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ライトノベルじゃあるまいし  作者: ASK
第ニ章【ゴブリン・パトリダ】
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第42話 島崎ジャンプ

こんにちは!


 Twitterで見かけたのですが、小説家になろうでは、1話あたり、2000〜3000文字程度が、評判が良いようです。


 僕の作品は5000〜6000文字なのですが、短くした方がいいのでしょうか……?




「準備急いで! 聖騎士パラディン小隊は真南、南西、南東のスタヴロス側の民家に避難勧告!終わり次第、南西の臨時キャンプで待機! 冥闇騎士グリード小隊は直接、南西に進軍!」


「隊長! 監獄囚人ターゲットを4人! 南西で発見したそうです!」


「早いなぁ……! そっちはまだ少し、傘音かさねっちたちに任せよう! ──島崎しまざきくん!」


「はい!」



 警軍本局、中央広場。壁際の台の上に乗った私は、声を張り上げて命令を下していた。


 呼ばれて、台の近くまで走ってきたのは、島崎慶次(けいじ)。見上げる彼に伝える。



「『射手アーチャー』小隊、動かせる?」


「……今すぐには、無理そうです。昨日から遠征に行ったままなので……。すぐに『ミミル』に戻るよう連絡はしたのですが、早くとも1時間は……」


「そっか。じゃあ島崎くんは私と来て。……通常部隊にも協力要請しなきゃだから、えーっと」



 キョロキョロと見渡す。もちろん見当たらない彼女に呆れながら、再び声を張る。



「えっと、じゃあそこの君!」


「え!うわ、やった!話しかけられた!」



 何故か指を差されただけで喜ぶ男性隊員。



紗江さえっちに、通常部隊の派遣許可を貰ってくるように伝えといて!今すぐに!」


「えっ、でもそれなら神託者ウィザードの誰かに脳内通話の神法で伝えてもらった方が早くないですか?」


暁隊ウチ神託者ウィザード小隊は今、『聖帝城』に召集されちゃってて、本局に1人もいないの!よい隊には神託者ウィザードいないし……」


「──隊長」



 焦りのせいか、状況判断にムラが出てきた私の肩を、島崎くんが名前を呼びながら叩く。



「それならば瑞樹みずきさんに頼んだ方が早いですって」


「そっか……そうだね!ありがとう!……君ももう戻っていいよ!ごめんね!」


「あ、はい!」



 少し残念そうに自分の小隊に戻っていく男性隊員から視線を戻して、島崎くんと本局を出る。


 ──先ほど。世界新聞の速報が届いて、スタヴロス監獄とさほど遠くない位置にある人間領ミミルは、警戒態勢に入った。


 住民を巻き込むわけには行かないので、ミミルの南西にずっと行った先にあるスタヴロスから脱獄した監獄囚人ターゲットが、ミミルにたどり着く前に処理したい。


 スタヴロス監獄に最も近いのが人間領ミミルだからこそ、どの種族よりも警戒すべきなのは私たち人間だ。


 もうすでに、スタヴロス方面である、南西には、傘音っち率いる宵隊が待機しているから、先ほど現れた4人の監獄囚人ターゲットも、傘音っちたちがどうにかしてくれているだろう。


 しかし。今回、脱獄した監獄囚人ターゲットは計45人。


 彼らが足並み揃えて動くとも思えないし、現に4人だけいち早くミミルに接近している時点で、まとまって行動しているわけではないだろう。


 1人か2人、統制力に長けた人がいたら、やばいけど。


 個々の実力の高さを鑑みると、監獄囚人ターゲットたちが統制のとれた戦い方や逃げ方をした場合、それらを止めるのは至難の技となる。


 彼らが協力して脱獄したとも思えないんだけど、万が一。バラバラに行動してくれなかった場合には、ミミルも危ないかもしれない。



「じゃあ私の家まで、島崎くん、お願い!」



 警軍本局を、出てすぐ、噴水のある広場の中央付近で、私は島崎くんにいつもの“アレ”をお願いする。



「わかりました。いきますよ」


「うん……!」



 島崎くんは、矢を一本つがえて、弓を構えた。強く引かれた弦。静かにしなる弓に、淡い光が集まる。


 射手アーチャーのスキル。矢の力のベクトルを操作できるその力を利用する。


 

