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2話

『30年程前。全国各地で突如として発生したDe粒子により、今まで世界に流通していた、拳銃、爆弾、大量殺戮兵器などが、殆ど使い者にならなくなてしまった。

 De粒子によって、刀剣類を使った近接攻撃、ボウガンや弓などの遠距離攻撃、武器や戦術が第一次世界対戦以前の水準までに一気に下落。その影響として、今まで最先端の軍事力を誇っていた、国等は揃いに揃って大混乱に陥った。また、その大混乱の時期を狙って、貧困地区の人々や、国外からの侵略戦争が多発するようになった。

(中略)

 そして、我が国では、増加する犯罪等に対抗する為、国内外を問わず、一騎当千の活躍が出来る戦士を育成するプロジェクト、“戦国武将プロジェクトを発動”次々と、戦士育成機関を設ける事になる。その武士道プロジェクトにおいて、我が国初の育成機関こそが、三嶋学園と言う訳なのだ。』


 ………。

「なんだ。この読みにくい文章は…」


 校舎の最上階に位置するパソコン室の一角。俺は、先生から出された課題を片付ける為、ディスプレイに表示された文章と睨めっこしていた。


「…つか。授業中に居眠りしただけで、レポート提出って。この学園の教師は鬼か…」

 俺以外に、誰も居ないパソコン室で、独り言の様に呟いた。…確かに。学園の授業が怠くて、今日一日中ずっと寝てしまったのは俺に非があると思う。

 …あると思うが、だからといって。放課後約に3時間みっちり説教した上で、De粒子と三嶋学園の関係についてを、レポートでまとめ、明日まで提出しなければ体罰。とは、少しやり過ぎではないだろうか。


「…って。ここで愚痴っても何も変わらないよな…」


 ふと。時間が気になって、壁に立て掛けてある時計を見る。


「もうこんな時間かよ…」


 気が付くと7時を回っていた。ここで、レポートをまとめ始めたのが5時くらいだから、もう2時間近くは作業している事になる。


「…もう疲れた。やめだやめ」

 これで、完成としても良いや。頑張った頑張った。俺は充分やった。

 半ば、やけくそ気味にレポートをまとめ、三原先生宛に、PCメールで送信。


「腹減った…」


 送信が完了したのを確認し、パソコンの電源を落とす。

 今日の夕飯は、学園で一番人気のから揚げ定食にしよう。…でも、今の時間帯だとから揚げ定食は売り切れてるかな…。

 そんな事を考えつつ、俺はパソコン室を出て、職員室で鍵を返却した後、そのままの足で、学生食堂に向かった。


 入学式が終わってから、約三週間。

 牧村や今宮など、友達と呼べる奴がちょくちょくと出来たおかげで、クラスの中でなんとか孤立せずそれなりに楽しくやれている。のだが…同じ、特別枠入学生である、橘由姫とは、あの時以来、まともな会話が出来ずにいた。だって…。

