最終話 想い人
9月某日、リベルの部屋にて
「…もしもし? どうしたのリベル? こんな時間に」
「あ、すみません。イジスタさん、寝てましたか?」
「ううん。俺はまだ起きてたけど、リベルもいつもこんな時間まで起きてたっけ? 」
「いえ…今日は……ちょっと」
「眠れないの? 」
「…そんなところです」
「そっか…ねぇ、リベル? 」
「はい? 」
「最近何か変だけど、どうしたの? 何かあった? 」
「え…っ」
「元気ないし、8月ぐらいから訓練場に来なくなったよね? …体調悪いの? 」
「………」
「…どうしたの? 大丈夫? 」
「―――イジスタさん」
「ん? 」
「私、好きだったんです。あなたの事が」
「…え?!」
「ちょっと前まで、好きでした」
「『でした』?! 」
「はい…。好き、でした」
「そ…か…。ちょ…ちょっと待って。俺、あの…」
「でも、告白されたんです2か月前。
…いつも私を見守ってくれていた人に、突然」
「え…。―――えぇっ?!! それって…! 」
「…私、どうしたら良いのかもう分からなくて。
訓練場に行く度に、胸が苦しくなるんです。私がイジスタさんを思っていた事、その人はずっと前から知っていたハズなんです。
それでも少しも表情を変えずに、ただ傍にいて私を守ったり慰めたりしてくれたんです。
私、なんにも…気づかないで……」
「…リベル? 」
「はい? 」
「えーと、ラビさんの事だよね? それ」
「えっ!!!?」
「皆薄々気付いてたよ。あの鈍感なアデルですら、ね。リベル、露骨にラビさんの事避けてたし」
「えエェェッ!!?」
「ふふ、面白い。リベルが思いのたけを言ってくれたんだし、俺も白状すると、ね…?」
「は、はい」
「俺も…好き。ほんの少しだけど、俺は現在進行形で、リベルの事が…気に、なって…る、かな 」
「あ…」
「いつからか訊くのは勘弁してね。色々あってリベルを泣かせた訳だし…俺は」
「…」
「俺じゃダメだよ。リベルみたいに真っ直ぐで頑固で可愛い女の子は俺の手には余るし、勿体ない。
ちょっとショックだったけど、俺フラれちゃったみたいだし」
「イジスタさん…」
「それにね、リベル。本当はもう答えが出たんでしょ? だから俺に電話したんだね? 」
「―――…でも、私もうラビさんに合わせる顔が無いんです。後姿を見るだけで、胸が痛くなって…。何て言ったら良いのか全然分からないんです! 」
「良いんだよ、そのままそうやって言えば。ラビさんならきっとそう言うだけで分かってくれるよ。リベルの思ってること、全部」
「そうでしょうか…」
「そうだよ。ラビさんは俺なんかよりずっと優しいし、男らしいからね」
「……そう、ですね…。はい! そうです! 」
「あははは…。そうそう! ラビさん半年近く待ってたんだから、幸せにしてあげてね」
「…はい!」
「リベルもうんと幸せにしてもらうんだよ? 」
「え?ふふふ…」
「どうしたの? 」
「私、幸せですよ。すごく」
「あ。もう切る。何か今ので傷ついたよ、俺」
「あっははは! ごめんなさい! 」
「いいよーだ。もう寝るから。明日、ちゃんと言うんだよ? 分かった? 」
「はい! 」
「よし! おやすみ」
「おやすみなさい」