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未完成6:神話混交世界における冒険譚


これはあくまでも個人的な神話解釈、あるいは説話採用、そしてそれらの融合を行っています。

一義的には事実と言える箇所もあるでしょうけれども、私の想像力の産物に過ぎない場面も多くあります。

部分的には正統とされる神話の説が、他方異説と複合的な混交を見せている場面もあります。


その点にご理解を頂けた上で、なによりもお読みになってくだされば幸いです。





 それは誰かの見た夢なのか。

 でもそれは夢とは思えないほどに精彩に富んだ、美しい世界。


 靄とも空虚とも言える空間の中に、輝かんばかりの光が満ちて。

 あるいは凍えるほどに寒そうな深い蒼夜が、その片側に広がっているように見える。

 

 どことも知れぬ空間の上方を輝く天が占め、下方を黒々とした闇が占めていると言ったほうが良いだろうか。

 そして二つの異なる空間の狭間、つまり境界線上には燈とも赤とも青とも白とも言える色の、黄昏あるいは暁の世界が僅かに広がっていた。

 

 そして境界の中央に浮島が。

 その浮島の中心には一つの大きな館。

 北欧の神話世界に見受けられるような無骨な石造りの館。

 戦士が殺し合い、蘇り続け、そして酒宴を行い、また殺し合う、あのヴァルハラによく似た館が在る。

 

 無骨で何処かよそよそしい館は巨大で、それこそ城とでも呼ぶのが相応しいように見えた。

 そしてその館への入り口は二つあるらしい。

 北の門と南の門。

 北の門から伸びる石造りの道を辿ればやがて絶壁へと、

 同じく南の門から伸びる石造りの先にも虚空が口を広げていた。

 

 館の南北に通った道は上空から見れば一直線に引かれた境界線に見えなくもない。

 

 境界線の東、館の東には濃い土の匂い、無数の果樹が立ち並び、そこを抜けると小高い丘が見える。

 丘には何やら聖堂めいた物が、そして何か煮炊きをしている時に起こるような煙が立ち上っていた。

 丘の向こうには、丘から流れ落ちる川、そして揺れる黄金の穂波。

 朝焼けの強い世界なのか、東に向かえば向かうほど太陽の明かりにも似た鮮烈な光が強くなっていく。

  

 境界線の西、館の西には濃い緑の匂い、深い森林が広がり、その最深部には清浄そうな泉が見える。

 泉には月光が照らされ、深い森には無数の鴉、大きなものから小さなものまで多種多様の鴉が棲まう。

 泉の奧には、何やら不思議な光、もしかしたら妖精の王国か。

 こちらは夕暮れの強い世界なのだろう、西に進めば進むほど闇は濃く、夜の帳が降りていく。

 

 これはそんな浮島を舞台にした、一つの伝説。

 いや、正しくは神話と言い換えた方がよいだろう。

 この話には神か、神にまつわる存在しか登場しないのだから。

 




 さて、まずは何から話をするべきか、時間はたっぷりあるのだ、慌てずに語っていこう。

 

 まず始めるのは南門側の話。

 

 一人の男神と一人の女神の話。

 さて、その話は、まず一人の男神が石造りの道の上に倒れていた、というところから始まる。

 

 倒れていた一人の男神。

 服装はそう、和服、鮮烈な青と紫が全身を覆った和装に身を包んだ、ちょんまげの男だ。

 何処の神かは言えない、今はまだ私にはそれを語る資格などないのだから。

 お聞きくださっている貴方には推測してもらうしかないのだろう。

 

 一人の男神は、うつぶせの形で、その長身、その筋肉に覆われた巨体を眠りに浸らせていた。

 やがて閉じられた目がぴくぴくと動き、意識が目覚めに向かう。

 「ぁあ……?」と呻き、倦怠に満ちた声。

 自らが無骨な石に寝そべっていたことに気付いた男神は身体を起こす。

 端整な、しかし何処か、オブラートに包んで言えば間の抜けてそうな印象が拭えない。

 胡座を組みながらうつらうつらとした意識が醒めるのを待つ男。

 短く刈り上げられた髮とそれに反するような豊かなちょんまげの黒は、

 遠く空からの朱い光を受けて燦めいていた。

 