 あいつに、話しかけようとしただけで、不機嫌オーラを纏って、ギロッと睨みつけてくるんだぜ…。しかも、それが怖いのなんのって…。あれは絶対友達居ないな、断言できる。

 それと比べて、入学式の次の日に紹介された、もう一人の特別枠入学生。良い奴だったな。あれは好感が持てる。


 …などと、考え事をしていると学生食堂に到着。

 料理はオーダー制では無く、自分で取りに行くセルフサービス制だ。


「おばちゃん、から揚げ定食一つ」

「ごめんねぇ…。から揚げ定食なら、ついさっき売り切れたのよ」

「…」

 …本当ですかか、それ。俺は少しの間、言葉に詰まる。折角、楽しみにしてたのに…

「…じゃあ、生姜焼き定食で」

 妥協案として、食堂のおばちゃんから、生姜焼き定食を受け取った。ちなみに、お代は、授業料の中に組み込まれ、既に振り込み済なので、気にする必要は無い。


「…けんかか?」

 トレーを手に持ち、空いてる席を探していると、何やら言い争ってる声が聞こえてくる。…一体、何があったんだ? 飯食べる時に、うるさく騒がれるのは嫌いなんだが

 事の原因を探ろうと、から揚げ定食を両手に持ったまま、言い争いが起きていてる震源地に向かう。


「…だから。私はお前ら等に席を譲る気はない!」

「なんだなんだ。俺らエリートの言う事が聞けないのか。この底辺組が」

「ッ…!!」

「姐御、抑えてください! キレたら奴らの思うツボっす!」


「…い、今宮?」

 それに、隣には牧村も居る。

 言い争ってたのは、この二人と、同じクラスの山井と藤森だった。

 これはまた…。めんどくさい奴に絡まれて…。状況を見るに、牧村と今宮が確保した席を山井と藤森が譲れと迫っているみたいだ。


「…おい山井、藤森。そこら辺にしとけ。うるさくて飯も食えん」


 一触即発の雰囲気。俺は、一応仲裁に入った。


 この、山井と藤森。実力はあるらしいのだが、如何せん性格が根っから腐ってて、自分より劣っている奴を見つけると絡んでくる。

 特に、牧村と今宮との相性は最悪で、クラスの中でも、事あるごとに衝突している。

「…これはこれは、今日一日熟睡してた白崎君。牧村、今宮、白崎。3人揃って、ドベ組トリオが完成かぁ」

「山井…! 白崎まで馬鹿にするとは…許さないぞ…!」

「…あっ、姐御。だから抑えて…!」


 駄目だ。

 どうしよう…、仲裁に入ったつもりが、どうやら逆効果だったみたい。

 俺が加入したせいで、さらに高まってしまった緊張感。いつ爆発してもおかしくない雰囲気になってしまった。さて。どうしたものか…。


「…ねぇ。いい加減にして。騒ぐのなら、時と場所くらい考えて」


 いつ爆発してもおかしく無かった空気。それが、一人の少女の、たった一言により一瞬で凍りついた。…というより、食堂全体の空気が凍りついたんだが…それは…。


「…」

 氷の女王の様な威圧感。

 これは…間違いない。この声は橘のものだ。一応、後ろを向くと、から揚げ定食のトレーを持った橘が、俺らを睨みつけていた。

 その威圧感に、今宮と牧村。山井と藤森でさえ畏縮していた。


「なんか萎えた。…帰るぞ、藤森」

「…おぅ」


 この、気まずい空気に堪えられなくなったのか、藤森と山井は、この場所から離れて行った。

 …程無くして、食堂に喧騒と活気が戻る。

「橘、助かった。もしお前がこの場にいなかったらどうなってた事やら…」

「…別に」


 俺の言葉など興味がない、という様に呟いた橘。


「…それと。三原先生の提案で、今日から交換ノートをする事が決まったわ」

「…えっ?」


 交換ノート? 俺がレポートを書いてた間に、何が決まったんだ?


