第1淡 プロローグ
突然だが、俺こと田中太郎は転生者である。
転生前は、30代半ばの陸上自衛官。
そこそこの一般大学を出て何となく自衛隊に入って、まあまあの階級にもなり、人生の先が見えてきた感じ……隠れオタクだった事を除けば多少は体力に自信ある程度の普通の男だった。
それが何の因果か、もうテンプレート通りの転生なので詳しく話すのも恥ずかしいくらいだが、
神様の手違い的なので肉体が次元の狭間に吸い込まれてTHE ENDしてしまったため、代わりに異世界に魂だけ移して、人生をやり直させてくれる事になった。
その異世界というのも、多分に漏れず、剣と魔法の世界、所謂中世ヨーロピアン風ファンタジーってやつ。
そうなるとチートの1つも欲しい所なんだけど、そこはテンプレート通りにはいかないというか、自分で努力して成功を勝ち取りなさいって事らしい。
まあ、そっちの手違いで転生する事になったのに……とジト目でいたら、神様も流石に呵責を感じていたのか、あくまで自分の努力で薔薇色の人生にするならって事で成長限界なしにしてくれたけどね。
これがどんな結果を生むか分からないけど、とりあえず、スタート時点で現代人としての記憶を持ったままいられるっていうのは大したアドバンテージだし、
転生先はゲームのRPG的な世界みたいだから、マイペースに経験値を積んで、強者になってやろうと。
で、今の俺は3歳児。
ローレンシア帝国の西端……というか辺境に位置するカルベリオ村の自警団長アレハンドロ=ガルシアの長男アルベルトととして産まれ、すくすくと育って今に至っている。
転生する前は、30代半ばという事もあって、生まれ変わったは良いけれど、乳児としての生活は結構抵抗があった。
おっ○い吸ったり、う○ち漏らして世話されたりね。
そんなこんなで年相応に見えるように演技をしつつ、様子を見ながら雌伏の時を過ごしていたわけだ。
まだ文化はもちろん、言葉も最初は分からなかったしね。
最初の1年間は、そこら辺を必死に覚えたよ。
で、ちょこちょこ歩けるようになった1歳から2歳にかけては、家の中を徘徊して情報収集。
生活水準的には、科学のカの字もないような感じなのが分かった。
それと同時に期待してた通り魔法というのがある世界なのも確認出来た。
生活魔法というのか、火起こしとかそういうレベルだけど、母親がやってるのを見たからね。
2歳を越える頃になると日中は、同年代のガキは、1ヶ所に集められて集団保育みたいな感じにされる。
で、俺のこっちでの母親マルタは、齢にして20手前の中々の金髪美女。
親父のアレハンドロも同じく金髪で、自警団長だけあって体格の良い中々の伊達男だ。
そして、自警団長といっても、ここは100人そこそこの田舎の村。
騎士とかそういう身分の人間ではなく、普段は狩人して生計を立てている簡単に言うとちょっと頼れる程度の村人だと思う。
裕福ではないけれど極貧でもない感じの家柄かな。
そんな訳で母親も村の農家の手伝いに出ていたりと日中は不在が多い。
よって農作業の間は、農家やその手伝いの子供らがまとめて面倒見られてるのである。
面倒を見てるのも10歳に満たないガキンチョなのだが、おだてると自慢気に色々教えてくれるから、知識を蓄えるのに役立った。
それに加えて、ガキンチョの管理なんて適当なもんだから、目を盗んでいくらでも好き勝手に行動出来たのもありがたかった。
これで行動範囲を一気に広げた俺は、3歳になる頃には、カルベリオ村全体が庭みたいなもんになっていた。
その中でも特に入り浸っていたのが教会だ。
カルロスって白髪で白髭ボーボー爺さんが神父をやってるんだが、いつも酔っ払っていた。
こっちの世界じゃ聖職者は禁酒とかそういうのはないらしい。
何れにしても、集団保育のガキンチョと同じくカルロス爺さんもおだてると聞いてもいないような事まで色々と話してくれるから、知識の幅が格段に広がった。
知識どころか、本当は男は14歳、女は12歳という成人の折にやる儀式、『洗礼の儀』っていうのも、済ませてしまった。
これは、結構重要な儀式らしくて、酔っ払ったカルロス爺さんをして、なかなかハードルがあるものだったが、酔いに酔わせて強行突破した。
