第10話 虹という男
こんにちわ。ネットに小説を投稿してますが、小説は紙媒体派です。紙サイコー。
「──私は、貴方が……貴方のことが、好きです」
白い月光が差し込んで、薄暗い宿屋の一室は、塗りたくられたように一部だけ白く染まった。泣きそうなくらい、綺麗なコントラストに、瞳も、心も、グラリと。音を立てて揺れた気がする。
彼女の言葉は、まるで何もかもが、これまでの全てが、今日この刻の為にあったのではないかと、そう思えてしまうほどに、ただまっすぐ。まっすぐに胸を叩いた。
体温は上がらない。こういう時、僕は憎いほど冷静だ。
やけに広がった気がする視野の中心。僕の手を震える両手で包み込み、今にも零れ落ちそうな涙を眦に溜めて、小ぶりな口をつぐむ少女。
月明かりを反射する大きな鏡も、影に隠れた麻袋やペンも、僕たち2人が座るベッドのシーツの皺も。それら全部、ぼやけて見えて、まるで目の前の彼女だけにピントを合わせたような、不思議な、しかし必然的な光景を、戸惑った脳に焼き付ける。
彼女の瞳が揺れる。この数秒さえ、彼女には、何分にも、何時間にも感じられるのだろう。故に期待と不安の入り混じるその表情からその心情を読み取るのは容易だった。
白い月明かりを施しているにもかかわらず、彼女の頬は朱く、窓の隙間から通る夜風にうたれる桃色の髪も、お風呂上がりの汗が滲む首筋も、この時は。
──ひどく、美しく見えた。
「綺麗だ」、と。意図せず口にしてしまいそうになる。全身の血管を巡る未知の感情。寒気とも言える鳥肌が答えだ。下腹部が熱くなった気がした。
俗っぽくいうならば、今すぐに抱きしめて、強く、強く抱きしめてしまいたいと、そう思った。
──それが、狂おしいほどに、理性を呼び起こす。
「ごめん、なさい」
思った通り、口は動いた。うまく声が出て、ホッとした。その安堵に混ざって飲み込んだ“大きな棘”が、喉の奥に刺さって、何かを訴えかけるように痛む。
引っかかったそれを誤魔化すみたいに、言葉で喉を震わせた。
「僕……そういうのは……違くて」
気づけば僕の手を包んでいたはずの彼女の両手は落ち、ベッドのシーツにその身を預けていたらしく、胸の真ん中と同じく、僕の手は冷えていく。心も、何もかも。
──違う。そんなことが言いたいんじゃない。こんなことを伝えたいんじゃない。そういうのって何だ。一体そんな“線引き”に何の意味がある。
わかってる。わかってるんだ、何もかも。頬を伝う嫌に冷たい汗も、前髪を揺らす生温い夜風も、何もかもわからなくなっていても、これだけは、この気持ちだけはわかってるんだ。
でも、それでも、理性が真情に言うんだ。焦げてしまいそうなほど働く脳がその真意をチラつかせて、それでも「ダメだ」と、「好きになってはならない」と、耳の奥で囁くから。
「──そう、ですよね。ごめんなさい、気持ち悪いこと……言って」
「ち、違──」
「外の空気、吸ってきます」
伸ばした手は空を切り、ギシッというベッドの軋む音と共に、彼女は立ち上がった。なぜか痺れたように体が動かなくて、胸のあたりを中心に、ひどく体が重く感じて、逃げるように部屋を去る彼女を止めることは叶わなかった。
パタン。と、優しく閉められた扉の音を皮切りに、体が熱を取り戻し、その軽さを思い出し、弾かれるように僕は立つ。無論、もう、遅い。
走れば追いつく、とか。そういうことではない。彼女の心を傷つけてしまったことが、手遅れなのだ。
同じくらい、僕も傷ついた……なんて、死んでも言えやしない。
後悔するように、懺悔するように、ゆっくり一歩一歩、窓の方へ歩を進めた。吹きつける夜風に、木製の窓はギシギシと軋む。