「詳しい事は、後で佐久良さんから聞いて。私、説明するの嫌だから…」

「…ああ」

 そう言い残して、橘も去っていく。

 相変わらず、態度はドライ。

 …ドライなんだが。いやがおうでも一目を引く、その容姿のおかげで、一部の男子ファンから圧倒的な人気を誇っている…らしい。

 噂では、上級生からも告白された事があるとか。

 まあなんにせよ、今回は本当に助かった。


「…橘さんって。やっぱり怖いな…。確かに、群を抜いて、容姿が良いのは確かなんだけど…。俺なら怖くて、話しかける気すら沸かないぜ…チラッ」

「…何故。そこで俺を見る?」


 元々、今宮と牧村の席しかなかったのだが、隣の心優しい人が譲ってくれたおかげで、俺達は3人で夕食をとる事にした。

「それより城崎。お前レポートは書き終わったのか? 放課後、随分と絞られたそうだが…」


 それね。

「…何とか書き終わったよ。もう提出もしてある」

 今宮の問いに軽く答え、ズズッと味噌汁を啜る。

「そうか…」

「なあ、城崎。お前、確かこの学園とDe粒子の関係についてのレポートを書いてたんだよな?」

「…まあ」

「それなら、当然知ってるよな? 特別枠入学について」

「…ブッ!!」

「きゃっ! …汚いぞ、城崎!!」

「すまん…。今宮」

 牧村が、あまりにも突拍子な事を言うので、味噌汁を少し吹いてしまった。


「まあいい…。特別枠入学というのは、私も、噂を耳にした事がある。…確か、能力者を入学試験無しで、受け入れるだったか?」

「そう、姉貴の言う通りっす。半ば都市伝説みたいなもので、学園側は、公には存在を発表してないけれど…。居るみたいっすよ。俺らの学年に数名、特別枠入学の能力者が…」

「私達の学年に…数名…能力者が…」

 今宮は、牧村の言葉を聞いて、考え込む様な顔をする。

 …実は俺、その数名の中の一人なんだぜ、とはとても言えそうな空気ではなかった。

「…なぁ。もしもその能力者が、自分の友達の中に居たと知った時。二人はどうする? やっぱり、イジメるか?」

 …何故だろう。今宮の顔を見ていたら、何故かこんな事を質問したくなってしまった。

「まさか。能力にもよるけど、俺は大歓迎っすよ。このご時世、能力者へのイジメとかが社会問題になってるけど、知り合いに能力者が居るのは、何だかんだでとても心強い」

 ニヒヒと、牧村は笑いながら答える。


「…そうか。なら、私は牧村とは正反対の意見だ。私は、もし知り合いが能力者と判明したら、そいつとは少し距離を置くだろうな」

「今宮。それは…どうして?」

「…ん。どうした城崎? 能力者の事になると、やけに食いつきが良いな」

「ああ? それは、えっと…」

 訝しむ様な視線で俺を見る今宮。

 …まずい。これじゃあ、俺が能力者ですって、公表してる様なものじゃないか。


「まあ、特に理由は無いさ。強いて言えば…………。少し恐そうだからな、能力者って」

「…」

 俺が、能力者と知った時。二人一体どんな反応をするだろうか。牧村はああ言ってくれたたが、それが本当かどうかの保障はない。

 結局、その後はずっと考え事をしていて、箸があまり進まなかった。








「301号室…。此処で合ってるよな?」


 三嶋学園、女子寮。

 夕食の後。

 俺は入口で寮長の許可を貰い、男子の間から、“聖域”と称される、女子寮の中に足を運んでいた。

 何故、こんな所に居るかというと、もう一人の特別枠入学生に会いに行くため。

 会いに行くと言っても、食堂で橘が言ってた、交換ノートについて聞きに来ただけだがな。


「…」

 女子の部屋の扉の前で、長い時間突っ立ていると、不審者に思われるので、俺を覚悟を決めて、301号室のドアをノックした。


「はいはいって…城、崎、君?」

「ども…」

 ノックした後、ワンテンポ遅れて、部屋の中から一人の少女が顔を出した。


「こんばんは。今日一日、ずっとレポートをまとめてたのだってね。三原先生から聞いたよ」

「ま…まあ、な」

「…君が居ないおかげで、今日は大変だったよ…。

 橘さん、いつもの様にぜんっぜん…喋ってくれないし。話しかけても無視されるし…」

「…」

 腰まで伸びた栗色のロングヘアーを無造作にポニーテールでまとめ、あどけなさが残る顔つきの少女。

 彼女こそ、俺、橘に続く3人目の特別枠入学生。一年D組の佐久良葵(さくらあおい)|だ。

 佐久良は、誰とでも気兼ね無く話せる、橘とは真逆なタイプの子で、ルックスの良さも相まって、クラスを問わず、同学年男子の広い層から、クラスを高い人気を誇っているらしい。詳しい事は良く知らんが。