 「……で、こりゃ、どういうことだ?」

 

 意識の目覚めた男は異常に気付いたようだ。

 見覚えのない景色。明らかに異常な鮮烈な朱い空。

 どこだか分からない石畳。遠くに見える巨大な石造建築。

 男の右手には見たこともない果物を生やした樹木が遠くまで広がっている大地。

 そして左手には闇を抱えて黒々と太った見渡す限りの大森林。

 

 そして振り向けば崖、首を伸ばして崖の下を覗けばあるのは深い暗闇。

 黄泉にも似た空虚な闇だ。

 

 何もかもが、 この和装の男神が今までに見たことのない景観であった。

 建築物から植生まで、その全てが異様。

 

 「……酒でも飲み過ぎたか?」

 と男が現実を疑うのもしょうがないことだろう。 

 首を振り身体を確かめる。

 すると男は腰に提げていた剣が無いことに気付いた。

 

 「ありゃ? ……おかしいなぁ」

 

 と零す男が辺りを探す。

 己の父たる神から貰った思い出深い剣で、

 それをなくすことなど男には考えられなかった。

 

 男は探すが、しかしそれは見つからない。

 その代わり男は違うモノを発見した。

 大変美しいものだ。

 

 「うぅ、ん……」

 もぞもぞと動く小柄な少女だ。

 いや神性を帯びているところを見れば、これは女神だろう。

 女神など見飽きている筈の男神は、しかし動けない。

 見たこともない美しいその姿を前に動けない。

 

 蜂蜜のように甘く輝く黄金の髪は首もとでぱっつんと切り揃えられている。

 およそ黄金比の限りを尽くした小顔、なめらかな褐色の肌。

 健康的な美貌から窺えるしかし、荘厳な気配。

 

 男の住んでいた世界とは全く違った世界の住人であるかのような気配。

 

 少なくとも男神はこのような顔をした女神は見たことがなかった。

 

 「……おぉ」

 と男神が唸り、そしておもむろに近づくことは不可避なのだ。

 誰しも美しい者には触れてみたい。その少女の美しさ故にそれは不可避なのだ。

 そしてそろりそろりと、男神はその大きな体を鼠のようにみみっちく縮こまらせて、

 眠る石畳の美少女へと近づく。

 

 時代を感じさせる和装のつなぎ部分、筋肉の見える腕を伸ばす男。

 どんどん、だんだん、すぐそこに。

 やがて顔のすぐ傍で、その腕は止まる。

 高貴な小顔のあどけない寝姿をもっとよく観察するために。

 見れば男神にとって見たことない服装である。

 薄い布を何枚か羽織っているようにも、あるいはそれに穴を空けているようにも見える服。

 下履きはなく、艶やかな生足がちらちらと窺える。

 

 男神はその服をトーガと呼ぶのだとは知らなかった。

 

 知らずごくりと唾を飲み、人草そのものの所作で、触れ得ぬ神秘へと男は手を伸ばす。

 

 「……何のつもり?」


 苛立ちを含んだ声が、澄んだ稲妻の如き響きを持って鳴った。

 見れば女神の瞼が開いている。

 大きな灰色の瞳。小顔に配された印象深い大きな灰色の輝く瞳。

 何処か首を傾げた梟のような印象をもって、女神は誰何の声を上げていた。

 

 「……おぉ、すまねぇ、なんというかあれだ」

 「……あれ?」

 「行き倒れを発見すれば助けるってのが人情だろう?」

 「……へぇ」

 

