第36話 世界新聞
こんにちわ。
今日はクリスマス。日本中で幸せの火が灯る日です。
僕はクリスマスイブに書き終えた最新話をクリスマスの朝から仕上げてました。はい。
彼女と妹と幼馴染みと可愛い転校生は、今年は僕の元には現れませんでした。
陽は随分と高くなった。
ボロボロに破れた服の端が、若干湿った風に揺られる。
ブカブカの服を着崩した男──レプトスが、ポケットに手を突っ込みつつ、いつも通りのにやけ面を顔に貼り付けている。
周りには、恐ろしそうに俺たちを見やる人間たち。混乱が混乱を呼び、今では広場は静まり返っていた。
実際には、混乱しているのは周囲の市民だけではなく、俺たちもそうである。
というのも、レプトスの後ろに先ほど降り立ったのは、前龍皇フロガの龍形態を彷彿とさせる、一体の蒼き龍。
“竜”というよりは、龍。
何が違うのかと言われると、はっきりしたことは言えないが、“竜”は、鳥に近く、“龍”は、蛇に近い形態のイメージだ。
フロガの龍形態と少し違うのは、目の前の龍は、長い体躯に、細い脚と腕の、華奢な龍である。
こう、女性的な雰囲気があるようにも思えるが、いかにもゴツいフロガの龍形態にも劣らない覇気のようなものを感じる。
思わず、見惚れるようにその蒼い鱗を目で追っていると。
「ひゃはは。ほら、何ボーッとしてんだお前ら、急ぐぞ」
レプトスは早速、背後の蒼い鱗に手を掛ける。
「レプトス……お前は一体、何者なんだ……?なぜ龍を従えている……?」
震えた声でピズマが言う。立ち尽くす俺たちの中で、唯一声を出したのがピズマだった。
その言葉に、俺がドキッとする。変な汗をかきそうになる。
というのも、これまで、レプトスの実力が、パトリダの幹部のレベルを遥かに超越しているということを、ひた隠してきたではないか。
そのために、俺は多大なリスクを冒してまで、前龍皇フロガを倒した風の立ち回りをさせられたわけだし、王宮内でも何かとフォローした時もあった。
変なやつ、くらいの認識を何とか保ってきたはずなのに。
いくら謎多きレプトスとは言えど、さすがに龍を引き連れてきたら、ただ者ではないと思われるだろうに。
どうすんだ、レプトス。
「……まぁ、今言ったところで理解できないことだろうからなぁ。優先順位的にはまずはパトリダに帰ろうぜ、ひゃはは」
「なんだその答え」
「ひゃはは。ランは黙ってろ、ほら。行くぞお前ら」
思わず口に出たが、本当になんだその答え。
ここまできて誤魔化すって、どうなの。
レプトスらしいと言えばらしいけども。まぁいずれ問い詰められることがあろうと、俺は庇ってやらねぇからな。
色んな疑問を残しつつも、俺たちは今一度、龍に目を向ける。
「…………」
龍は何も言わない。が、どことなく気まずそうな表情にも見えたので。
「あのさ、龍?……さん?多分、さっき飛び立った時、普通に立ち去ったつもりだったのに、こうして俺たちを待ってた感じになったのが地味に恥ずかしかったりする?」
「……言ウナ」
「レプトス。龍さんを困らせてどうすんだ。この龍さんはかっこよく飛び去ったつもりだったのにお前が引き止めるからこんな恥ずかしい思いをだな……」
「お、おいラン。何普通に話しているのだ。……龍が目の前にいるのだぞ」
アマルティアはガチガチに緊張している様子だ。声が上ずっている。
「いや、もう開き直った方が早いかなって。せっかくの機会だし、乗せてもらおうぜ、背中」
「ひゃはは。物分かりが良くて助かるぜ」
「ランくん、本当に怖いもの知らずだよね」
呆れたようにため息を吐くデクシア。
「でも、今はそれが正しそうだね……ほら」
デクシアが指差す方向から。
「いたぞ!侵入者だ!……な!警軍本局が……!?許さん!1匹残らず殺してしまえぇぇ!!」