 というより、ショートパンツに、枚のシャツだけという大胆な服装。…その目のやり場に困る服。何とかならないのか。


「…それで、何の用かな? わざわざ私の部屋に尋ねてくるなんて…」

「ああ…その事なんだけどさ。交換日記について、聞きたいんだわ」


 俺は、食堂で橘に会ったこと。そこで、詳しくは佐久良から聞けと言われたことを話した。


「うん。交換日記を始めよう、てのは本当だよ。三原先生が、特別枠入学生どうし、仲間意識の向上の為にってね」

「…」


 三原先生の奴…また余計な事を…。余計な事をやる癖は、能見学園から変わって無いのね。


「それで…その。交換日記についてだけどね…」


 突然、佐久良は目を宙に泳がせて、あたふたとし始める

「…どうした? 交換日記に何か問題あるのか?」

「いや。全然、何も問題無いよ。

「えっと…。城崎君は、私から交換日記の説明を受けて、それを取りに、わざわざ私の部屋を尋ねて来たんだけどよね?」

「…まあ。そうなるわな」

 それが何か問題でも。


「実は…な。交換日記のローテーション。橘さん、城崎君、私って順番…なんだ」

「え…えっと?」

 佐久良に、そこまで言われ。冷静になって考えてみる。

 …そういや、橘は佐久良に説明を聞け、と言ったが。佐久良に交換日記を受け取りに行け、とは言ってなかった気がする…。


「…そういう事なのか?」

「そういう事…です」


 つまりだ。俺は、はやとちりをして、佐久良にメールで聞けばよかったものを、ご丁寧に、本人に部屋へ会いに行ってしまったのだ。


「…いや、その…なんか、スマン。厚かましく部屋にまで、押しかけちゃって…」

「謝らなくて良いって。私は別に、厚かましいだなんて思って無いよ…。そうだ!」

 ちょっと待っててと言い残し、佐久良は一度に部屋に戻っていく。


「これを、城崎君にあげましょう」

 そう言って、佐久良は、パンダの絵がイラストされた、可愛らしい小袋を俺に手渡す。

「今日。家庭科の授業でさ、クッキー作ったんだけど、調子に乗って作り過ぎちゃって…。さすがに、一人で消化するのはカロリー的に厳しいから、君にあげます。私の部屋まで来た、お土産って事で」


 なんと、中に入ってるのは、クッキーらしい。

 家庭科の授業で、俺も牧村今宮と一緒に作ったが。うん。とても…食べれる様な代物じゃなかった。

 牧村は最初から論外として、今宮。料理が丸っきりできないのには、ビックリした。本人に言ったら、その場で殺されそうだけれども。


「食べ終わったらさ、メールでも良いから、感想聞かせて欲しいな。…じゃね、白崎君」

「おう、また明日」


 最後に、にっこりと笑って、扉を閉めた佐久良。どんな男子にも、今と同じ様に接してるから、…あれ? これ、フラグ立ったんじゃね? って、勘違いする奴が後を絶たないんだろうな。

