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夜。悪魔たちが最も活発化する時間。
そんな時間にレイジを含めた者たちはある場所に集まっていた。
メルヴィルの中央にそびえ立つセントラルーツ。都市最高権力者の邸宅とメルヴィル気鋭軍総括本部の二つを兼ね備えた都市の要。その最高階にいるのは軍で二番偉いガナリアス副将軍と他、四名。
「うわ~、昨日も集まったよなこの面子」
一人目は黒のコートを羽織った隻眼の男。ジル・エリクトン。
「誰かさんが悪魔を仕留めそこねたからじゃないんですか?」
二人目はこの場にいるメンバーで最年少の少年。レイジ。
「酒の飲み過ぎダァ?いい加減に仕事をするナ」
三人目は長身のジルよりも背の高く、体躯のいい大男。オールバックにされた髪形やギザギザに尖った歯が野生味を溢れさせる男。ラウル・ガラナディレ。
「ウッセー!大体てめえは獣臭いんだよ犬コロ!!」
「お前の怠慢を人のせいにするナ。それとお前は香水臭いんだヨォ!万年女たらしがァ!!」
「やんのかゴラァ!!」
「かかってこいヤ!!」
互いの額と額を押し付けあってガンをぶつけ合うジルとラウル。
その光景を見つめ、四人目が小さな溜め息をつきながら二人の頭を木製の杖で叩いた。
「何をしているのですか。ジル・エリクトン。ラウル・ガラナディレ。あなたたちはここに呼ばれた理由がわかっているのですか?」
自分たちの頭を杖で叩いた女性に怒られたのが答えたのか、二人はすごすごと後ろに下がった。
「まったく。あなたちは退魔師と自覚があるのですか?エリクトン。あなた仮にも聖職者でしょう。酒に溺れるとはなんたることですか。ガラナディレ。あなたはどうしていつもエリクトンの軽い挑発に乗るのですか。それでは悪魔との戦闘で足下をすくわれますよ」
「「すいません」」
自分たちよりも小さな女性に叱られて肩をおとしている様子は子供が悪いことをして怒られているみたいで、レイジはその状況が可笑しかった。
「レイジ。あなたは何が可笑しくてわらっているのですか?」
笑ったのが見つかり、冷たい眼差しを向けられたのでレイジは慌てて頭を下げた。
「申し訳ありません聖女様」
「反省しているのならいいです」
聖女様と呼ばれた女性はレイジの謝罪を受け入れると、上座の装飾品で彩られた席に座った。
奏楽都市メルヴィルで最も強い権力を持つのが彼女だ。流れるような銀髪に金色の瞳。しなやかに伸びる手足。華奢な体はボディラインを強調する白いワンピースに包まれている。
まだ、二十代前半の彼女は一般家庭の出身でありながらある特殊な力を持っていることで十代の頃からメルヴィルの統治者として君臨している。
「それでは、今回都市に侵入してきた悪魔についての会議を始めます」
そんな彼女の言葉で、場の空気が引き締まった。