「これ、離さないでくださいね。この前は大変だったんですから」


「わかってるって」



 今も引かれ続ける矢に取り付けられた縄を、握る。


 私たちがやろうとしていることは、単純に、移動。


 射手アーチャーのスキルで、減速せず進む矢に取り付けられた縄にしがみついて、豪速で空を駆ける矢に“引っ張られて”、空を飛ぶという、頭の悪い発想。


 でも楽しいし、何よりも速いので、移動の際には重宝してる。



「3、2、1……ふッ!」



 放たれた矢は、私の家のある方向の空に向かって、目にも留まらぬ速さで飛んだ。


 そして、矢に付いた縄を掴む私たちも、矢に引っ張られて、宙に舞う。



「──ぅうわぁ!」


「そろそろ慣れてくださいよ!隊長!」


 人間領ミミル上空。思わず縄を離しそうになりながら、朝日に照らされる街を見下ろす。


 気持ちのいい風に、今朝整えた髪をボサボサにされつつ、やがて見えてきた私の家の屋上。



「今日こそは成功させるぞ!いくよ島崎くん!」


「ちょっ!だから飛び降りるのはやめましょうっていつも言ってるじゃないで……うわぁぁああ!」



 島崎くんの手を引っ張りつつ、縄から手を離す。


 矢に引かれて空を飛んだ勢いもそのままに、我が家の屋上に向けて落下する私と島崎くん。


 凄まじい勢いで近づく石造りの屋上の床に──



「ぎゃふんッ!」


「ぐあっあっ!」



 今日も今日とて──着地失敗。


 屋上に干してあった洗濯物を巻き込んで、全身を襲った衝撃と共に転がる。


 私は、もっとこう、スタイリッシュに、屋上に着地したいのだが、いつもいつも受け身も取れずに落下するだけだ。


 難しいなぁ。



「痛たた……」


「もう!隊長!隊長は異世界から来たか何だか知りませんけど、体が強いので大丈夫かもしれませんが!俺は普通にダメージでかいんですからね!」



 立ち上がって、自警軍の制服の汚れをパタパタと叩いて落とす私に、頭を押さえて辛そうな顔をした島崎くんが見上げながらそう言った。


 そういう割に、あの高さから石造りの家に激突して生きてる島崎くんも大概だということに気がつかないのはどういうことか。



「先、行ってるからね」


「隊長のバカぁ……」



 しばらくは立ち上がれないだろう島崎くんを置いて、私は階段を降りる。


 家の中に入って、一直線に瑞樹っちの部屋を目指す。


 そう。私たち──紗江っち、瑞樹っち、傘音っちは、みんなで同じ家で暮らしている。


 廊下を小走りで進んだ私は、勢いよく瑞樹っちの部屋のドアを開ける。



「ピットちゃーん!」


「……ピットは今、紗江さんのところに向かわせましたから、いませんよ。紀伊きいさん」



 部屋に入るなり瑞樹っちの『使い魔』の名前を呼んだ私に、瑞樹っちは呆れたように答えた。


 質のいいドレスに身を包み、その灰色の髪を窓からの風に揺らす瑞樹っちに、早速要件を伝える。



「ナイスだ瑞樹っち!そのまま紗江っちに、自警軍の通常部隊の派遣許可を貰ってくるように伝えてくれないかい?」


「もう伝えました。さすがにあかつき隊と宵隊だけでは対処しきれない問題だろうとは思ってましたから」


「もうー、本当に最高だな瑞樹っちはっ!」



 瑞樹っちに抱きつく。


 