うおををを、とか叫び散らしながら。
港の方向からやってきた人間兵達が、武器を手に走ってくる。
喧騒を取り戻す広場。
「……僕は怖くない。僕は怖くない……僕は」
「落ち着けアグノス。まぁデクシアの言う通り、そろそろやばそうだし、行こうぜ」
「にぃ、手、離さないでね」
「もちろんだよ、アリステラ」
「お待ちくださいラン様!実は、高いところが苦手でして……」
「知るか。警軍本局の螺旋階段を飛び降りるって案出したのはお前だろうが」
「あれは下が暗かったからで……」
「ピズマはとにかく、ラン。龍のどこに捕まればいいのだ?」
一気にまた、騒がしくなる俺たち。
賑やかと言っても差し支えないほどに、今の俺たちは危機感と緊張感に欠けていた。
龍の背中に乗るという、もはや夢のような体験ができるということで、みんな、心が浮ついていたのかもしれない。
……龍の背中が快適かどうかも、考えていなかった。
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「いやぁぁぁぁぁあっ!!!」
叫ぶ俺。
「ひぃぃいいいっ!助けてくださいラン様ぁあっ!!」
叫ぶピズマ。
「凄い眺めだね、にぃ」
「うん。こんな空高くから世界を見たのは、僕らが初じゃないかな?」
楽しむコインの双子。
「…………」
「…………」
押し黙るアマルティアとアグノス。
皆それぞれの反応を示す中、龍の首元にまたがっているレプトスは、何か、龍と会話をしているようだ。
場所は大空のど真ん中。
冷えた風が気持ちよく頬を撫でる、そんな空間で、俺たちは必死に鱗にしがみ付きながらパトリダに向かっていた。
「デクシアぁぁあっ!その!重力をちょっとだけ操る神法、俺にも使ってぇ!」
俺は、神法で龍の背中に張り付くように留まっているデクシアに叫ぶ。
「ごめんねランくん。これ、自分自身にしか使えない神法なんだ」
そんなわけで、神託者の双子は悠々と背中に乗って景色を楽しむのだった。
「……ラン、なんなら、手、繋ぐか?」
「さすがだぜティア愛してる!」
ビビって黙っていたアグノスとは違い、何か考え事をしていた様子で押し黙っていたアマルティアは、急に顔を上げて、俺に手を伸ばしてきた。
「ほら、ラン」
「あぁ。……ありがとうぅぎゃぁああああっ!」
「どうしたラン!?」
「痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!!」
握力やばないか?やばないか?
いや、確かに父親の影響でアマルティアは常人より何かと強い部分が目立つけど、こんなに握力が強い男の子ではなかったはずだ。
何が起きてる?
「す、すまん!そんなつもりは!普通に握ったはずだったんだが……」
アマルティアは力を緩める。が、手の痛みが治まらないので、見てみると。
「手!?折れてる!?」
指がイかれた方向に曲がってしまっている。手羽先にしか見えない。
「ピズマぁぁあっ!手がぁぁ!」
「ちょ、そんな余裕、ありませんって!!」
「早く治して死んじゃうぅぅ」
「本当にすまん!ラン!」
龍の背中に乗って空を飛ぶ。こんな夢のような体験が生きてるうちにできるなんて、幸せだなぁ、と、出発時には思っていたのだけれど。
賑やかではあるが、安全ではなかったな。本当に。手が痛い。
──1時間も経っていないくらいだろうか。
パトリダが見えてきた。
歩いて帰るには時間がかかるため、めんどくさいとは思っていたので、この早さは本当にありがたい。
「ひゃはは、見えてきたな。さて、そろそろ着くが、降りる準備はいいか?」
レプトスが立ち上がる。どうやってバランス取ってるのだろうか。
「降りるって言ってもさ、こんな大きな龍が空から降りてきたら、パトリダも大騒ぎじゃないか?」