 佐久良が男子からの人気が高い理由が、少しだけわかった気がする。


 ちなみに、貰ったクッキーは、自分の部屋に帰ったら、速攻で頂きました。

 普通に美味しかった。…うん、やっぱり女は料理が出来る奴に限る。


 麻衣の料理も、中々美味しかったな…。

「…は」

 こんな事を考えてる限り、俺は、まだ彼女に未練タラタラなんだろうな。








「城崎君、城崎君居る!?」

「…」

「…ん」


 翌日。その日の授業が全て終わり。いつもの様に、例の教室でゆっくりしていると、何やら慌ただしい様子で、佐久良がやってきた。


「…大変、大変なの!」

「…何が?」

「君の友達。山井君と藤森君に絡まれて…、“決闘”。始めようとしてるの…!」

「なっ…!?」

 俺の友達=今宮、牧村。多分、これで間違いない。

 “決闘”というのは、三嶋学園独自のシステム。教師立ち会いの元、レプリカの武器を使って、文字通り決闘するのだ。

 相手を気絶させるか、降参させりゃ勝負有り…だったはず。

 もちろん、負けたら内申点が下がるなど、相応のペナルティーはあるが、やはりそれなりに盛り上がるイベントだ。

 ただ…。まずいのは、自分から決闘を吹っかけて負けた場合だ。

 その時は、クラス全員の奴から、冷ややかな目線で見られたり、馬鹿にされたりして、それが理由でイジメや不登校に発展するというケースも有るそうだ。


「とにかく…。早く止めに行かないと! このままじゃ、白崎君の友達が、ひどい事になるよ…。藤森君と山井君、性格は腐ってるけど、とっても強いから…」


 確か、佐久良は母校が山井、藤森と同じだったんだっけか。


「決闘する…場所は何処だ?」

「アリーナだったはず」

「…だけど、此処からじゃ、到底間に合いそうにないわね」


 橘の言う通りだった。今、俺らが居る空き教室は5階建ての校舎の中の4階。

 此処から、アリーナまで移動するのに最低でも5分。その間に、決闘が始まってしまうかも知れない。決闘は、一度始まると部外者は完全に手出しできなくなる。

 …下手したら、その5分で決着すらついてしまう可能性すらある。


 普通だったら、諦める事しかできない。絶望的な状況。…だが。


「まだ手はある」

「…え?」


 驚く佐久良を尻目に空き教室を飛び出し、俺は一目散に男子トイレに駆け込んだ。

「…あった」


 倉庫の中から、掃除する時に使うホースを勝手に拝借し、再び空き教室に戻る。


「なるほど…。確かに、それを使えば、かなりの時間が節約出来る。…でも、少し短いんじゃなくて?」

「…別に。短かくても大丈夫だ。ただ、飛び降りる時に、骨折しない程度の距離を稼げれば、良いんだ」


 珍しく、橘が話しかけてきたが。あいにくとゆっくり構っている暇は無い。俺はベランダに出ると、ホースを転落防止の鉄柵に、しっかりと縛り付ける。

 …だが。これじゃあ短いな。それも、少しっていう距離じゃない。

 …仕方ない。ブレザーも使って少し長くするか。


「無茶ですよ! 幾らそれを使って、距離を縮めた所で。…もし、途中でホースが解けちゃったら、どうするんですか!?」

「…」

 まあ。その場合は死ぬわな、当然。


「城崎君。これも、使って」

 とても意外な事に。橘は今まで着てたブレザーを脱ぎ、それを俺に渡してきた。


「あの…本当にこれ、使って良いのか? 」

「ええ。…でも、私にここまでさせたんだからには、絶対に、決闘に勝ってきなさい。私も、藤森と山井の態度にはうんざりしてたから…」

「橘…」

 その時、彼女は小さく笑った…いや、微笑んだ。…俺はこの時、初めて彼女の笑い顔を見た気がする。


「ああ…もう。橘さんまで…。どうなっても知らない!」

「佐久良…」


 そう言って、佐久良もブレザーを乱暴に脱いで、それを俺に押し付けてくる。


「ホースは、私が解け無い様に見てるから、思い切って、いってきなさい」

 佐久良のブレザーを繋ぎ終わり、俺は完成した一本の綱をベランダから投げ出す。


「ああ…。行ってくる!」

 そして、俺自身もベランダから身を投げ出した。

「よっ…」

 綱を持ち、慎重かつ素早く壁を蹴って、下を目指していく。


 外のグランドに生徒や、先生が居ないねは不幸中の幸いだった。こんな姿見られたら、良くて停学、悪くて退学だろう。入学3週間後に退学とか、冗談も良いところだ。

「…っと」

 そんな事を考えている内に、俺はホースに繋いだブレザーの先端までたどり着く。

「…っしょ」

 ブレザーから手を離し、校舎を蹴って、地面に着地した。

 橘や佐久良がブレザーを貸してくれたおかげで思っていた以上に距離が稼げたおかげで、地面に飛び降りた時も、少し足がしびれる程度の衝撃で済んだ。


「…」

 地面に着地した後は、上に居る橘や佐久良を確認せず、アリーナまで一気に、全速力で駆ける。


「その決闘、ちょっと待ったあああぁ!!」

「貴久!? お前…」

「城崎…。一体、どうして此処に…?」


 まさに間一発。

 決闘があると聞き付け、集まった群衆の中を通り抜けるのに、少し時間がかかったが。いざ、決闘が始まろうとしたその瞬間に、俺は何とか割り込めた。

 とりあえず…今宮、牧村VS山井、藤森の決闘は防げた、みたいだ…。


「どうした、城崎君? そんなに急いで? 何かあったのかね…」


 立ち会い人と思われる、年配の教師が、息を、ぜいぜい切らした俺に質問してくる。

「先生…。俺も…、…俺もその決闘に参加させて下さい…」

「何?」

「 チームは、今宮、牧村の方で」


 今ここに、ドベ3人組VSエリート組の闘いが始まろうとしていた。




テンポよく、歯切れよくをモットーにしてるが

中々上手く書けない…

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