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1話

 春。

 今日は、三嶋学園の入学式が行われる日。俺の名前は…何処?。

 校門の前、大きく張り出されたクラス分けの紙の前。慣れない制服を着て、多くの人に押され、悪戦苦闘しながら、俺は自分の名前を探していた。


「…あった」


 1年B組 城崎貴久。

 A~Dに分かれているクラスの中で、どうにか自分の名前を発見。


 自分の名前を見つけた俺は、さっさと人混みを抜けると、入学式が行われるアリーナに向かった。

 …なんで、カッコつけて、アリーナなんて呼ぶんだろう。普通に体育館で良いじゃん。

 並木道。アリーナに辿り着くまでの道中、俺はそんな事を考えていた訳だが…。


「…でけぇ」


 全学年が合同で戦闘訓練をしてもまだ余裕があるくらいの、圧倒的な広さ。

 大きさに圧倒されながらもアリーナの中に入ると、新入生入学おめでとう、と表示されたかなり巨大な電光掲示板を発見した。

 体育館で良いじゃん、なんて思って悪かったよ…。と、思わず謝りたくなる程の存在感。確かに、これはアリーナと言うのが正解だろう。

 アリーナの凄さを存分に見せつけられた後、中央の方に進み、入学式用にかなりの数を揃えた、パイプ椅子群の中の一つに腰を下ろす。


「…」

 3、4列先には、許嫁先の少年と楽しそうに会話する麻衣の姿があった。…ところで、麻衣は何組になったんだろ…? それだけは気になる。


 …等と、そんな事を考えてる内に、いつの間にか入学式が始まっていた。

 巨大電光掲示板には、新入生代表と生徒会長と名乗る人物が写し出され、新入生代表は生徒会長へ、生徒会長は俺ら新入生一同へと、それぞれ順番に祝辞を述べた。


 生徒会長は、ボーイッシュでイケメンで、普通ならば、好感が持てるのだが。


 …俺は嫌いだ。


 この生徒会長、完全に新入生を舐めきってやがる。我ら新入生代表が祝辞を読み終えても拍手一つせず、握手を求められても気付かないフリ。極めつけは、生徒会長が喋ってる言葉を聞き逃すまいと、一心不乱に電光掲示板を見つめる俺ら新入生一同を見て、笑いが堪え切れなくなったのか、小さく失笑。