「もう!紀伊さん!それどころじゃないでしょ?今はミミルの一大事なんだから!」


「あ、ごめんごめん。……じゃあ私はもういくから!」



 スベスベの瑞樹っちのほっぺたから手を離して、私は部屋を出ていく。



「紀伊さん!これ!」



 部屋を出てすぐ、ドアを閉める直前、瑞樹っちが投げてよこしたのは、2つの小瓶と3つの紫紺色の石。



「お!ありがと!」



 ウインクして、私はドアを閉めた。


 貰った3つの紫紺色の石をポケットに入れて、私は階段を駆け上がる。


 屋上に出た私は、死んだように倒れて動かない島崎くんの頬をペチペチと叩く。



「起きろー、いくぞー、島崎くん!」


「ちょ、あの、ほんと、痛いから、やめて!」


「はい、瑞樹っちに貰ったから、コレ飲んで」



 先ほど瑞樹っちに貰った2本の小瓶を片方、渡す。


 それを見て安心した様子の島崎くんは、ゆっくり起き上がって、小瓶の中の液体を飲み干した。


「くあぁっ、助かった……」


「大げさだなぁ」


「誰のせいだと思ってるんですか……。それにしても本当に凄いですね、瑞樹さんは。『魔力』で身体を癒すなんて」



 その通り。先ほど瑞樹っちから受け取ったこれは、言わば回復薬。傷や体力消耗をある程度無かったことにしてくれる。


 回復神法を使う『天使』の加護を授かっていないのに、人の傷を癒すことができるのは瑞樹っちしかいない。



「瑞樹っちに感謝して、そしてすぐさま出発だ!」


「え、もう流石に走って生きましょうよ……。もう飛び降りるのは嫌ですって」


「つべこべ言わずにすぐ行動!ほら、南西の『ヒュール大草原』に向かって矢を放つんだ!」



 めちゃくちゃ嫌そうな顔をしつつ、島崎くんは再び、縄の付いた矢を引く。


 次の目的地は、人間領ミミルの南西、『ヒュール大草原』。


 今まさに、傘音っち率いる宵隊がいる場所だ。 


 ──同時に、スタヴロスから脱獄してきた監獄囚人ターゲットがすでに4人現れた場所。


 警軍本局にて、他の小隊には指示をし終えたし、もうすぐに紗江っちが通常部隊の援軍を呼んでくれるだろうから、もう私と島崎くんも、最前線に向かわねば。


 程なくして、雲ひとつない青空を切って進んだ矢に引っ張られ、私たちは再び空へと飛び込んだ。




❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎



「──ゎああぁぁぁあッ!」


「ひゃっほーう!」



 どかーん。


 比喩ではなく、どかーんという音と共に、ヒュール大草原の地に落下、もとい激突した私と島崎くんに、宵隊のみんなが驚いている。


 全身の痛みに呻く島崎くんに、瑞樹っちから貰った回復瓶の2本目を渡す。


 瑞樹っちは、私たちがヒュール大草原に向かうのに、またこの移動法を使うだろうと見越して、島崎くん用の回復瓶を2本用意してくれていたのだ。



「ちょ、紀伊!また“飛んで”来たの!?」


「うん!楽しかった」


「はぁ……」



 走り寄って来た傘音っちに、ピースサイン。


 そして、ふと気がつく。



「あれ?監獄囚人ターゲットは?4人現れたんでしょ?」


「それが、ちょっと戦ったらすぐにスタヴロスの方に逃げ帰っちゃって……」


「逃げた……?とりあえず、ミミルの方には向かってないんだね?」


「うん。単純に、南西方向に戻って行っちゃった」



 どういうことだろう。脱獄してからの、彼らの目的や意図がわからない以上、彼らの行動は読めないし、わけもわからない。


 ミミルに侵入して、食料とか、色々と必要な物資を手に入れて、逃亡を続けるのだと思っていたけれど、目的は別にあるのかな……?


 まぁ、わからないものはわからない。


 切り替えよう。



「そうだなぁ、じゃあ。宵隊の男性諸君!私に付いて来て!」


「隊長?あまり前に進みすぎるのは良くないですよ?」


「大丈夫だ島崎くん。この辺は傘音っちにてもらえれば十分だし、もうそろそろ暁隊ウチ冥闇騎士グリード小隊も到着するだろうし、ね」


「……だとしたらどうして宵隊の男だけを集めるんですか?」


「女の子人気の高い傘音っちのそばには女の子がいた方が良さそうな気がしたってだけだよ」


「なんですかそれ……」



 肉弾戦最強の宵隊の男性隊員をお借りして、私たちはスタヴロス方面に向かうべきだ。


 あっちが来るのを待ってるだけでは意味がない。


 先手を取らなければ。万が一被害が出てからじゃ遅い。



「じゃあ男性諸君!このまま南西方向に進軍するけど、陣形は横並びでお願い!10メートルくらいの等間隔で並んで、監獄囚人ターゲットを見つけ次第、両隣りの隊員に報告!最悪の場合戦闘になるだろうから、気をつけてね!」


「「「はい!」」」



 元気のいい返事を皮切りに、私たちは横一列に広がって走り出した。




❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎




「──監獄囚人ターゲット!新たに2人接近!」


「倍の人数で対応して!」


「了解しました!」



 低い草が生い茂るヒュール大草原の地面を蹴って進む。


 ミミルの護衛を傘音っちと、宵隊の女性隊員、そしておそらく到着したであろう暁隊の冥闇騎士グリード小隊に任せて、私たちは人間領ミミルの南西をひたすらに進んだ。


 武闘派、かつ実力派揃いの宵隊の男性隊員を連れた私たちは、ミミルを出発してから1時間ほどで、数人の監獄囚人ターゲットと接触、戦闘した。


 しかし、彼らは、少しだけ戦うと、すぐに神法を使って座標移動テレポートしてしまう。追いかけようにも追いかけられないし、どこに逃げたかもわからない。



「くっそ!また逃げられました!」


「……了解。……一体、監獄囚人ターゲットたちは何をしようとしてるんだ……?」



 報告を受けて、訝しげな表情を浮かべる島崎くん。同感だ。どうにも意味のあることをしているとは思えない。


 どうせ逃げるなら、私たちとわざわざ接触しなければいいのに。


 何か、明確な目的があって行動しているのだろうか?


