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完成:童話?

冬の童話祭に出品しようかと思って、思い直したモノ



ロップホッパーさんは帰り際に一杯やるのが趣味で、


酒場のマスターにいつものようにビールを頼みます。


ホッパーさんの奥さんはそれを苦々しく思いながら家で待っていました。


「待つのはいつだって、私たち女!」


ホッパーさんがビールを腹に入れている間に、奥方の腹に溜まるのは怒りだけ!


いつしか怒りは恨みへと、恨みは憎しみへと変わるものです。


些細な悪意のの積み重ねは、大きな怪物へといつしか変わり果てても可笑しくはありません。


ホッパーさんが家に帰ったとき、そこにいるのは角を生やした巨大なトナカイ!


トナカイは恨めしげにホッパーさんを睨み付けます!


「おお、これはまさかアンナ、お前なのか!」


「ヒヒーン」と叫びながら角を震わせるトナカイ・アンナの鼻は赤い!


「おお、なんてことだ」と嘆くホッパーさんは酔いも醒めて、顔を覆ってさめざめ泣き出します。


それでもトナカイ・アンナの怒りは醒める訳でもなく、ホッパーさんの太い腹を自慢の角で突っつき出したのです!


「ああ、痛い、痛い」


これが愛の痛みかと思うホッパーさんは、針を刺すような痛みとともに、


後悔が引き起こすじんわりとした痛みも心に感じるのでした。


「あぁ、夢なら醒めてしまえ!」


そして目を瞑ったホッパーさんが、次に目を覚ますと


「……おお?」そこは空の上でした、ホッパーさんは白い髭を生やして、どこもかしこも赤い服を着ています。


「そうだ俺は、サンタクロースだったのだ!」

みると橇に乗って冬の冷たい空気の中を、切り裂くような速度で進んでいるのが見えます。

橇を引っ張るのは立派な角を持ったトナカイのアンナ。

「ああ、おかしな夢を見たよアンナ」


職業柄、トナカイに対して相棒以上の感情を持つのがサンタクロースの常ですが、

まさか人間となったアンナと暮らしている夢を見るなんてことは普通はありません。


フロイト先生ならこの夢に、どういった判断を下すのか気になるところでは在りますが、

先生はとっくの昔に墓の中です。


「メェー」と啼いたトナカイ・アンナ。これにはサンタクロースのホッパーもびっくりです。

「どうしたんだアンナ! その泣き声は!」


そして橇はびゅんびゅんと速度を上げます。


メェと泣いたアンナは止まる気配も見せません。


「うぁあ、これはもうだめだ!」


そして橇は、速度を失って、地上へときりもみ大回転。


目を瞑ったホッパーさんは、しかしおかしなことに気付きます。


耳に入ってくる音はパチパチ。肌に伝わる温度は温かいのです!