 男神は素知らぬ顔で手を差し出すが、

 如何にも胡散臭いといったような顔つきで女神はそれを無視して立ち上がる。

 

 頭一つ以上も身長に差がある女神と男神は、自然、見上げ見下げ合う形で顔をつきあわせた。

 

 男神は口角をひくつかせて、女神は灰色の、そして輝く瞳を細めて。

 

 「で、貴方の盗んだ物はどこ?」

 「……はぁ?」

 「白々しい、私の盾と鎧、そして槍、その他の装飾のことよ。

 知らないとは言わせない」

 

 その美しい顔を苦々しげに歪めて女神は言う。

 最初から決めつけている、を越えて決まり切った事実を述べているような口ぶりに、

 男神は自らが盗人の疑義を受けていることに気付くのに数秒かかった。

 

 「知らねぇよ」心外というような口調だ。

 「そんな訳ないでしょう?

 貴方が何処の誰か、どんな存在かなんて知らないけど。

 ただ言うわ、返しなさい。

 そして泣いて這いつくばって謝りなさい、せめて殺してあげるから」

 

 男神は、最初言われていることが分からなかった。

 

 彼の文化圏においてそのような事を己に言う神など居なかったからだ。

 

傲慢で潔癖で性急な脅し文句に男神は怒りを覚えた。

 

 「知らないって言ってるだろ!?」

 「傲慢な口を利くわね、何処に隠したのか言えばよいのに。

 平べったい木っ端の神、今一度聞くけど……」

 「木っ端? この【……】の子【……】!! を前にしてそのいい様は何様だよてめぇ!!」

 「貴様こそ私が【……】の【……】!! だと知っての態度?」

 

 そこで沈黙が起こった。

 「【……】!」

 「【……】!」

 何かを言う二人の神。

 口を開けて、口を動かして、パクパクと魚のように何事かを空気に向かって話しかけている。

 

 矢のように鋭い視線を湛えたまま黄金の髪をもった少女女神は、目前の男神を怪しむように見る。

 己の装飾具が無いことに関連していると女神が思っている。

 いかにも低劣そうなどこぞの馬の骨とも知らない男神だ。


 が、そこで女神は気付く。

 見れば空が、地面が、空気か、周囲が、その全てがおかしいことに、

 そして、なによりも……。

 「貴方、名前はなに?」

 「……名乗るときはまずは自分から名乗るのが礼儀ってもんじゃねぇのか?」

 「【……】よ」

 「…………、俺は【……】だ」

 

 生ぬるい風が吹いた。

 全く動かぬ夕暮れが、あるいは朝焼けの赤が眩しい。

 二人の神は異常に気付いたのだった。

 


 

 「己の名が名乗れない?」

 「てめぇもか……」

 「貴方の仕業ではないの?」

 男の相槌に、訝しげに眉を挙げて、鋭く射殺すような視線を向けた女神。

 未だこの異常な状況、己の宮殿でなく、ここは慣れ親しんだ山上でもないという状況。

 

 「俺が聞きてぇよ、てめぇみたいな見たことも無い神がいるしよ。

 最初はここが高天原かと思ったけどよ、おめぇの口ぶりは噂の天照とはどうもそくわねぇ」

 「タカマガハラ? 私はここがオリュンポスか、果ては夕神と暁神の住まう屋敷の傍かと思ったのだけれど」

 「オリュンポス?」

 

 トーガを着た美しい少女神と、如何にも三流の悪役臭い口調の男神は首を傾げる。

 

 「名を剥奪された……いや、名を、あるいは己の正体に関する情報を口に出来ないのかしら。

 【……】ふむ姉の名が呼べないわね……でも、オリュンポスは大丈夫なのね、基準がわからないわね」

 「【……】俺も弟の名前が呼べないな」

 

 生ぬるい風、そよぐ緑、遠くに揺れる黄金の林檎の果樹園。

 そして葉のこすれる音を輪唱を左手の森林。

 

 「……本当に貴方は関係ないの? ……木っ端」

 「木っ端じゃねぇよ、というかさっきからしつこいんだよおめぇ

喧嘩売ってるなら買うぞ?」

 「この私に、おめぇなどと口を利く勇気のある神を久方ぶりに見た。

 まあそれは許すわ。謎は後よ、私は誤魔化されないわよ、私の盾はどこ?」

 「……だから知らねぇって!!というかお前こそ俺の剣を盗んだんじゃねぇのか!?」

 「馬鹿を言わないで、巨人でもあるまいし、この私を盗人扱い?

