、工事の進捗と能力の選択を天秤にかけ、悩むことなく後者を採った。
……………………。
1時間後、教会で唸っている俺が居た。
「…………う~ん、どちらにするべきか。」
既に酔っ払っていたカルロス爺さんをおだて、更に酒を勧める事でグダグタにして、
『追加の儀』とやらで能力を選べる状態になったまでは良かったのだが、肝心の何を選択するかで激しく悩んでいたのである。
今回は、能力とか経験値向上系ではなく、より強力な攻撃手段をゲットしようと考えていた。
そして、シンプルな方が使い勝手が良いだろうと2つまで絞った所……俺が迷っていたのは、重打と溜攻撃のどちらにするか。
どちらもその名の通り
重打は、単純に打ち込みの威力や重さを向上させるもので、
溜攻撃は、一定時間以上溜め動作をする事で、次の攻撃時に攻撃速度を含めた全てに補正が入るというものである。
「追加効果も考えると時間をかければかける程、効果が増す溜攻撃なんだけど……
すぐに発動出来る重打の方が臨機応変に戦うのには都合が良いんだよな~。」
そんな風に悩む俺を前にカルロス爺さんは、こっくりこっくりと船を漕いでおり、助言は期待できそうにない。
想像してみるんだ俺、もう一度戦いの様相を……。
荒れ狂い、怒りの咆哮を上げるドラゴン。
その前に悠然と立つ俺。
横には……そういえば、ファンタジーに付き物のエルフとか獣人とか実際見た事ないな……あっ、イメージ、イメージ。
茶髪ショートの可愛い獣人がそのスピードで撹乱。
その隙に金髪ロングの美しいエルフによる大魔法の詠唱が始まる。
そこで俺は、「あとどれくらい時間が必要だ?」とエルフに聞く。
俺の問いにエルフは、指を3つ立てる。
「3分か……よし、俺も前に出る!うおおおおぉぉっ!!」とドラゴンに立ち向かう。
で、時間稼ぎって流れなら……。
「……見えたっ!。」
俺の大声にビクリとするカルロス爺さんを他所に、能力を選択する俺。
選んだのは、臨機応変に使える重打だ。
溜めがいるような高威力の攻撃は、チートがない俺がやるよりも、才能ある奴に任せた方が効果的だろうという結論である。
いや、あくまでファンタジーのイメージだから、ドラゴンの相手なんて大それた事はもちろんしないけどね。
何れにせよ、いつなんどき強い敵と遭遇するか分からないこの異世界で、大した才能もない俺が上手くやっていくには、自分の役割をしっかりイメージして無駄なくステータスを上げていく必要があるだろう。
「なんじゃぁ?いきなり大きな声だしてアル坊……。」
「なんでもないよ~。それじゃ、遅くなると母さんに叱られるから行くね。ばいば~い!」
とりあえず、先ずはゲットした能力を試したくてウズウズしている。
寝ぼけ顔で俺に問い掛けるカルロス爺さんへの応えもそこそこに教会を後にする俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:3歳
身長:96cm
体重:15kg
出身地:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:22
状態:正常
体力:21/21
魔力:3/3(➕1)
筋力:15
反応:11(➕1)
耐久:11
持久:10
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士Ⅰ
能力:棒術経験値向上E、棒威力向上E、重打F
技能:棒術Ⅰ、投擲術Ⅰ
加護:なし
装備:溝堀りスコップ、麻の服、木皮の靴




