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ライトノベルじゃあるまいし  作者: ASK
第零章【日常】
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第1話ーー最後の日 前編ーー

初執筆、初投稿です。

至らない部分もあると思いますが、それでも楽しんで頂けたなら、幸いです。

基本的に、コメディー方面に行くつもりですが、序盤は少し長めに、真面目になっています。

批評や評価など、コメントも、下さると励みになります。

※書式を修正しました。


 ──両の眼を焼くそれは、白。


 それは、果てしなく、限りない、白だった。


 それが何かも、今何がおきているのかも、俺にはわからないけれど、ひとつ。ひとつだけ、わかる。


 何故だかわからないけれど、無意識のうちに理解する。


 ──もう、今までの日常には、2度と戻れないだろう。




❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎




 ──朝。目覚まし時計の無い部屋で、俺は目を覚ます。


 1つ訂正しよう、“朝”ではない。真昼間である。いつもこの時間だ。


 ふわぁあ…と、可愛らしい(自分で言うな)あくびをして、ベッドから立ち上がる。


 さっき、「いつもこの時間だ」とは言ったけれど、今日は少し違う。


 今日は、起こされたのだ。起きたのではない。


 起こされたとは言っても、毎朝起こしに来てくれる可愛い姉妹や幼馴染がいるわけではない。


 この俺、千葉蘭ちばらんにはそんな素晴らしい子達のような身内も知り合いもいない。



 んでもって、親に起こされたわけでもない。


 親は引きこもりの俺に、ある種の諦めを覚えてる。今更生活リズムに口を出してくることはない。


 ──ぷるるるるるるるる。


 今現在も継続的に鼓膜を叩き続けるこの音に俺は起こされた。


 要するに、誰かからの電話に起こされた。



 どうせ後々バレるなら、早い段階で自ら言うが。


 俺は、いわゆるニートってやつだ。今年で20歳。大学には通っていない。高卒だ。


 あるいは、「いつも昼まで寝ている」という時点で既に察した人もいるだろう。


 基本的に、家からは出ない。引きこもることのデメリットに対して、家を出ることのメリットがあまりに魅力に欠ける。


 が 、働く気も毛頭ない。近いうちに話すが、中学のころ色々あって、沢山の人間と接するのは、とても嫌いだ。


 苦手、ではなく、嫌い、だ。


 まぁ俺のことなんてどうでもいい。早く電話に出なければ。


 ──ぷるるるるるるるる。ぷるるるるるるるる。



「あぁもううっせぇよ、朝からよぉ」



 昼なのだが。


 イライラしながら、ドタドタと、階段を降りて一階のリビングに入る。


 親はいない。いつもならこの時間帯には少なくとも母親はいるのだけれど、今日はいないらしい。


 通りで誰も電話に出ないわけだ。


 ──ぷるるるるるるるる。


 せかすように鳴くそれを、荒々しく握って、俺は。



「……はい、もしもし」



 電話に出た。



「……NCP管理社の者ですが」



 若い女性の声だった。どこか聞き覚えのある、透き通るような高い声。


 えへ、朝(昼だよ)から女の子と話してるぜ、俺。



「……はぁ、えぬしーぴー?」



 よく聞いていなかったが、どこかの会社、だろうか?



「……」



 少し間が空いた後、こほん、とわざとらしく咳払いした女性は。



「……親御さんは、いらっしゃいますか?」



 と、訊いてきた。親御さんて……。俺もう20歳だぞ。社会人だぞ。……社会なんて1ミリも知らんがな。知りたくもないがな。



「いませんけど」



 女の子にはデレデレしないほうが好印象を与えられると考える俺はあえてぶっきらぼうにそう答えた。



「そうでしたか、わかりました。ありがとうございます。では、後ほど、再度連絡いたします」



 がちゃり。それで電話は終わり。女の子とのトークタイムは、なんとも事務的に終わってしまった。ちくしょう。


 しかし、考えてみれば、今日の俺を起こしたのはあの電話で、その相手は女の子だった。


 なるほど。俺は今日、女の子に起こされたのか。


 そんなことは置いておいて、早く部屋に戻ろう。

今の電話は、俺には関係ないだろう。


 「NCP管理社の者ですが」なんて、初対面の人にそれで伝わるとは、さっきの女の子も考えていないだろう。


 親御さんは? って訊かれたってことは、普通に考えて、俺の両親に用があるんだろう。


 家はもちろんのこと、部屋からもほとんど出ない俺が、一般の会社と関わる機会なんてない。


 家で、パソコンだけでもあれば、働ける仕事も少なからずあるだろうけれど。その必要もない。


 運が良いのか、悪いのか、我が千葉家は少し裕福な方の家庭だ。


 これがもし、貧しい大家族とかだったなら、沢山の兄弟、姉妹たちの為に俺が勉強して働くぞ!ってなるんだろうけれど。


 生憎、働かないくせに、ネットで買い物をしやがる恥ずかしい大人1人が暮らせるくらいには千葉家は余裕がある。


 どうにも、父が若い頃から貯金していたらしい。


 そんなわけで俺は親におんぶにだっこ。スネかじりまくり。スネ、ボロボロだろう、親のスネを心配せざるを得ない。


 与えられた幸福を無為にしてまで働こうとは思わない。


 というクズ(むしろ人間らしいと俺は思う)みたいな信念のもと、今日も怠惰に暮らしていこう。


 まぁ、主人公ってのにも憧れてはいるけれど。


 でも、楽な人生に越したことはない。この調子でこんな毎日が続けばいいなぁ。



 ──往往にして、人が幸福を、救済を、欲望を、願うとき。


 神はやすやすとそれを裏切るものだ。




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