勘違い小説の書き方 自己流
勘違いが大好きすぎて書いちゃいました。
勘違い小説とは、主人公が、周りから本性からかけ離れた人物像だと認識される小説のことだ。
このエッセイでは、勘違い小説を書く際のコツを紹介する。
1「主人公を決める」
★主人公一人……二面性重視。ギャップが大きいほど濃い勘違い。
主人公複数……上記と同じだが、複数の場合『噂』によるイメージが強い。
★キャラ設定
勘違いされるキャラを創るときは、一人につき二人のキャラクター設定をつくる。
これは、勘違いされる側の主人公のキャラクターを定めるため。
例: 主人公(表)……心優しい勇者。困っている人を見つけたら助けるお人好し。
主人公(裏)……金のために行動する腹黒。良心のない外道。
どちらを主人公の本性にするかは貴方次第。
★善性勘違いと悪性勘違い
善性勘違い……本性はゲスだが、外面でいい人のように思われる勘違い。
よりゲスさを増すと面白い。
悪性勘違い……本性はいい人だが、外面で悪人、ラスボスなど、悪いイメージを持たれてしまう勘違い。
自分的にはこっちのほうが好き。
勘違いでは、まず主人公が『悪属性・聖属性』かを決める。これが基本。
勘違いの属性詰め込み ※本性は()。
・無口無表情(ヘタレ、ビビリ)
・ラスボス、悪人(善人、ヘタレ)
・優秀な指揮官、腹黒(お馬鹿、脳筋)
・黒幕、すべての元凶(流されやすい、弱気)
・冷酷な狂戦士、寡黙(コミュ障、体が勝手に動く)
・打倒魔王に炎を燃やす正義漢(殺人鬼、戦闘狂)
・心優しい医者(人の死ぬ瞬間が好き、絶望した人が好き)
これらを逆転させても面白い。
何度も言っているが、とにかくギャップを大きくする。すればするほど勘違いの濃度は高くなる。
2「プロットを作る」
★プロットのつくりかた
基本的なプロットの作り方は割愛。
・注意……まず、勘違いに引っ張られてストーリーを悩んではいけない。
勘違いはあくまでも後付として考える。
・『2つ』プロットを作る!
まず、主人公の思う筋書きと、周囲の思う筋書きを作る。
主人公の思う筋書きのプロットは、周囲の思う筋書きのプロットの後でつくる。
例:(表)正義感で落ち着かない主人公は、傷だらけの犬に手を差し伸べる。
※この世界で犬は悪魔。人間が関わったら堕落すると信じられている。
しかし、悪魔と関っても変わった様子のないない主人公。主人公は根っからの善人だと、周囲の人々は主人公への好感度UP。その後、調子の悪そうな主人公を、周囲は悪魔と関わってしまった代償なのかと怖がる
(裏)主人公、犬の傷口をえぐるために近づく。
周囲の人々の目線を感じたので、慌てて犬を介抱する。
結局傷めつけることができなかった主人公は不機嫌になる。
※主人公は殺人鬼。血を見ると興奮してしまう。
このように、『主人公の行動をいかにすり替えるか』が重要になってくる。
コツ……周囲の勘違いで、主人公の認識がどう変わるかを意識する。
悪性勘違いでは、良いことをしようとした主人公が、悪行をしている……といったふうに、やったことと周囲の認識が『正反対』となると、余計勘違い色が強くなる。
善性も同様。善性勘違いは、なるべく主人公のゲス度をあげよう。
★勘違いの下地
勘違いの下地として『噂』を入れる。
噂は、最初から既に広がっているか、徐々に浸透していくかのどちらか。
例
――――――――――――――――――――――
「ケッ。お前が噂の騎士サマかぁ? 姫様とお熱いこって、さぞかし俺らみたいな悪人に飢えてるんだろうなァ」
「……」
騎士は喋らない。
男が騎士の肩からその端麗な美貌を睨みつけても、無言で目を瞑ったままだ。
「ン~? どうかしたのか? まさか、俺にビビって固まっちまったかぁ?」
「…………」
騎士は、男を払うこともなく、自然体で男の睨みを受け止める。
その目は堅く閉じられていて、決して男に視線を向けようとはしなかった。
「はははッ! これは面白いなァ、正義の騎士サマが、俺から目をそらして震えてやがる!」
男が大声で嗤うと同時に、騎士に民衆の目線が向けられた。
その目線には、騎士への疑問の感情はあっても、決して侮辱の類の感情は感じられない。
騎士の行動はすべて正しい。騎士は優しく、正義感の強い強者。それが、民衆に植え付けられた常識だったのだ。
男は、騎士ではなく自分に向けられた見下しの目に、怯えるように叫んだ。
「は、はははっ! どこが正義の騎士だッ! 俺みてーな悪人を放って逃がすのか? 随分と甘々な正義だもんだ!」
だから、俺は悪く無い。そう主張する男に耐えかねたらしい騎士が、不動だった表情を動かした。
目を、開いた。
「――つまらない悪役だ」
燃える炎を宿した瞳が、男一人だけに向けられる。
心臓に突き刺さるような冷たさを帯びた言葉が、男へと放たれていた。
「捕まえろ」
その一言で、街の特殊部隊が現れ、無駄のない訓練された動きで男を拘束し、どこかへ連れて行く。
騎士の口元は、悪魔のように高く吊り上がっていた。身震いしそうなほどの、恐怖感。
男だけが感じる、騎士の圧倒的な『歪み』。
騎士は、男が連行されていく様を見て、新しい玩具を手に入れたような、純粋で恐ろしい笑顔を浮かべていた。
「後で事情は聞いてやろう。お前がいかなる悪行をやってきたのか」
「ッ、は、お前は――!」
――お前の方が、俺よりずっと悪役だ……!