 

「どう思う?島崎くん」


「……先ほどから現れた監獄囚人ターゲットたちが、全員、座標移動テレポートによって逃げましたが、彼らが皆、神法を使える神託者ウィザードでは無かった点を鑑みると、彼らを座標移動テレポートによって、“にがしている”何者かがいるはずです」


「だよね。それも多分、全員、同じ場所──というか所定の場所に戻ってると思う」


「となると、監獄囚人ターゲットたちは、個々ではなく、集団で協力、もとい手を組んで行動しているとみて、間違いなさそうですか?」


「最悪のパターンだけど、そうだね。ある程度の連携がとれてるあたり、リーダー的な存在もいるのかもしれない」



 私たちの進行方向──南西から、度々現れては逃げ、また南西から現れて逃げる。


 おそらく、南西に拠点を置いているのだろう。……確定ではないが。


 彼らが隠れているとすれば、このヒュール大草原を抜けた先にある、『ヴァミオン遺跡』。


 むしろそこ以外は、ここのように、見晴らしのいい草原や平野だから、隠れるにはヴァミオン遺跡しかない。


 でも、それにしたって。


 私たちはもうすぐヴァミオン遺跡が見えて来るくらいには、ミミルから移動してきた。


 ここまで来ていると知れば、どこか他の場所に逃げるなりしても良さそうなのに、監獄囚人ターゲットたちは頑なに、ヴァミオン遺跡のある西南方向から現れる。


 まるで、自分たちが西南にいる(・・・・・)とアピールするかのような──



「──ヴァミオン遺跡、見えて来ました!」



 島崎くんの言葉に頷きつつ、司会の中央に現れた遺跡に向かって加速する。


 何か嫌な予感がする。


 ──やがてヴァミオン遺跡に着いた私たちは、すぐさま遺跡の隅々まで捜索した。


 が、しかし。



「……監獄囚人ターゲットは、見当たりませんでした」


「こっちも、何も……」


「自分たちもです」


「まじかー……」



 何かおかしいなとは思っていたけど。このヴァミオン遺跡の先はもうすぐにスタヴロス監獄の近くだから、そこから脱獄して来た彼らが滞在できる場所はない。


 だからこそ、ここしかないと思っていたのに。


 かといって、座標移動テレポートで逃げるのは不可能だ。座標移動テレポートは、使用者──神託者ウィザードの力量にもよるが、それほど遠い距離を瞬時に移動できるわけではない。


 かなりの大人数で来た私たちは、ヴァミオン遺跡を完全に包囲している。


 到着する直前に座標移動テレポートを使ったところで、私たちの視覚範囲よりも遠くへは移動できないはず。


 これじゃあまるで、最初からここにはい(・・・・・)なかった(・・・・)みたいじゃないか。



「──隊長!『使い魔』が!」


「あれ、ピットちゃん!」



 その時、ふわふわと現れたのは、瑞樹っちの使い魔、ピットちゃん。羽の生えた小さな女の子の小人みたいなピットちゃんは、その小さい口を開いた。



『──知の妖精と、強き弱者の守る土地。その風を集める水無き湖の黒い影と勇者たち。雨の少年と運命の少年──』



 静寂に包まれる遺跡を、鈴のような声が響き渡る。



『──黒い影に従う魂たちは、朽ち果てた神の遺跡に在らず。悪しき嘲笑が響くは草原の彼方──』



 なんてこった……。



『──朽ちた人形に惑わされず、水無き湖に進む魂たちを、どうか──』



 騙された──。



「ちょ!隊長!?」


「急ぐよみんな!監獄囚人ターゲットたちが目指してるのは──」



 走り出した私に困惑するみんなに声を張り上げる。



「──リム湖だ!」



本日もお読みいただきありがとうございました!


ピットちゃんの言葉の意味は、次話、ちゃんと説明します 笑

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