 どれも、注意深く観察しなければ、見落としてしまうポイントであったが…、それらの仕草は、明らかに新入生を見下した態度だった。


 特別枠入学で入った俺は関係無いが、厳しい入学試験クリアし、やっとの思いで指名された他の新入生達に対して、生徒会長のとった行為は、決して気持ちの良いものでは無い。


「この生徒会長、気にくわないわね。私達、完全に舐められてる」


 右隣から、溜め息混じりで聞こえた声。


「…全くだ。厳しい試験を突破してきた新入生達を前にして、会長のとった行為はあまりにも失礼だよな、って…。

 え?」

「あなたは……」

 聞こえてきた声があまりにも正論過ぎて、ついつい条件反射で受け答えてしまったが…。俺は、声の主を確かめるべく首を右に向ける。


「って、お前は…。臙脂ジャージ」


 驚いた事に、聞こえてきた声の正体は、いつの日か、南で俺の特等席に座って、炒飯を食べていた臙脂ジャージの少女だった。

「あなたは、南に居た変な客…」


 彼女も同じ事を思ったのか、俺を見て少し驚いていた。つか…変な客っておい…。


「こんな所で会うなんて奇遇ね。…また、私が今座ってる場所もあなたの特等席だったりするのかしら?」

 すぐに、落ち着きを取り戻し、臙脂ジャージは顔を近づけ、聞こえる程度の音量で話しかけてくる。


「な訳ねぇよ。てか、まさかお前と、こんな所で会うとははな…」

 世の中というのは、案外狭いものかもしれない。


「それより。さっき、生徒会長が気にくわない、とか呟いたのお前だよな? …俺も同意見だ」

「…そうね。私もまさか、あなに拾われるとは思わなかったけど…」


 臙脂ジャージは、俺の問いにこう答えると、顔を離し、電光掲示板の方に向き直る。 「…」

 俺も電光掲示板の方を向き、その後は、静かに、入学式を聴いていたのであった。







「よお城崎。久しぶりだな」

 入学式が終わり、簡単なHR(ホームルーム)をするため、割り振られた教室に移動してる最中。


「えっと…、誰?」

「ありゃりゃ…」

 黒縁メガネに茶髪で天然パーマの少年に、後ろから話しかけられた。

「牧村だよ、牧村大成(まきむらたいせい)。もう忘れたのか? ドベ合宿で、一緒の部屋班だったろ」

「ああ…」

 牧村…。そんな奴、居たような、居なかったような…。どっちだっけ? と思いながらも、歩く歩調は緩めない。


 去年の11月の末から12月の上旬にかけて行われた、成績不良者を対象した特別合宿、通称ドベ合宿。特別枠入学においての、条件の一つだったから、一応俺も参加はしたものの。その頃は、麻衣と別れたショックが大きくて、合宿の内容などは殆ど記憶に残ってない。

 とてもとてもキツイ合宿だったって事は、体が覚えているのだが…。


「相変わらずの疎さだな、城崎貴久」

「…ん?」

 今度は後ろから左肩を叩かれる。声を聞くところには、女生徒だろう。


 学園生活が始まってからも、そんな調子だと、あっという間に落第するぞ」


 後ろを向いて、顔を確認する。

 くせっ毛が強い黒髪のショートヘアに、長い前髪を束ねる水色のヘアピンと右目の下にあるほくろが、見る者の目を引く少女。

 身長は俺と同じだから…、182cmくらいか? となると、女子としてはかなり大きい部類だ。


「お前は…えっと」

 …思いだせ。確かこいつも、ドベ合宿に居たはずだ。

「思い出した。お前は、今宮…今宮 悠(いまみやゆう)だな…?」

「…そうだ今宮だ。久しぶりだな城崎。

 もし答えられなかったら、パンチの一発でも、くれてやろうと思ったが…」

「……」

 喋り方が男っぽかったから、頭の隅っこに残っていたのが助かった。


「ども、今宮の姐御。ドベ合宿以来っすね」

「…牧村。だから、あれほど私を姐御と呼ぶなと…」


 牧村大成、今宮悠。俺はドベ合宿でこいつらとパーティーを組んだのだったな。合宿中、全くやる気を見せなかった俺は、何回も今宮に叱れたっけ。


「…そういや、二人は何組になったんだ? ちなみに俺はB組だ。…って」

「……姐御。こいつ、殴ってもいいですかね?」

「勝手にしろ……。私は知らん」

 なぜ二人は、俺を可哀相な目で見るんですかね…。

「…城崎。私は今、本気でお前に失望している」

 ため息混じりで今宮は言った。

「姐御の言う通り。…城崎、門前の組分け表ちゃんと見たのか? 俺ら3人とも、みんな同じクラスだぜ」

「…そう、だったのか」

 それは…その。なんか済まなかったな。あの時は自分の名前しか興味が無かったものだから…。


 まあ、そんな調子で二人と会話していると、1ーBクラスに到着。教卓に置いてある座席表を確認し、俺らは解散。担任の先生が来るまで、ぼーっとしていると、またしてもあの少女に声をかけられる。