「ひゃはは。ランはアホだな」
「殺すぞ」
「おいおい、誰のおかげでこんなに早く帰れたと思ってんだぁ?敬語を使え、ひゃはは」
「殺し奉ぞ」
「ラン様、それ多分違います」
言ってるうちに。
下降し始めた龍は、パトリダから少し離れた荒野に着陸?着地?龍ってどんな扱いだろう。ともかく、降り立った。
背中から飛び降りる。
それぞれお礼を言った。アマルティアは龍の顔の前に立ち、小声で何か話している。
「何話してんだ?ティア」
「う、うるさい!いいだろうそんなこと!」
「本当ニ、仲間ヲ守レル力ヲ授ケテクレタノカ、ト。再確認シテキタノダ」
「言うなぁっ!!」
一気に顔を赤くして、ぽかぽかと龍を殴るアマルティア。
無意識に俺の手を握るだけで、人間の手を手羽先にしてしまうほどの力を持ったアマルティアだが、殴られてもビクともしないあたり、やはり龍は見た目通り強そうだ。
「でも、そんな力はいらないって言ってた割には、龍の加護に興味津々だな、ティア」
「男だからな。こういうのはワクワクして仕方がない」
「わかってるなぁ」
見た目は未だに女の子だが、心は着々と成長してる。そうだよな。強い力なんてロマンだよな。
「ソロソロ帰ルガ……他ニ聞キタイ事ハアルカ」
「龍ってどこに帰るのだ?」
「……雲ノ上ニ行ケバ、ワカル」
行けるわけないだろ。龍にも故郷があるのなら、確かに一度は見て見たいものだけどな。
「うむ。そうか。では、また会えると信じている。……あなたの加護、しかと私が受け取った」
「……ソレデイイ」
笑ったように見えた。
龍は、蒼い翼を広げ、陽の光を反射しながら、ゆっくりと雲に紛れていった。
「なんか、全部夢みてぇだな」
俺が呟くと。
「そうだね。アマルティアくんも、随分と強くなったみたいだし、修行のレベルを1段階上げようかな」
「いやアグノス、もっと上げないと、っていうか、アマルティアくんはもう龍皇でしょ?もう追い抜かれたんじゃない?」
「にぃの言う通り」
「その理論で言いますと、ラン様も一気に差をつけられてしまいましたね」
にこやかに会話が弾む。
平和だな、と。鳥肌が立つほどの感動が、ドッと今になって押し寄せてきた。
確かに、まだまだやることはあるし、わからないこともある。紀伊ちゃんのことや、傘音のこと。
その流れでいうと、もしかしたら……。
何もかもが一件落着というわけではないが。
リム湖で、俺とアマルティアが人間といざこざを起こしたことからも始まり、人間種族との戦争、龍皇との戦い。
そしてアマルティア救出のための、人間領での戦い。
心臓に悪いことが続きすぎた。一旦、落ち着いた生活に戻るべきだ。
どうにも、こんなスリリングな生活に慣れてしまうと、後々の人生がつまらなくなりそうで。
スパイスはほどほどが1番だからな。
──俺たちは“いつも通り”、笑い合いながら、パトリダを囲む森を抜けて、パトリダにやっとのことで帰ったのだった。
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アマルティア救出から、4日経ったある日の早朝。
相変わらず綺麗な顔立ちをしたアマルティアの寝顔を見て、今日も一日頑張ろうと心に誓う俺は、窓から差し込む朝日に思わず目を細める。
アマルティアの頬にかかる髪をどける。くすぐったそうに眉を寄せる様子に心温まる。
蒼くて綺麗なこの長髪も、俺が時々毛先を整えたりしてるので、伸び過ぎることはないが、これだけ長いと邪魔だろうし。
人間領でヘアゴムを盗んで帰ろうとは思っていたが、思わぬ龍の登場ですっかり忘れていた。
レプトスに頼めば何かアイディアをくれるかもしれないな。後で聞きに行こう。
「ティア、起きろ。朝飯の時間だ。遅れたらレプトスに全部食われちまうぞ」