 貴方知恵は大丈夫かしら? 言っておくけど私は容赦しないわよ」

 

 話し合いは平行のまま。

 お互いへの疑いを、一先ず腹に仕舞うという結論がでるまでおよそ後三〇分。

 

 見上げながら見下すという器用な眼差し相手を蔑む女神は、

 見下ろしながらも、どこか押され気味な男神と、しばらくの間、激論を交わすのだ。

 

 よく練られた黄金の醸し出す高貴な髮が、額において横一線に切り揃えられて、

 それが真夏の短冊のように揺れ。

 深い黒髮が小気味よく刈り上げられた男は、しかし後頭部のみ長髪に留めており、

 その結られた髮が、大気を泳ぐ。

 

 ただ赤い空の光だけが、粛々と二人を照らし出していた。

 

 

 

 




「とりあえず、館で話を聞こう」


ということで意見が纏まった二柱の神は、石畳を進み、煙が上る荘厳な館へと歩く。

浮島の崖近く、南のへりから歩くこと数十分。

男神は手慣れた様子で地面を進むが、その隣を歩く女神は如何にも面倒そうだ。


男神が気圧された、冷徹かつ傲慢な気配は既に鳴りを潜め。

お互いが不審な動きをしないか監視しながらの道中。

未だに納得仕切っていないらしい女神の刺すような視線が、男神を責め立てた。


疑い深い神である。

如何にも理知的で、そして男勝りな、強い神なのだろう。

少なくとも男神の周囲にはいなかった神である。


道が進めば、目的地は近づく。

女神の故郷、そこから望める下界に住まう人間どもの中には、

英雄は永遠に亀に近づけないと言った者がいたが、所詮繰り言に過ぎない。

 

「おぉ」

「へぇ」

 

壕が見えてきた、澄んだ水にはそれぞれ最上級の物を見てきた二人も唸る。

見れば虹色に鱗の輝く魚も見えた。


見事な手入れで、苔一つ無い清浄な環境だった。


壕には、これもまた石造りの橋。

頑丈そうな石の門構え。

城壁、門、そして門の前には一人の男が仁王立ちしていた。


七尺近い男神を越えて八尺はあるだろう、銀と金に輝く槍を持った男神だった。

腰には壮麗な光沢をもった角笛、様々な貴金属が紋様を描いてそれを飾っていた。

その門番は「待て」と言い、二人の前に立ちふさがる。


「……こいつが犯人じゃねぇのか」

「そう、死刑決定ね」

「……話が見えないのだが?」


皮肉めいた笑みを浮かべ、蟻を見るような眼差しで女神は門番を見た。


「で、何故止めたの? 不埒者、死刑決定よ?」

「はっ、嬢ちゃん素人かい?」


「ちょ、待て、待てって」挑発に反応するように女神は唇を噛んで、髮を振り回して睨み挙げた。

今にも振り上げた拳を門番の急所にぶつけようとするところだった。

短気を支える恐ろしく高い矜持。


「躊躇がないのなおめぇ」

「あら、躊躇というのは格上にすることよ?