この部屋は、木造建築の宿屋の二階、角部屋。西向きの窓からは煉瓦造りの住宅や、タイル張りの道が見下ろせる。窓際に立った僕の眼下、ガラス越しに見えた道を、小走りの彼女が通る。
目元を拭いながら角を曲がり、見えなくなった彼女の姿が脳裏に焼き付いて間も無く、今の“冷たい僕”にはひどく温く感じる不快な夜風を、窓を閉めることによって遮った。
『外の空気、吸ってきます』
血反吐を吐くように呟かれたあの言葉を最後に。
──彼女は、部屋には戻ってこなかった。
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鉄臭い風。吸血人種たちでごった返す大通りを歩く。露店から漂う良い香りが胃を刺激する。それを振り払うように早足になった僕は、商店街、市街地をそれぞれ抜けて、都市部から離れた場所まで歩いてきた。宿屋から約1時間は歩いただろうか。
場所は植林地。山まで距離のあるここヴァンピールでは、自然を感じようにも街からかなりの遠出が必要となる。故に観光地や公共施設としての用途で、この場所に木が植えられた。
ただ、背の高い木々も見慣れた光景となり、今更この植林地を訪れる人は少ない。ごく稀にカップルが、夜、腕を組んでこの林に入るのを、ここらに住んでいる住人が見かける程度だ。そのカップルが何をしていたのか、には触れないが。
そんなわけで、大して美しい景色でも、過ごしやすいわけでもない大失敗な植林地に足を踏み入れた僕だが、向かう先には僕以外の1人が待っていた。
林の奥、木造の小屋の前。切り株に腰をかけ、本を読む男の姿。僕は声をかける。
「虹さん、おはようございます」
呼ばれた彼は顔を上げ、眼球だけ転がしてこちらを見やった。湿ったの葉が積もる土の上、足元を飛び跳ねるバッタを避けつつ、隣に立つ。
見下ろす顔はいつも通り強面。口元を囲う髭は整えられているが、伸びた髪は無造作に切られ、むしろ芸術的な何かを感じさせる。
怖いほど真っ黒い髪、髭、瞳。見る人が見ればホームレスだが、場合によってはダンディなおじさん、だろうか。まぁ僕には前者にしか見えないけれど。
それも顔だけの判断ではない。着ている服もいつも同じ。出会った日からずっと同じ服だ。虹さん曰く、毎日手洗いをしているそうだが、もう新しい服を買ってもいいと思う。
そんなヨレヨレのTシャツにジーンズ。ガタイが良いから何とか似合っているものの、清潔感には欠ける。
そんな見た目ではあるが、しかし。
「5分遅いぞ、クソ弟子」
「……またそれですか? ちゃんと5分前に来ましたよ」
──これでも、僕の師匠である。
「ちゃんと5分前に来いって言ってるんだ」
「朝10時に来いって言われたから、今、9時55分です。5分前ですよ」
「5分前にくるのが当たり前なんだからむしろ55分がスタンダードだ。ならばこそ、そこから5分前、つまりお前は50分にくるべきだった」
「ならはじめから10分前って言ってくださいよ……」
腕を組んで偉そうに言う彼に思わずため息。初めの頃は尊敬していたけれど、ここまで捻くれた人だとわかると、どうも素直に凄い人だと思えない。
──虹さんと初めて会ったのは2ヶ月以上前……というか、このヴァンピールに初めて来た日。
一文無しだった僕と紗江は公園を見つけて、その後僕は腕相撲大会に乱入して荒稼ぎ。ホクホクしながら帰ろうかと思ったその時に現れ、僕を弄んだ後に秒殺して去っていったあの男が、この虹さんなのだった。
宿屋の一室で女2人暮らし。そんな生活を送っていると、様々な危険にさらされることが多々あった。というのも、ここヴァンピールには観光客含め、吸血人種以外の種族も多くが訪れる。人の流れが激しく、入れ替わり立ち替わり色んな人が街を行く。