アマルティアの体を揺する。……体、柔らかいな。ふわふわしてる。
「んむぅ……、ん?あぁ、ランおはよう」
「急げ急げ」
「待ってくれまだ頭がボーッと……」
「出発!」
アマルティアの手を握って歩き出す。優しく握り返された手の感触に頬が緩む。
階段を降りている時にも、妙に静かな自分たち2人に何故か恥ずかしくなって、背中がかゆいような照れ臭さを覚えた。
ちなみに、もう力加減をわきまえたアマルティアは、普通に手を繋ぐことが可能になった。
少し冷えた床を足の裏で感じつつ、食堂に入った。
「おはよう、ラン、アマルティア」
「ん、おはよ、始祖じい」
「おはようございます。始祖様」
始祖じいに挨拶。いつもの席について今日の朝ご飯を見渡す。
「げ。まーた霜降り草のサラダかよ」
「ラン様。文句を言わず食べてください。そんなだからいつまで経ってもアマルティア様に追いつけないのですよ」
「いやこいつ龍皇だし」
「言い訳はよせ、ラン。私はもちろん霜降り草も赤身キノコも食べられるぞ」
毎朝でてくるサラダに、いつも通り嫌な顔をする俺。皿の上の食材を値踏みするように眺めていると。
「あれ、俺のハムが一枚少ない」
「ひゃはは。うめぇ」
「レプトスちょっと表出ろ、お前をハムにしてやるから」
「ぬかすな、マヌケ。ひゃはは」
「いいから早く食べなよランくん。今日も修行という名のお遊びをしてくるんでしょ?」
「「遊びじゃねぇ」」
「息ぴったりだな、レプトスとランは」
愉快そうに笑う始祖じい。
食堂にはいつもの光景が広がっている。
相変わらずコインの双子は2人っきりで、部屋で朝ご飯を食べてるし、ピズマはめちゃくちゃ食うし。
アグノスは食べるの遅いし、レプトスは盗賊だからとか言ってすぐ俺のを食べるし。
アマルティアも好き嫌いなく口に放り込んでいる。いくら父親の影響で成長速度も凄まじいとは言え、まだ6歳の少年がこんなに食べるもんかね。
ワイワイと盛り上がりつつ、食事を楽しんでいると。
一足早く食べ終わったレプトスが、新聞を広げた。
この世界には、全種族共通の世界新聞が存在する。
出版社は不明。しかし、記事の信憑性は高く、何よりも特徴は、どこでそんな情報手に入れたんだ、というやたら詳しいビックニュースが多いことだ。
世界の事情について、始祖じいは、各種族の始祖が集まる始祖会合という場で知ることができるので、世界新聞はとっていなかった。
しかしこういうのが大好きなレプトスは個人で買ってるらしい。どこで売ってるのかさえよくわからないけど。
これもいつもの光景なので、気に留めず、腹を満たしていると。
「……ひゃはは。ラン、お前、世界新聞に載ってるぞ」
「ぶへぇっ!?」
「ちゃんと座って食べて下さい、ラン様」
「ちょ、レプトス詳しく!」
思わず立ち上がるほどの衝撃。というのも、やはり世界新聞は謎は多くとも、世界中で見られているものだ。そこに載るってことは有名人の仲間入りも夢じゃないってこと。
ニュースの内容にもよるけど。
レプトスはニヤニヤしつつ、記事を読み上げる。
「見出しは、『全世界に衝撃!龍皇フロガ死去!』」
「まぁそりゃニュースになるわな」
「読むぞ。……『200年余、世界の頂点に立ち続けた龍皇フロガが、5日前、人間領とゴブリン領の間に位置する、赤土の荒野にて、ゴブリン5体と交戦。その交戦の被害としては、進軍していた人間軍の兵士230人、それに対してゴブリン軍の兵士150体が、龍皇フロガの炎により焼死』」
「うわ、そんなに死んだのか。……普通に大事件だな」
「……『多大な被害を及ぼしたその戦いの末、龍形態と化した龍皇フロガを、1体の少年ゴブリンが、龍皇フロガの口の中に入り、方法は不明だが、龍皇フロガの頭を破裂させ、殺害した』」
「まぁ殺人犯だからな、俺」