みっともない姿を民衆に晒す男は、騎士の刺さるのような目線から逃げるようにうつむき、特殊部隊の手でどこかへ姿を消した。
一方、騎士はというと。
(なにアイツ!? 俺何もしてないんですけどッ!
てかこえーよ! 何ずっと睨んでくんの!? 怖すぎて笑っちゃったじゃん! もうお家帰りたい……)
その尖った表情とは裏腹に、ヘタレな思考を垂れ流していた。
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・法則
このように、世間の「正義の騎士」という噂と、主人公の悪役っぽさをアピールした。この場合、正義の騎士 ≠ 悪い騎士 ≠ 本性 といった感じで、3つとも正反対の性格となっている。
勘違いにおける構造は、 噂≠勘違い面≠本性 である。
……と、長くなったが、『噂』は勘違いにおける、重要なスパイスであるということだ。
3「物語を書く」
★視点
視点とは、誰に物語を語らせるか、という勘違い小説でかなり重要な要素である。
ここでは様々な視点のメリット・デメリットを語る。
・一人称視点
これは、主人公や人々に、直接物語を語らせる視点である。
メリット:人物の感情が直に出るので、勘違いされる時の、主人公と人々のギャップがより大きい。
デメリット:当然、勘違いした人々と、主人公の視点両方を語らないといけないので、視点がコロコロ変わる。主人公の視点は省略してもよいが、それだと勘違いのギャップが薄くなる。
同じ出来事を二度語ることとなるので、読者にとっては退屈。
・三人称視点
これは、『神の視点』で登場人物たちの行動を書く視点である。
第三者が眺めているように、俯瞰して表せる。
メリット:人物の感情に流されず、すべての行動を的確に描写できる。
デメリット:人物の表情、動きだけで感情を表現しなければならない。ので、主人公の内心は、必然的に()で書く事になり、若干の安っぽさが出る。
※例外として、三人称視点で登場人物たちの心の中も書く形態もある。
・一人称+三人称視点
基本は神の視点で、時折地の文で主人公の内心を描写する視点。
勘違いにおいては、この視点が便利。
メリット:勘違いが書きやすい、
デメリット:書きやすくはあるが、勘違いのギャップは薄味。微勘違いにオススメ。
結局、どの視点が一番いいという正解はないので、自分の書きたい視点で書くことを推奨する。
★勘違いの作り方
・悪性勘違いの場合:描写を長ったらしく書く。なるべく、主人公の『ワルさ』をアピール。
コツ……『タメ』と『開放』。これが原則である。
『タメ』は、勘違いシーンに至るまでの間。伸ばせば伸ばすほど、勘違いシーンでの感激が強くなる。
『開放』は、勘違いのシーンである。そこの描写はとにかくねちっこくベタベタしていてもいい。
『タメ』と『開放』の比はおよそ7:3ほど。最初っから勘違い全開だと、勘違い性が薄くなってしまう……と筆者は感じる。
・善性勘違いの場合:主人公の酷さ、ゲスさ、腹黒さは必須。勘違いシーンは爽やかに、スッキリとしたものにするとよりよい。
コツ……基本的には悪性と一緒。
『タメ』は主人公の本性、『開放』は周りの勘違いと考える。
比は6:4ほど。タメで読者がドン引きする程のゲスさをアピールしよう。
4 「補足」
★主人公の『理解者』はいるべきか、否か?
→理解者とは、主人公の本性を理解している人物のことだ。
善性勘違いの場合:いるべき。いい人を装っている主人公の黒さを目撃し、そのギャップに苦しんで欲しい。むしろ理解者がいてこその善性勘違いである。
悪性勘違いの場合:賛否両論。筆者としてはいない方がよろしいかと思う。善性勘違いとは正反対。
★主人公の個性「厨二病」
ここまで描いてきてなんだが、主人公の性格は「ヘタレ」やら「お人好し」やら「殺人鬼」やら、ありふれたものばかりである。
ここで「厨二病」を投下してみよう。
ファンタジー世界に「厨二病」。偶然、主人公の厨二用語と同じ組織名、本名、特殊部隊名、極秘会議名。
実は「厨二病」こそが勘違いで一番書きやすい個性ではなかろうか。
厨二病の中に潜む本性で、善性と悪性の勘違いを決める。
★周囲の人物はおばか?
勘違いする側があまりにもおばかになってしまうのはいただけない。
あくまでも、主人公のための踏み台になってしまうのはいけない。
勘違いするに思い至った『根拠』は、複数個用意しておこう。
5 「最後に」
勘違いとは、いわばロマンである。
こんなかっこいい人に見られたい、強い人になりたい、そんな変身願望がこのジャンルを形成しているのだろうと思う。
勘違いを書くならば、最高にカッコいい自分を妄想して、理想とのギャップに苦しんで、その強い衝動を、想いのままに小説として表す。
厨二病が堂々とできるのが勘違い、恥じらいなんて知らずに書けるのが勘違い。
「カッコよさ」は、いわば憧れの自分だ。
私たちはきっと、理想を求めて、勘違いの世界を追い求めるのだろう。
人気の勘違い小説を研究するのが、勘違いが上達する近道ですねヾ(´ω`)ノ
ここに書かれてる例文やプロットはすべて自前のものです。