「ねぇ…。あなた、座る場所間違えてない? また…そこも、特等席なの?」

「ああ…すまん。一例ズレて座ってた。って…、またお前か。臙脂ジャージ」


 俺を睨みつけていたそれは。南、体育館で偶然出会ったあの少女だった。…つか、ここまで、偶然が重なると運命って呼びたくなるね。何のときめきも感じないけど。


「てか、お前も同じクラスなのか」

「…臙脂ジャージ」

「…え?」

「臙脂ジャージよ」

「それがどうした?」

「次に、一回でもその言葉を使ってみなさい。本気で怒るから」

「……」

 席に座ったそいつに、コミュニケーションを取ろうと、何気なく話したつもりだったんだが…。どうやら地雷を踏んだみたい。

 てか、もうお前怒ってるよな? いつぞやの南の時の様に、全身に不機嫌なオーラが纏っている。


「…悪かった。それじゃあさ、名前だけでも、教えてもらえるか?」

 とりあえず、当たり障りの無いような言葉を選ぶ。

「ちなみに俺は…」

「…橘 由姫(たちばなゆき、それが私の名前。

 でも、だからといって私に話しかけてこないで。私、人と会話するの、あまり好きではないから」

 付け入る余地を与えない程の見事な拒絶。つか、人と会話するのが好きじゃないって…。それは良いのか、人として。

「「…」」

 牧村と今宮の、可哀相な人を見る視線が、今回もまた、辛かった。





「このB組を一年間担当する事になった、三原 誠司(みはらせいじ)だ。一年間、よろしく」


「…」

 嘘…だろ…。

 俺は教卓の上に立っている、教師を見て唖然とする。何故…三原先生が、ここに居るんだ? そこに居るのは、去年俺の母校で教師を勤めていた三原先生だった。黒縁の眼鏡がトレードマークの三原先生。


「これは、新しく赴任してきた僕にも当て嵌まるけど。新人の仕事は、学園の先輩や先生方に沢山の迷惑をかけて慣れる事だ。だから、新入生だからといって、変に畏まる必要はないよ。むしろ自然体の方が良い」