俺は実際何もしてないけどな。
「……『よって、炎の龍皇、フロガの時代の終了を、全世界共通の認識とする。』……だってよ。ひゃはは、結構大きめに俺らの写真が載ってるぜ」
「どれどれ、見せて……って、ええっ!?名前まで載ってんじゃん!!」
「ひゃはは、写真のピズマ、目ぇ閉じてるじゃねぇか」
「そ、そんなぁ」
ピズマ、レプトス、ラン、デクシア、アリステラ。
各自、写真の下に名前まで丁寧に載っている。こんなのどこで調べてるんだ。さすがは謎多き世界新聞。
「これも読むぞ。……『次世代、雨の龍皇誕生』」
「お、ティアの記事じゃん」
「どうせ“罪の子”とか人間のくせに、とか書かれているんだろう」
「でもでも有名人だぜ?」
「……まぁ悪くないな」
もう“罪の子”と言われ慣れたアマルティアは呆れたようにため息を吐いたが、自分の記事が世界新聞に載ったことに悪い気はしないらしい。
「……『前龍皇フロガ死去とほぼ同時刻、人間軍の指令でパトリダ北部の海岸に進軍していた、“桜剣”こと、桜坂紀伊率いる、暁隊が、パトリダ北海岸にてゴブリン軍の一部と交戦』」
「お、アグノスの写真もあるんじゃないか?」
「目、つぶってなきゃいいけど……」
「やかましい」
襟を正すアグノス。
「……『各種族被害状況としては、人間軍の神託者部隊総勢30人がほぼ全滅、暁隊隊員のうち55人が死亡。対してゴブリン軍兵士40体が、桜坂紀伊1人の手で殺害された』」
「すげぇなおい」
「ランも驚くのはわかるけど、紀伊は世界新聞の常連だからね。だいたい載ってるんだ」
何故か自分のことのように胸を張るアグノス。
「……『その後、世界各地で目撃情報が相次いだ、蒼い光の柱が、“罪の子”こと、アマルティア少年を中心に立ち昇り、龍王玉が誕生したと同時、生き残りの人間軍の神託者の催眠神法で眠らせたアマルティア少年を暁隊が人間領に持ち帰った』」
「アグノスのことは載ってないな」
「べ、別にいいけどね!」
「……『人間軍、警軍本局にアマルティア少年が運ばれてから約3時間後、人間領に侵入したゴブリン5体が、警軍本局に攻め入った。総勢500人以上の人間兵士がその対応に当たったものの、1時間後、突如、地下から現れた蒼き龍と共に、新たに現れた1体のゴブリンを合わせて6体のゴブリンが人間領から脱出。人間軍側に死亡報告はないものの、“柊拳”こと宵隊隊長、柊傘音、暁隊副隊長、島崎慶次らが意識不明の重体』」
「ありゃりゃ。ゴブリン大注目されちゃうな」
「……『龍の誕生を根拠に、新たに、雨の龍皇アマルティアを、次世代の龍皇とする。』……って記事だな」
「ふふ。私の名が世に知れてしまったか」
「ドヤ顔やめろ」
和気藹々とした雰囲気の中、ふと新聞の覗き込んだピズマが、立ち上がる。
「どうした?ピズマ」
「…………」
何も言わず、ピズマは食堂を出た。怒りのような、困惑のような。負の感情が混ざり合った表情をしているように見えた。
水を打ったように静まり返る食堂。「なるほど」と呟いたレプトスが、新聞のとある記事の見出しを読み上げた。
「……『悪夢再び。キリグマ、3度目の“スタヴロス”脱獄』……スタヴロスってのは世界でも指折りの犯罪者を閉じ込める監獄なわけだが。キリグマってのは──」
ひゃはは、とは笑わず。レプトスは険しい表情で言った。
「──ピズマの父親だ」
本日も、ご拝読いただき本当にありがとうございます!!
やはり、なろうでは異世界転生ネタが非常に多いので(厳密にはこの作品は異世界転生ではありませんが)、僕の作品も読んでくれる方がやはり少ないのです。とはいえ、趣味で始めた小説を1人でも読んで下さる方がいるだけで大満足なので、贅沢を言うなら、今後も読み続けていただけたらな、と思います。
メリークリスマス!