「あなた、どうしたの?」


「……此処は? 橇はどうなった」


青い顔で、寝ぼけたことを言う夫に、アンナ婦人は苦笑してます。


「全く、まだ酔っ払っているのですか?」


「いやぁ橇が」


「橇なんて去年、貴方が壊してしまったでしょう?」


言いながら暖かな空気に、ホッパーさんは今までの情景が全て夢であったことを悟りました。


婦人は温かい紅茶とクッキーを携えて、ホッパー師の隣に腰掛けました。


「どうですか?」


「いや相変わらずおいしいね」


「ふふっ」


そうして二、三枚のクッキーを口に運んで、紅茶を飲むとホッパー師は身体が温かくなってくるのに気付きました。


「おおこれは気持ちが良いぞ?」


「まあまあ落ち着いて貴方」


パチパチという暖炉の音がバチバチに変わり、


次第に心臓が、素早く叩かれた太鼓のように脈うってきます。


「おおぉ!!」


「あなた!?」


「俺は自由だ!」


そうしてホッパー師は、まるで羽のようにふわりと浮いて、


そのまま天井を突き破って、大空へと飛翔したのです。


「あぁ……修理費用が」


婦人の悩みも、大空を自由に飛び始めたホッパー師には関係ありません。


悩みも、何もかも振り捨てて、彼は自由に、本当に自由に青くて冷たい空を飛び回っています。


「俺は自由だ!」


そうしていつしか雪雲が世界を覆い始めて、ホッパー師の姿はその中へと消えていきました。


めでたし、めでたし。















昔、あるところに哀れな乞食がいました。


哀れな乞食は、その日その日の御飯もままなりません。


「そこの若いやつ、俺によぉ、飯を恵んでくれよぉ」


と項垂れたように呟いて、道行く人々の服の裾を掴むのが彼の仕事のやり方でした。


垢にまみれた手は汚く、街の住人は誰もが皆、彼のことを嫌いでした。


死んで欲しいとまで思っていたのです。


「へっへ!」

とニヤニヤ笑う、嫌らしい蛇のような乞食は、そのことに気付いていませんでした。


さて今日も今日とて、金を要求する乞食は、


差し出した手に冷たい氷の結晶の欠片が降り落ちてきたことに気付きます。


「宝石だ! 宝石みてぇな雪だ!」


六角形の結晶、八角形の鏡の欠片、一六角形の燦めく宝石。


冷たい雪は、空を見上げる乞食の口の中へと入っていきました。


「ううーん、フルーティー」


なんと不思議な事に、この町の雪は昔から果物の味がすることで有名だったのです。


もう何十年も、この雪は乞食の些細な楽しみとなっていました。


「うめぇ、うめぇなぁ」


言いながら空を見上げる乞食は笑顔で、道行く人々はそれを気味悪そうに眺めていました。


「全くなんて気持ち悪い」


「凍死してしまえばいいのに」


「なんともはや、生きているのが不思議でならない、神は一体なにを考えているのか」


それでも乞食は気にせず、空を、まるで子供のようにニコニコと、どこかあどけなく、


心の底から嬉しそうに眺めています。


するとそこに警察官がやってきました。


「貴様が乞食だな?」


「へっ?」と返事をするや否や、警察官は懐に入れていた小型火炎放射器でたちまち乞食に火を付けました。


燃えさかる火炎は、乞食の全身を覆い、みすぼらしい布と、薄汚い皮膚と、身体についた雪を融かしていきます。


「あぁ、うぅ……な、なんで!」


「お前を抹殺しろという街の住民の命令だ。


お前は存在そのものが邪魔なのだ」


燃え行く視界の中、全身を苛む熱さの中、


乞食は涙を流しました。


「ど、どうじ……でっ!」


涙はたちどころに蒸発して、そして身体はどんどんと骨になっていきます。


呻く声を上げて空を見ると、フルーツの味がする、とてもおいしい雪が、綺麗に彼に向かって降り落ちているのが見えました。


乞食を囲む住人は、誰もが立ち止まって、燃え行く乞食を悪辣な笑みを浮かべながら観察しています。


「あぁ、がぁ」


呻きながら、なんでなんで、と慌てながら、驚きながら、何よりも哀しみながら、


乞食は地に伏してもがきました。


そして動けなくなった乞食が、最後に見たのは、彼が子供の頃から好きだった、この街の、雪。


その一片を最後に、乞食は死んでしまいました。


どうしてこうなってしまったのでしょう?


周囲を取り囲む、住人たちは満面の笑みを浮かべて喝采を挙げています。


そして警察官は、乞食の骨だけになった燃え滓を踏みにじって、


哄笑を挙げています。


「はっはぁ! ざまぁみろッ!!」


そうして後に残ったのは、乞食の燃え滓と、乞食の愛した雪が混じり合った。


醜い灰色の色彩のみ。


その他にはなにも、乞食の男が居た形跡は残らなかったのです。


めでたし、めでたし。









迷子のマグロくんは、


親友のアユちゃん、マンボウくんとともに旅にでました。


向かってくる苦難、悪のシャーク団との激闘。


謎解き、依頼、旅先のロマンス。無数の絆。


マグロくんと、アユちゃんと、マンボウくんの旅は既に終わりに近く、


三人は最後の晩餐もかくやというようにたき火に当たっています。


「とうとう明日ね」


「……」


たき火をバックに城が映ります。


大魔王の城。


待っているのは激戦。


誰かがその命を落としてしまうかも知れません。


もしかしたら石化の術を使われて異世界とこの世界が交錯する一大スペクタルになる可能性もあるけど気をつけて!


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