 説教臭い事をタラタラ喋り続ける癖、三原節も健在のようだ。

「―っと。長話は嫌われるから、ここらで終わりにしようか。それじゃあ、HRを始めるよ」


 HRでは、生徒手帳の配布や、学園生活、寮生活についての注意事項の説明などなど、こちらでは三原節は炸裂せず、スムーズに事が進んだ。

 …クラス中の反応を見る限り、三原先生に対する第一印象は、悪いものではなさそうだった。


「それじゃあ、今日はここまでにしよう。明日は身体検査があるからね、皆体操服着用で8時20分にアリーナに集合すること。いいね?」

 三原先生が音頭を取り、終礼を終わりにする。さてと、寮の自分の部屋に戻って、まだ終わってない引っ越しの後片付けでも終わらせようか…。

 いや、少し時間が早いけど、今宮か牧村を誘って、先に昼飯を食べるというのも有りだな。

 …などと、頭の中で今日の予定が次から次へと浮かんでくる。


「…そうだ。言い忘れてたけど、城崎君と橘さんは。帰り際、職員室前で待っていてもらえるかな?」

「…」

 だが、先生のたった一言で、全ての予定が一瞬で実行不可になってしまう。

「…はぁ」

 …心なしか、二人分の溜め息が聞こえた気がした。






「城崎君、久しぶり。そして、はじめまして、橘さん」

 職員室前、三原先生に呼ばれた俺と橘。


「…先生。びっくりしました。いきなり、三嶋学園の教師になって、まさか担任になるだなんて…」

「…まあね。僕も、受け持つクラスのクラス名簿を見た時に、城崎君の名前が入ってた時は驚いたよ…。

 まあ、積もる話は色々あるけれど。まず、場所を移そうか。二人とも、ついて来てくれるかな?」


 そう言って、スタスタと歩いてく先生。が文句も言わず、無言でついていったので、仕方がないから俺もついて行く。


「…」

 無言。しばらくの間歩いていると、一つの教室の前で三原ら先生が歩くのを止める。その教室からは人の気配がしない。どうやら空き教室みたいだ。

「…普通の教室ね」

 中に入ると広さが普通の教室の半分程しかないものの、それ以外は橘が呟いた通り、至って普通の教室だった。

 そもそも、何故俺はこんな所に居るんだろう。何かやらかしたっけか…


「さあ、二人とも座って座って」

 そして、先生に勧められるまま。近くの椅子に座る。橘も座ったのを確認すると、先生は会話を切り出した。


「今日、二人を呼び出したのは他でもない。…特別枠で入学してきた君達に、これからの学園生活での注意事項を言っておきたかったのさ」

「…え?」

 先生の話を聞いて、俺は軽く驚いた。


「お前も特別枠入学なのか?」

「……」

 橘は、俺の質問をガン無視。…つか、そもそも…特別枠入学って実在したのか。

「城崎君は、解せない。という顔をしてるね?」

「…まあ、多少は。特別枠入学なんて、飾りだと思ってましたから」

「ふむ…。また城崎君は面白い事を言うね」

「その根拠は?」

「実は…」

 俺は麻衣との一件は伏せて、特別枠入学は久留米という家の陰謀説だった、というのを二人に向けて展開した。


「なるほどなるほど…。だから君は、特別枠入学は飾りだと」

「はい……」

 下に傾きかけた、眼鏡を人差し指で方向修正しつつ、三原先生は俺に言った。


「確かに君の言う通り。…この資料を、三嶋学園に送りつけてきたのは、久留米家の者。

 それは、間違いないよ」

「やっぱり…」

 俺の予感は当たっていた。

 …あの時、麻衣に特別枠入学の事を、話さなくて本当に良かったと思う。


「でもね…」

 三原先生はやれやれと言った表情で、言葉を続ける。

「…でもね。城崎君に何か特別な能力があるのは紛れもない事実なんだ。

 君自身が能力に目覚めていないだけ。そうでないと、橘さんがここに居る説明が、つかないでしょ?」

「…ああ」

 言われてみれば、その通りだった。これには反論のやりようがない。

 ちらっと、横に居る橘を見ると。俺と三原先生の話には、全く興味が無いのか。つまらなさそうに、前髪を指で弄っていた。


「つまりね、順序が逆だったのさ。…久留米家は君の能力適性を利用したのではなく、君の能力適性を久留米家が利用した」

「…」

「実際、特別枠で入学した橘さんには、既にもう、能力に目覚めている。

 …どう、わかってもらえた?」

「…それなりには」

 本当に橘が、特別枠入学生なら。…ということは。やはり俺にも、本当に何らかの能力が、あるのだろう。

 どんな能力を俺は持っているのだろうか…。


「城崎君の疑問が解消されたところで…、そろそろ本題に入ろうか」

 その後、三原先生は学園生活での注意事項(とう)|、様々な事を説明してくれた。

 説明と言っても、昔に読まされた、特別枠入学に関するお知らせを改めて確認しただけなもので。主な内容は、来週の午後から始まる、特別訓練には参加せずに、この空き教室に顔を出す様にとか、普通、寮の部屋は3~4人で一部屋だが、俺らには、丸々割り振られるとか…こんな感じだったはずだ。




「これで、僕からの話は終わりだ。長い間付き合ってくれてご苦労さん。質問とか有るかな?」

「……」

「……」

「よし、なら解散」

「…ふぁ」

 退屈過ぎて、つい欠伸が漏れてしまう。

 やっぱり、三原節を聞くのは疲れる…。


「…」

 橘はというと。パイプ椅子を畳んで、さっさとこの部屋から出て行こうとしていた。

「ん……。この…っ」

 けれど。パイプ椅子は、彼女の言う事を聞かず。錆びた足の部分が、ガチャガチャと音を立てるだけで、一向に畳まれようとしない。


「……」

 そんな橘を無視して。さっさと、空き教室を出ても、よかったのだが…。

「これ、酷く錆びてるな…」

「え……」

「まあでも、少し力を入れてやれば…」

 橘からパイプ椅子を横から奪い取ると、無理矢理力を加えて畳んてやった。

「ほら」

「……」

 畳まれた椅子と俺の顔を橘は交互に見た後。

「あり…がと…」

 ボソッと。蚊の鳴いた様なとても小さい声でそう呟やくと、橘はさっさと空き教室から出て行った。


「城崎君、地味に優しいね」

「……まあ」

 今のやり取りを、三原先生は意味ありげな笑顔を浮かべて見ていた。

「じゃあ……、俺も帰ります」

「ん…お疲れ。

 …結局、もう一人の子は来なかったな…」

 俺も教室屋を出て行こうとした時。

 先生がボ何か呟いた気がした…。

「……」

 けれど、特に気にはしない。

 …食堂で何か食って、帰るか。




主人公の性格、言葉が遣いがばらばらで酷い。あと、文章力も

どうしたものか・・・。



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