第離話 私は。
はい。今話は本編の裏話の第1話といったところです。今後もちょくちょく投稿しますので。
途中、頭のおかしな文が長く続く部分がありますが、読まなくても大丈夫です。
この後もう1話投稿するので、そちらも読みに来てくださると、嬉しいです。
──私は。
私は、同性愛者だ。
私は、控えめに言っても可愛い。
私は、結構何でも得意だ。
私は、人生を壊された。
私は、新しい道を見つけた。
私は、違う私を演じている。
私は、それでも私だった。
私は、私は、私は──
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私はキーボードを叩く。マウスを動かす。クリックする。
以前は、やることが無いからといって家に籠りパソコンばかりいじっている社会のクズ共を心底馬鹿にしていた。今では私も紛れもない社会のクズだ。クズ野郎にクズにされたクズだ。
人のせいにするのも大概にしないとそういうクセがつきそうだ。自らの失敗を。自らの不幸を。世界の、世間の、自分の、不条理を。人のせいにしてしまいそうだ。なんだかんだで自分が悪かったりするんだろう。私がクズに堕ちたのも。私が悪いのだろう。
悪いとか、悪くないとか。良いとか良くないとか。そういうことではないとは思う。が、思わなきゃやってられない。イライラする。
マウスを意味もなくカチカチしながら考える。さてどうしたものか。朝から部屋でパソコンいじっている場合じゃないだろう。私はそれどころではないはずだ。
この言葉も何度目だろう。心の中で何度も言ってきた。言い聞かせてきた。自分に。
“何してるんだ”。
わかってる。わかってるよ、そんなこと。うるさいなぁ。やめてよ、もう。目が回って耳が千切れて舌が爛れて脳が溶けるほど繰り返したでしょ?
いい加減にしてくれ。私はただ。ただ生きるだけで精一杯にはなりたくないんだ。
怖いよ、怖い。何にも見えないんだ。何にも聞こえないんだ。真っ暗?違うよ、むしろ真っ白だ。眩しすぎて何も見えないよ。怖いよ。やめてよ。
あれもこれもそれも全部全部あいつが悪いんだ。私は何も悪くない。あいつが全部悪いんだ。全部悪いんだよ……私が。私が全部悪いんだ。みんな私のせいでぐちゃぐちゃに壊れて。ドロドロに溶けて。サラサラに散って。どうしてそんな目に合わないといけないの?私が悪いから?あいつが悪いから?私かあいつの何かが悪いから?言ってくれなきゃわかんないよ。言われなくともわかってるよ。もう、聴きたくないよ。いやだよ、いやだ。暗くて怖くて眩しくて白くて怖くていやだよ助けて。誰かに助けられないと生きてけないの。誰かに壊されないと私じゃないの。壊して。壊させて。なんでもいいから。誰でもいいから。もう。散々だ。あんまりだ。酷いよ、酷い。甘ったるい罪を押し付けて。生臭い優しさが欲しいなら。答えは1つだろ。死ねよ。死ね。死ね。死ね。「いやだ」死ね「やめて」死ねよ「助けて」死ねってば「もう」死ね死ね死ね「私を見ないで」死ねよ、死ね「怖い」死ねよ死ね死ね「あぁ」死んじまえ「死ねばいいんでしょ」そうさ、死ねばわかる死ねば変わる「死ぬ」死ね「……死にたくない」………もう、殺して。
……あれ?あぶない、あぶない。頭おかしくなりかけた。これだから毎日引きこもってるとロクなことがないんだ。
あっぶなかったぁ、本当に。頭おかしいやつだと思われたら心外どころの騒ぎじゃあない。
私は至って正常だ。
さて、落ち着こう。
今一度言おうかな。
私は、人生を壊された。ので、引きこもっている。今は大学生………に、なるはずだった。
ちなみに高校にも通っていない。もうすぐ20歳。義務教育しか受けてないけどどうにかなるんだ、多分。……誰かどうにかしてください。
えっと、ちゃんと説明しようかな。私は中学で華々しい“普通の生活”ができなくなって。引きこもって。受験しなくて。高校行かずに。さらに引きこもって。そんな感じ。私の人生。
あーあ。親に迷惑かけてるなぁ。私可愛いしなんでもできるのに。なんでここでキーボード叩いたりなんかしてるんだ。
全てあいつが悪いのに。死ねばいいんだ。いっそ。私も。
そういえば。やることもない私に。興味を惹くモノがあった──興味を惹く紙があった。
ある日。母は郵便受けから取り出した封筒を読んで、机の上に置きっぱなしでどこかへ出かけたの。
その日からずっと母は帰ってこない。どうしたんだろう。どうしたいんだろう。
どうしてなんだろう?