人が増えれば、それだけ“やばい人”の割合も増える。急に後ろから手を握られて、振り返ったら満面の笑みのおじさんだったり、紗江が落としたハンカチをポケットに突っ込んで走り去る若者だったり。
紗江は、僕のことが心配だと言って色んなことを試していたが、僕からすれば紗江の方が危なっかしい。すぐに人を信じるし、お人好しだし、何より凄まじく可愛い。彼女が働くお店の店長には、「その胸で接客はまずい」とまで言われていたほど、スタイルも抜群。背中がどっちかわからないような、まな板ボディーの僕や紀伊ちゃんとは格が違う。
他にも、宿泊代が安いからと、いつも同じ宿屋に泊まっているのを知られ、夜中に部屋に人が入って来たこともあった。
そんなこんなで、僕は、僕自身と彼女を守るべく、アルバイトの合間に、格闘技なり、自分を鍛える方法を探していて、そんな時、虹さんを見かけ、「腕相撲強い人だ!」と思って話しかけた。
常軌を逸した強さに憧れもあり、長い説得の末、何とか弟子入り。しかしながらどうして僕を弟子として、さらにはほぼ毎日訓練に付き合ってくれるのかは、未だに謎。
まぁありがたいことに変わりはないので理由とかは聞かない。それより鍛錬、鍛錬。
「……で、何をそんな暗い顔してるんだ、お前」
「…………わかります?」
「さすがにな」
こんなへっぽこおじさんにバレてしまうほど今の僕は気持ちが顔に出てしまっているのか。情けない。それだけ動揺してるっていうのは間違いないけれど。
ここにくる行き道、紗江の働くお店を覗いてみたが、彼女の姿はなかった。そのこともあって、言葉にできない何かが胸を蝕んでいる気がして、とても不愉快だ。
「まぁ、精神面に関しては、教えてないからな」
「虹さんに心構えを説かれるほど落ちぶれてはいません」
「生意気な弟子だな」
「……今日もお手合わせお願いします。ちょっと心に迷いがあるので、吹っ切りたいです」
多分、こういうのは吹っ切ってしまっていいものではないのだろうけど、今だけでも忘れていたい。被害者面して「辛い」なんて言えたものではないけれど、一度冷静になるためにも、体を動かしたいのだ。
虹さんは何も言わず数メートル離れ、構えた。僕も息を吐き、体の力を抜き、身構える。
林の間を縫うように吹き抜ける緑の風。鉄の匂いに混ざる土臭さが鼻に残った。鳥の鳴き声も、離れた街の喧騒も、枝葉とともに風に押し流されて、澄み切った時間の中、いつも通り僕から足を踏み出した。
「……ふッ──!」
低い姿勢での急接近。速さには自信のある僕の体が彼の正面の空間に捩じ込まれる。勢いに任せ、風を乗せた右脚を振るう。彼の膝を狙ったローキック。あくまで僕の軸はブレない。2ヶ月間の訓練によって身につけた体幹の強さを武器に、切れ味抜群の蹴りを初手でお見舞いする。
眉ひとつ動かさない彼は、ぐにゃりと曲がったように見えるほど、その柔らかい関節を最大限に活かし、側転の容量で僕の脚を躱す。空を切った僕の脚が地面に刺さり、掘り起こされた土と落ち葉が舞う。
地面に右脚を叩きつけた反動を押し殺し跳躍。体を半回転、左脚を彼に叩き込む。先のローキックを避けるために無理な体勢になった隙を突く。へし折るように脇腹に食い込んだ左脚に手応えを──この場合だと、脚応えを感じる。
「相変わらず、速さだけは一級品だな」
骨が軋む音を意にも返さず、ニヤリと笑う彼は僕の脚を掴む。強引に着地した彼は、僕の脚を引いて投げ飛ばす。急な力方向の変換に僕の体も悲鳴を上げる。ぐるりと世界が回る。視界の端に彼を捉えた。
着地より前に追撃をもらうだろう。なりふり構っていられない。
「喰らえッ!」
空中で回転する体。腕を伸ばして地面を引っ掻く。細かい土が飛散、接近する彼の眼前に土のカーテンが広がる。
