第13淡 対スライムその9
「……う~む。」
俺は、スライムホイホイの一部として、スライムを溜めるために掘った穴の前で唸っていた。
俺が思案にふけっているのは、先程まで相手をしていたビッググリーンスライムについてだ。
経験値的には恐らくオイシイ相手な事は間違いない。
そうなるとより多くエンカウントするため、発生原理を突き止める必要があるわけだ。
「スモールグリーンスライムの発生頻度は、5~6時間で20匹程度……。
俺が昨日、この場所を離れて、今日の朝に戻ってくるまで約20時間……。
発生頻度が変わらなければ最大80匹のスモールグリーンスライムがあの穴に入っていた事になるな。」
考えている間にも随時、スライムホイホイの中に発生したスモールグリーンスライムが溜まっていく。
もちろん、検証が必要なため、倒すことなく溜まるがままだ。
「某有名RPGのスライムみたいに何匹か揃うと合体して大きくなるのかな?
それとも、共食い的なのでレベルアップして上位種になるパターンか……。」
穴の中には、既に3匹のスモールグリーンスライムが溜まっているが、共食いしたり、お互いを攻撃し合ったりするような素振りがないので、後者ではなさそうな気もするのだが、
ある程度の数が揃うと発動する可能性もあるので、結論はでない。
「もどかしいけど、こればっかりは待つしかないもんな。」
ここは、腰を据えてかかろうと思う俺であった。
ちなみに時間については、時計なんてものはないので、棒を地面に立てた日時計を参考にしてのものなので、だいたいである。
「これで、6匹目か……」
観察を続ける中、また1匹、また1匹とスモールグリーンスライムがスライム溜まりに落ちていく。
……1時間近く過ぎても、何も起こらない。
俺は、暇潰しに虫をスライム溜まりに放り込んで餌付け遊びをし始めていた。
「……おっ、もう1匹。7匹目が来たか。
…………っ!?」
7匹目のスモールグリーンスライムが穴に落ちた次の瞬間だった。
7匹のスライムが白い光に包まれ1つに合わさったのだ。
そして、光が消えると7匹のスライムは、色合い等は全く変わらないものの体長1mクラスのスライム1匹となっていた。
鑑定してみると外見通りグリーンスライムである。
「……スモールグリーンスライムが7匹集まると合体してグリーンスライムになるのか!」
俺の探し求めていた答えが見えてくる。
「そうなると、グリーンスライムが7匹合体したらビッググリーンスライムなるのか?……で、ビッググリーンスライムが7匹集まったら…………なんだろ。」
もし、7匹ごと合体して上位種が生まれるという法則がスライムにあるのならば、経験値を稼ぐのにはもってこいかもしれないのである。
「とりあえず、こいつがビッググリーンスライムになるか確かめるかどうか……。」
俺は、目の前のグリーンスライムを倒してしまうか、それとも倒さず観察を続けるかどうか迷い始める。
ただ、仮説通りだったとして7×7=49匹のスライム発生を待たねばならない。
そうなるとビッググリーンスライムになるまで12時間以上観察する必要が出てくる。
しかし、どんなに頑張っても俺が日中ここに居れるのは、5~6時間に過ぎない。
「夜に抜け出して来るというのも手だけど、暗闇の中、どんな不測事態が起こるか分からないしな……。」
必要な事とそれに対して現状出来る事を合わせみた結果、ビッググリーンスライムが発生するまで直接確認し続けるというのは非現実的な方法であった。
「一晩かければビッググリーンスライムとはエンカウント出来るようになった事だけでも、十分な成果だし……これで満足するべきか……。」
半ば諦めかけた所で、ふと調整池の方に目を転じる俺。
意識して向けたわけではないが、日差しに照らされた水面が輝いていた。
調整池は、ただ漫然と掘られた窪みではない。
貯水するとともに川の勢いを1度止めて、流れ込む土砂等を落ち着かせるため、一定の区画ごと堰が作られているのである。
この構造により、早く沈殿する大きい土砂程、手前の区画で止められ、後ろの区画にいく程、砂の粒子が細かい。
「区画……堰…………これだっ!」
閃いたのは、調整池の構造をほぼそのまま流用したスライム分けである。
スライムの大きさによって越えられる壁の高さが違う。
つまり、グリーンスライムには越えられてスモールグリーンスライムには越えられない堰を設けてしまえば、小銭の振り分け貯金箱のようにスライムの種類ごとに分けられるという寸法である。
横からの断面図で大まかに表現するとこんな感じ。
__ _
\_△ l
↑ \_△ l
小 ↑ \_l
中 ↑
大
※△は堰、小の位置はスモールグリーンスライムの溜まり場、中はグリーンスライムの溜まり場、大はビッググリーンスライムの溜まり場。
「ガッツリ掘り下げないといけないが、今後の事も考えれば、作っておいて損はないはず…………思い切って大工事に取り掛かってみるかっ!」
俺は、今作ってある穴をグリーンスライム溜まりとして前後にスモールグリーンスライム溜まりとビッググリーンスライム溜まりを掘る事にした。
「多少なりとも大掛かりなのを作ると決めたら……今いるグリーンスライムは邪魔になるな…………おりゃーっ!」
そうと決まれば次の動きは早い。
投石とスコップラッシュで手早くグリーンスライムを倒す。
するとビッググリーンスライムで経験値をだいぶ稼いでいたのかそれだけでレベルアップ。
俺は、幸先の良いスタートにテンションを上げて、3歳児としては一大工事を始めるのだった……。
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主人公のステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:3歳
身長:96cm
体重:15kg
出身地:カルベリオ村
所属:なし
業カルマ:-1
徳モラル:-2
Lv:13
状態:正常
体力:10/10(➕1)
魔力:2/2
筋力:10(➕1)
反応:6
耐久:7(➕1)
持久:6
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士0
能力:棒術経験値向上F、棒威力向上F
技能:棒術0、投擲術0
加護:なし
装備:溝堀りスコップ、麻の服、木皮の靴