母が最後に家に置いていったその封筒が気になって。開いてみると1枚の紙が入ってた。
『NCP被験者候補のお知らせ』と書かれた紙。封筒はビリビリに破った。イライラしてたし。黄色い封筒と同じく、中の紙も黄色かった。
なんかよくわからない。わかりたくもない。くだらないよ。私には関係ないし。
と言いつつ。全文読んでいると。
紙の左下に。『社員募集中 年齢制限無し 』と書かれていて、どうやら、その謎の会社のホームページにアクセスすると、入社試験を受けられるとのこと。
私はゲームはやらない。というか、一般的な娯楽には疎い。興味がないから。でも。
少し、ゲーム感覚で受けてみたら、楽しそうだな。と、思った。
大人たちが挑戦する、みたいなイメージがあるからだ、入社試験には。当たり前か。大人じゃなきゃ入社なんてできない。
年齢的にも私はもう大人だが。得てして20歳とは自覚を持つにはまだ早すぎる段階だろう。まだまだ私は子供のままだ。
というか普通に暇だったので。入社試験とやらを遊び半分で受けることにしてみた。
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──驚いたことに。ホームページにアクセスすると、いきなり問題を出された。なんだこれは。
……簡単じゃないか。
私は、何をやっても上手くいく。勉強も例外ではない。……まぁ、人生は上手くいってないが。
勉強、という言葉を使ったが、この問題は勉強してどうにかなるものじゃない。
例えば、2秒ごとに画面に数字が映し出される。2分後に、2分間で映し出されたのを順番通りに、合計60桁の数列を入力した際の正答率を試す問題。つまりは記憶力。
義務教育しか受けてないけどこれはできた。記憶力には自信がある。このような問題ばかりかと思ったら。
次は計算問題。なんだよ。普通に学力も問われるのか。
連続で3問の計算問題が出題された。赤い字で、『10秒以内に回答を入力せよ』と書かれていて、3、2、1。というカウントダウンの後、5桁×6桁の数字の計算。といった、単純計算問題だった。拍子抜けだ。
高校に通っていなくても、暗算くらいできる。タイピングミスくらいしか危惧する点が見当たらない。
私の脳の容量とかを計られたようで、気に食わないけれど。こんなのが入社試験ってどうかしてるぞ。入試じゃあないんだから。
次に。
キラキラに演出された文字で、『最終問題』と画面に映し出される。
──早いな。こんなので入れるものなのだろうか。会社って。そんなこと考えていると。
『あなたは世界を変えることができますか』
白い画面の中央に、黒い文字でそう書かれていた。
問題、ではないじゃないか。これは質問と呼ばれるものだ。
Yes/No
と、下の方にある。こういうのって正解があるんだろうか。それこそ人それぞれじゃないか。
私は迷わず『No』をクリックした。途端。
『おめでとうございます。合格です』
表示されていた文字が変わった。というか、合格した。
おかしな会社もあるものだなぁなんて、思っていると。
『私たちと世界を変えてみませんか?』
今度はそんな言葉が表示された。下にはまた。Yes/No と選択肢が用意されている。
2、3秒ごとに、『変えて』の文字が、『替えて』、『代えて』、『換えて』と、入れ替わる。
何を意味しているのだろう。わからない。というか、そもそもこの会社は何?何の会社なの?
というか、本当にキチンとした会社なのか?誰かのイタズラじゃないの?
暇潰しとはいえこんなことしてる場合じゃないよな、私。こんなふざけた会社に付き合ってやる道理もない。
くだらない。本当に、ふざけてる。だから。迷わず。
──私はYesをクリックした。
……はい。今話は彼女のお話、というわけです。
どうやら何かの会社に入社したようですね。
読みに来てくださって、ありがとうございました!