2ヶ月間、様々な体術を教わっておいて、ピンチになったら土で目くらましとは、我ながら卑怯だと思うが、弟子が弟子なら師匠も師匠である。
「──好い対処だ。だが甘い」
彼は悪い笑みを浮かべ、足元の石を蹴る。土のカーテンを貫き、舞う枝葉を撃ち抜く豪速球……豪速石? が飛来。着地をしようとした軸足に見事、当たる。威力もさることながら、歪な形をした石が骨に衝突した振動がジグザグに全身に響く。尋常じゃなく痛い。
泣きそうになりつつ、無理やり立ち上がる。体勢を直す頃には、肉薄する死神の鎌──否、彼の左脚。
上段回し蹴りが側頭部を打ち払う。揺れる脳味噌。歪む視界。血がのぼる頭に痛みが走る。この威力の蹴りを頭に受けて、そのままだと首が変な方向に曲がりかねないので、すぐさま体を首に合わせて回転させる。
地面に手をついて転がる。受け身のつもりが、上手くいかない。迫る靴音に、脳より先に体が反応した。即席技の足払い。何とか成功、彼はバランスを崩す。
土を蹴る。覆いかぶさるように飛び出し、拳を握る。
「……ぉらァッ!」
振り上げた拳に神気を溜めて、青白い光の粒と共に、その拳を振り下ろした。
倒れこむような体勢から打ち出された、彼の強引なアッパーカットと正面衝突。光の粒が飛び散る。見れば、彼の拳にも光が収束していた。“強化”した矛どうしのぶつかり合い。千切れるほど伸びきる筋肉が痛みを伝える。
単純な力勝負。上から振り下ろした僕の拳と、無理な体勢から振り上げた彼の拳ならば、無論僕が勝つ。その拳もろとも湿った土に埋め込んだ。
──勝てる……!
脳裏をよぎる慢心。しかしすぐに、刹那の思考が自惚れを掻き消す。体は熱くとも、頭は常に冷やしておかねばならない。何せ、この男は、予想外のことばかりしてくるのだから。
僕の足払いからの一連の攻撃を防ぎきれず、背中が地面につく彼の腹部めがけ、もう一方の拳を振り下ろす。確実に仕留める。今なら彼は僕を蹴り上げられる体勢ではないし、この状態で打ち込まれた彼の拳なら優に避けられる。
計算でも思惑でも何でもない。心臓の鼓動と直感に任せた投げやりな戦法が、ここ1番で功を奏した。再び光を帯びる僕の拳。照らされた彼の顔が──笑った。
「──ほれっ」
「きゃぁあっ!」
僕の一撃が彼の腹に叩き落される直前、彼は僕のTシャツを思い切り捲り上げた。
下着を見られそうになり、僕は必死で服を抑える。攻撃をやめ、距離を取る僕。彼は身体中に付いた土を叩き落としながら立ち上がる。
「……危なかった」
「最低です!! この変態!!」
手段を選ばないにも程がある。もう少しでお気に入りの下着を見られるところだった──
「可愛いブラジャーだな。しかしお前にはまだ必要ないと思うが……」
「見られたんかい!」
最悪だ。紗江にも内緒で買ってあった少し子供っぽい柄のやつだったのに。幼児体型……とまでは言わずとも、グラマラスなんて言葉とは程遠い体型の僕にとっては、割と気に入っていたもの。
それをこんなクソ変態腐れド畜生不潔ファッキンホームレス野郎に見られたのが堪らなく恨めしい。
「勝てばいいんだ。これはいつも言ってることだろう」
「くっそ強めに頭打って死なねぇかなこの男」
「口悪いな……頭を強く蹴りすぎたか、こっち来い、治療してやる」
「誰が近づくかこんな変態に! 僕はそこまで馬鹿じゃない!」
「敬語すらなくなったな、ついに」
真面目な戦闘中に女性の上着を剥ぐ野郎を敬えという方が無茶である。
「そういや、『守護者』の加護、使いこなせるようになってきたな、随分と」
はじめに座っていた切り株の傍に置いて合った水筒に口をつけ、彼は言った。僕は、僕の両手を見つめながら、そうですねぇ、と頷く。
