第19淡 対スライムその15
「嘘だといってよ、カルロス爺さんっ!
……俺は魔法の天才じゃなかったのか、くそ~。」
ほら、実はやっぱりチートがあって、大魔法を思い通りに使えるとか期待していたんだけどね。
そういうのは、なかったみたい。
生活魔法の練習をし始めて今日で3日目になるが、昨日カルロス爺さんの所に意気揚々と行って確かめてみたら
「ああ、特訓と言っても、文字があんまり読めんからな。そっちを教えるのにほとんど時間を使っとるよ?」
との事……。
要は、生活魔法なんて誰でもすぐ使えるようになるらしいのだ。
あまりに普通というか当たり前の事過ぎて技能にもならない存在というのには、些かショックを受けた。
でも、薄々気付いてはいたよ。
選択した職業が影響してるんだろうけど魔力の数値、2しかないからね。
気付かない振りして、自分を騙していたのさ……。
そんな冗談はさておき、今、相対しているのは、前にレベルアップしてから3匹目となるビッググリーンスライムだ。
「これは、俺が次へのステップを踏めるかどうか試す戦いになる。」
俺がそう意気込むのも、レベルアップの鈍化具合的に、そろそろビッググリーンスライムより強い魔物との戦いを視野に入れなければならないと考え始めていたからである。
そのため、とりあえず、投石なしでどこまでやれるか自分の実力を試そうと思ったのだ。
もちろん、これからも基本的な戦法は、距離を取って魔物を十分に弱らせた後、スコップ攻撃で戦闘に最終の決を与える……それを変えるつもりはない。
ただ、前世のゲームでの経験上、相対する魔物の強さを上げるには、適正レベルの魔物を楽に倒せるようになってからというのが鉄板であった。
「あの大きさだから、いきなりはスライムの核に攻撃は通らないだろうな~。」
2.5mあるビッググリーンスライム。
物理的にスコップの長さではその核に届かない。
そういう事もあり簡単に、戦闘経過のシミュレーションをする。
「そうなると、スコップ攻撃でしっかり削って……
触手を伸ばしてきたら、それもはね除けて……
よし、頭の中での予行は終わり。」
俺は、スコップをしっかり握り締め、ビッググリーンスライムに近付いた。
準備段階で、あくまでビッググリーンスライムとのタイマンを想定していたため、スモールグリーンスライム溜まりとグリーンスライム溜まりは、綺麗さっぱりにしてある。
従って、ビッググリーンスライム溜まりの一段上のグリーンスライム溜まりからの攻撃になる。
横からの断面図で見ると次のような位置関係だ。
__ _
\_△ l
\旦△ l
↑ \旦l
俺 ↑
大
※△は堰、大はビッググリーンスライムの溜まり場。段差は一段50㎝程度。
「俺の興廃、この一戦にありっ!」
バチンッ
最初の一撃は、最も威力を乗せられるスコップの振り下ろしだ。
ビッググリーンスライムの身体全体が大きく波打つ。
俺は、それに動じる事なく、剣道の面打ち攻撃に繋ぐ。
「せいっ!せいっ!せいっ!」
途中、予測通りビッググリーンスライムが触手を何本か伸ばしてきたので、それにはスコップの幅広い腹の面を横振りして、触手をまとめて一気に払い除ける事で対処。
飛び散る俺の汗とビッググリーンスライムの体片。
太陽の光でキラキラきらめく。
青春の輝きだな~。
………………
「ハァハァハァ……うっし、だいぶ削ってやったぞ。そろそろとどめだ。」
スコップ攻撃の方が投石より数段威力は上である。
20回程めった打ちにしている間に、ビッググリーンスライムは、順調にその体積を減らしていき、とうとういつも倒しているくらいのサイズになった。
「これなら核に攻撃を当てられる……俺の想い、君に届けっ!」
ここまで来たら、いつも通りである。
思い切り直突きを繰り出して、ビッググリーンスライムの核に直接攻撃を加える。
すると2回目の突きで、核が割れてビッググリーンスライムは大地に還っていった。
「よっしゃ、勝った!シミュレーション通りっ!!」
身体に異常がない事を確認して、爆勝宣言する俺。
それから、休憩がてらステータスチェックだ。
「レベルも上がってるな。これであと1つ上げればLv20……うししっ、村人の平均レベルに達しちゃうね。」
勝利の余韻と漠然とだがとりあえずの目標にしていたレベルが目前に迫って
思わず笑顔がこぼれてしまう俺であった。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:3歳
身長:96cm
体重:15kg
出身地:カルベリオ村
所属:なし
業:-1
徳:-2
Lv:19
状態:正常
体力:19/19(➕2)
魔力:2/2
筋力:14(➕1)
反応:9
耐久:10(➕1)
持久:9
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士0
能力:棒術経験値向上F、棒威力向上F
技能:棒術0、投擲術I
加護:なし
装備:溝堀りスコップ、麻の服、木皮の靴




