第64話 Hello New World
めちゃめちゃ短いです。
白い光。懐かしい。暖かいようで、冷んやりしてるみたいで。
不思議と落ち着く。でもどうしてだろう、胸が苦しい。何かとても大切なものが、手の中から滑り落ちていくみたいだ。
嫌だな。嫌だ。俺は、まだ。
──帰りたく、ない。
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目を開けた。少しぼやけた視界。見えた天井と照明。
重い頭を起こす。柔らかいベッドに手をついて、座る。
俺の部屋。パソコンとゲーム機と、山のようなライトノベル。
まばたき。目をこすり、あくびをした。
「んぅ、アマルティア、起きたか?」
無意識に、口をついて出た。
すぐに口を閉じ、そして考える。
──アマルティアって、何だ?
意味がわからない。アマルティア……だっけ、なんて言ったかも忘れそうだ。アニメのキャラかな、でも俺の好きなキャラにそんな名前の子はいなかったはずだけど。
名前、だよな。誰かの。そんな気がする。頭の奥が痛い。
考えるのはやめよう。頭が痛くなる。
しかしそれにしても、何か、本当に大切な、何かを、失ってしまった気がするのは、何でだろう。臓器が何個か無くなったような、意味不明な喪失感に襲われるのは何でだろう。
腐る程長い夢を見ていた気がする。それもとびきり楽しい夢。多分思い出せないけど、楽しかったのはわかる。
しかしまぁ、いいか。わかんないこと考えても意味ないし。ラノベの新巻、残ってたかな。ゲームは飽きた。本を読もう。
──立ち上がる。少しふらついた。
本棚からお気に入りのラノベを手に取る。虚ろな目でペラペラと捲る。
「あれ?」
ページが濡れてる。大変だ、シワになっちゃう。
──ティッシュを取って拭く。しかし、拭いても拭いても、ページが濡れる。
ポタリと、また雫が落ちた。
「……まじかよ」
俺は泣いてるらしい。20歳にもなって、寝起きに泣くとかどういうことだよ。泣くほど悲しいこともないし、感動してるわけでもない。
けど、それでも。
「何で、涙……止まんねぇのかなぁ」
──半笑いで呟いて、鼻をすすった。
ありがとうございました。
次から第3章。