──『守護者』。読んで字の如く、守護る者。『剣士』『射手』などと並ぶ戦士系加護の1つ。神託系加護の『天使』『神託者』とは違い、体内の“神気”を体外に放出し、それで何かを為す……ということはできない。
戦士系加護では、剣士ならば剣に、射手ならば弓に、その使用者の持つ神気を宿し──いわば強化し、戦うのが主流だが、守護者は、自分自身の身体に神気を集中させ、敵の攻撃に耐え、仲間を守るのが役目。盾役だ。
戦えないこともないが、身体に神気を集中させ、全身を鉄みたく強化しているときは、自由に体を動かせない。故に必然的に、どっしり構えて仲間を守る──という形になるのだが。
僕は不治村で怨蝶と対峙した際、(無我夢中ではあったが)体内の神気を体のどこかに集中させるということが、いきなりできてしまった。後に虹さんに話したら、「センスだな」と言われたが、ともかく自らの身体を鉄壁の盾とすることには成功した。
とは言え、身体が強化されているとは知らない僕は、怨蝶の攻撃を全て避けていた。怖かったし。何か体が重いなぁとは思っていたが、まさかあの時、既に“加護を発動させながら動いていた”のだとは、我ながらすごい。センスの塊である。
結局、正面から飛来してきた怨蝶に向かって拳を突き出したら倒せてしまったので、一件落着となったが、振り返れば確かに無謀な賭けだったのかもしれない。
“僕にも何かできるかもしれない”と、神法を使う紗江を見て思ったのだ。それだけであんな怪物に喧嘩を売るほど熱くなりやすい性格ではないけれど。
そんなわけで元々センスはあったのだが、虹さんの特訓を繰り返すうちに、みるみる上達してきて、今では筋肉に力を入れる──力む感覚で、神気を集中させることができるようになった。
同じ守護者の加護を授かった師匠の丁寧な説明とマンツーマンの特訓の賜物だ。
そういう意味では溢れるほど感謝をしているが、何かにつけセクハラの多い男に素直にお礼を言う気にはなれないのが現状。訴えれば勝てる気がする。
「……そういや、随分前から考えてたんだが」
切り株に腰かけた彼が何気なく言う。黙って彼に視線を移し、言葉の続きを無言で促した。
「俺は2ヶ月以上、お金も貰うことなく、お前を弟子として色々と教えてやったよな?」
「……まぁ、そうですね。確かに」
「そろそろ、貯めに貯めた恩を、返してもらおうと思ってな」
「恩返しをされる側が自分から言っちゃダメでしょう……」
「そこで考えたんだが──」
呆れて、ため息ながらに苦笑いする僕に、立ち上がった彼が近づいてくる。またセクハラかと一瞬身構えたが、いつになく真剣な表情に気圧され、一歩後ずさってしまう。
汗でベタついた首元を手の甲で拭いつつ、久しく怖い顔の彼に若干怯える。これだから大人の男性は少し苦手なのだ。笑っていないと、怖く見える。
正面に立つ彼を見上げた。背の高い彼の視線が刺さるように落ちてきて、思わず目をそらす。ゆっくりと上がった彼の腕に、ビクッと肩を跳ねさせ驚く僕。やっぱり怒ってる? と不安な気持ちが腹の底に沈む。
目に沁みる冷たい風に、瞼を閉じた。直後、木漏れ日が遮られた気がして、目を開けると同時、彼の大きな手が僕の頭を包んだ。
「──俺と結婚しないか?」
は? ──という言葉は、音にならず、ただ僕はポカーンと口を開けただけ。いたって真面目な顔の彼と目が合う。
汗かいた頭を触られたとか、なんか恥ずかしいとか、これもセクハラか? とか色々と思ったが、何より。
──2日連続で告白されるとは、僕、モテ期かなぁ。
ありがとうございました。
ここでは書かれていませんが、傘音のシンボルの1つ、膝上までのスパッツ……これがヴァンピールには売っていないため、彼女はずっと生足です。
丸眼鏡ボクっ娘NOスパッツです。ちなみに特訓の時は眼鏡も外してます。




