未来へ
レイジが捕食した人間に擬態する悪魔を倒した二週間後。
都市に住む人々はいつも通りの日々を過ごしていた。
「ねぇ、聞いてレイジ。お医者さまがね、もう少ししたら学校に通っていいんだって」
「へぇ、それは良かったね」
レイジはメルヴィルの中でも有名な病院の庭園にいた。座っているベンチの隣には、患者服を着たリナリィが座っていた。
「そうよ。体はかすり傷とかだけで、もうすっかり治ったのに退院させてくれなくてイライラしてたんだよ?下手してたら病院を脱け出してたかも」
「ダメだよリナリィ。そんなことしたら病院の先生に怒られるよ」
「わかってるわよ。でも、どうしてただのガス爆発でここまで入院しなくちゃいけないんだろう。おかしいと思わない?レイジ」
頬を膨らませて、リナリィはわざと怒ったふりをした。
リナリィが病院に運ばれて、目を覚ました時、レイジはホッと安堵した。ただ、彼女はかなり大きな爆弾を背負うことになった。
リナリィには悪魔に襲われた時の記憶がない。これは、本当に覚えていないのではなく、彼女の脳が悪魔に母親を殺され、自分も殺されかけたことで心が折れないように都合よく忘れたに過ぎない。医者にはそう言われた。
だから、自分が運ばれてきたのは、店でガス爆発が起きたからという嘘の情報を教えてある。
母親に関しては、壊れた店の復活の為に他都市に出稼ぎに行ったと言ってある。
「お母さんも一言くらい言ってくれればいいのに」
「まぁ、おばさんらしいって言ったららしいよね」
「確かにそうだけど…………」
悪魔に関することを言わないように注意しながらもいつも通りに話していると、非常警報を知らせるサイレンが鳴った。
「……リナリィ、一人で避難できる?」
「うん。大丈夫だけど、レイジはどうするの」
「……僕はまた、都市警の手伝いに行ってくる」
「……わかった。でも、気をつけてね」
「うん。じゃあ」
そう言い残して、その場を去ろうとしたレイジの口にリナリィが一瞬だけ、自分の唇を重ねた。
「怪我、しないで」
「うん。行ってきます」
幼なじみを心配しながらもレイジは戦場へ向かう。
「よぉ、彼女とのデートは終わったのか?」
「デートとかじゃありません。で、状況は」
茶化すジルを無視して、レイジはラウルに問いかけた。
「そうだナ。城壁監視兵からの知らせだと、悪魔らしき影が多数……見ロ。もう来たみたいだゾ」
都市外縁部から荒れた大地を見渡すと、悪魔が見えた。数は5。
「全部レベル1~2ってところだな。まったく、大所帯で来やがって」
「文句を言うナ。行くゾ」
人間は荒れ果てた大地で生きている。悪魔と呼ばれる異形の生物の脅威に怯えながら。
でも、そんな世界でも人間は生きなければならない。なら、僕は僕のできることをしよう。
大切な人がいつも笑顔でいれるように。
「顕現せよ《滅却の銃》《封殺の銃》」
「顕現せよ《鎧硬の双牙》」
「顕現せよ《退魔の剣》」
全ての悪魔を滅ぼすその日まで。
完。
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