とりあえず結論から言うと、この『洗礼の儀』というのは、内容的に確かにそれだけ重要な儀式だった。
それは、職業を決めてしまう儀式であったからだ。
もちろん、後で変えられない事はないが、中途半端に変えてもそれまでの職業の熟練度が無駄になってしまうため、ある程度自分で判断が出来る年頃、つまり成人を迎えるまでじっくり自分の人生の道筋を考えさせるものらしい。
俺は、精神的には30代半ばだから、問題ないけどね。
後々の人生を考えたらスタートダッシュしときたかったしね。
それで『洗礼の儀』で俺が選んだ職業は、戦士。
村人とか農民とかもあったけど、流石に異世界まで来てそれを選ぶ気持ちにはなれなかったのと、
そうはいっても魔法使い系はよく分からないので、当たり障りのないところで戦士という無難な選択。
次に能力というのがあって、職業に応じて選べる。
結構、効果が高いらしく、これも慎重に選ばないといけないらしい。
ちなみに鍛練で身に付けた技術も技能として、ステータスに反映されるが、能力程の効果はないというか、努力の成果がそのままという感じとの事だった。
他にも色々細かい項目があるが、だいたいこんな感じだ。
名前:そのまんまの意味
種族:そのまんまだが、人、獣人、亜人(エルフ、ドワーフ等)、魔人(知性を持つ鬼人、竜人等)に種族が大別
年齢:そのまんま
身長:まんま
体重:ま
出身地:生まれた街又は地名
所属:組織、商会、ギルド等本人にとって主要なもの
業:行いにより➕99~➖99まで増減、カルマ
徳:性格や心情により➕99~➖99まで増減、モラル
Lv:0から始まる。村人なら20くらいが平均(以下の基本値は、各10程度(魔力は5))
状態:毒、麻痺等の身体の異常の他、憤怒や魅了といった精神状態も反映
体力:傷付くと減り0になると死ぬ、ライフ
魔力:減り過ぎると徐々に意識薄弱になり、0になると気絶する、マナ
筋力:物理的な力の大きさ、パワー
反応:反射神経や身体を早く動かす力、アジリティー
耐久:身体の頑丈さ、タフネス
持久:動作の持続力、スタミナ
職業:宗派問わず教会で洗礼を受ける事により付与され、該当する能力が補整される。ジョブ
能力:ジョブレベルが一つ上がる度にそのジョブに応じ取得出来る特殊能力、該当する能力が補整される。アビリティ
技能:修練によって得られる、アビリティのような補整はない、スキル
加護:特定の条件を満たす事で、神や精霊、悪魔、龍等の超常的な存在から付与
装備:同左だが、基本値に影響を与えるもののみ表示
なお、ジョブやスキルのレベルの捉え方は、0:見習い、Ⅰ:一人前、Ⅱ:中堅、Ⅲ:ベテラン、Ⅳ:天才、Ⅴ:化物、Ⅵ~:不明で、
能力の方は、F:2割増、E:4割増、D:8割増、C:2.4倍、B:4倍、A:8倍、S:十数倍。
で、肝心の俺のステータスはというと……
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:3歳
身長:96cm
体重:15kg
出身地:カルベリオ村
所属:なし
業カルマ:0
徳モラル:0
Lv:0
状態:正常
体力:1
魔力:0
筋力:0.5
反応:3
耐久:1
持久:1
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士0
能力:棒術経験値向上F、棒威力向上F
技能:なし
加護:なし
装備:麻の服、木皮の靴
ステータス的には雑魚中の雑魚だ。
まあ、弱冠3歳、仕方ない。
普通の鍛練でも経験が積めるみたいだし、今しばらくは自主トレかな。
そんな考えから、隠れて腕立てやら走り込みやら筋トレしたり、毎日、樹の幹を木の棒で叩く俺であった……。
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今話の主人公ステータス
名前:アルベルト=ガルシア
種族:人
性別:オス
年齢:3歳
身長:96cm
体重:15kg
出身地:カルベリオ村
所属:なし
業:0
徳:0
Lv:0
状態:正常
体力:1/1
魔力:0/0
筋力:0.5
反応:3
耐久:1
持久:1
※( )内は、前話からの変化値
職業:戦士0
能力:棒術経験値向上F、棒威力向上F
技能:なし
加護:なし
装備:麻の服、木皮の靴