そして私にとって格上など無いも同然なの、知らなかった?」

「……そりゃ結構なことで」

呆れた声音と表情の男に対して、長身の門番は穏やかに笑っている。

「はは! 面白いな、大した気概だよ。

……ようこそお二方、君たちが客人マレビトだろう?」


如何にも何かを知っているような口ぶりで、門番が思いのほか気さくに話しかける。

しかし、その瞳には何処か陰が見えた。


「残念ながら名乗ることは出来ないのだけどね」

「貴方もなの?」

「この島に住まう全ての物は、名を呼ばれることによって初めて己から名乗ることが出来る。

そういう誓い、テオスであり、うけい、ゲシュの下にあるのさ。

まあ、なんで此処に居て、こうした役割を割り振られているのかは知らないけどね。

ともかく君たちで最後さ」


言いながら長身の門番は銀の兜を揺らし、

如何にも神秘が宿っている赤い外套も一緒に揺れていた。

無精髭の門番は如何にも他人事で、何処か倦怠感に満ちていた。


「……で、中に入りたいのだけれど?」

と女神が、黄金髮の女神が腕を組んで言う。

質の良いトーガは細波を作り、苛立たしげな女神の心象を強調していた。


既にこの短時間で、この神はとても気性の難しい、攻撃的な女神であることを見抜いた男神は、

同調するように頷く。


「そうしたいのは山々なんだけどね」がマイペースに職務忠実な門番の男。

「……あ、そういうのは良いの、そこの扉開けてくれるかしら」

「無理だ」


そこで女神が美貌を歪めて、梟のように威嚇する。

灰色の慧眼が細められ、攻撃的な空気を帯びる。

男神も同じように相撲取りのようにかぶりつけるように体勢を整えている。


「素手で適うと思っているのか? 門番破りども!!」


対応するように門番も一歩を引かない。

女神と男神を圧倒するような神性が放たれた。


「……っ」と女神が零すのは如何なる理由によってだろうか。


信じられないというように、女神は悔しげな色を瞳に宿した。


「ふん、名を取り戻せぬ者は、その役割から解放されることもない。

そしてなによりも力が取り戻されることもない。

名も知らぬ黄金の女神よ、日に焼けた女神よ」

「これ日焼けかよ!」

「そうよ、悪い?」

「……女神よ、如何な二人がかりとはいえ、

この角笛の名を取り戻した私には勝つことは出来ん。

自らに近しい物の名を取り戻すこともまた力の回復へと繋がる。

お前たちのような木っ端では、この門を力で押し通ることは叶わぬと知れ」


門番は角笛を掲げて叫ぶ。


「これこそ、まさにギャランホルン! 我が大命を果たすべき道具なり!!」


気圧されたように、じりりと男神は一歩下がる。

対照的に、悔しそうな表情を作りながらも、女神は一歩も引かない。

「名乗る範囲を見つけることにより、初めて力が取り戻される……ということ?」

「賢しいな女神よ、異界の女神よ、地中海の女神よ。

そしてそこで縮こまっている矮小な男神よ。

東の果てにある島の神よ。

我が名を取り戻せ、さすればこの門は開かれん!!

それが私の役割で、それが貴様らの此処を通るための条件だ!!」




何もかも面倒だと言うように、女神は渋面を作っていた。

現在は壕から離れて西の森へと向かっている。

小柄な女神の後ろから、追いかけるように、付き従うように男神が後に続く。


「厄介なことになったわね」

「つまりあれか? 俺たちの名前を名乗れるようになれば、

ある程度の力が戻ってくることか?」

「そうみたいね……それよりも私は木っ端だとか、矮小だとか、

あそこまで虚仮にされたのは、生まれて初めてよ、私。

凄い気分」


そして女神は溜息を吐き、目を瞑る。


触らぬ神に祟りなしと男神は内心呟き、

面を上げた女神は、心底面倒だと言うように女神は肩をすくめた。

オリーブの匂いがぷんと漂った。黄金の髪が波打ち、女神は苦笑する。


「……先ほどの非礼は謝るわ、極限状態だったからかしら。

何もかも疑わしくなってね。ティタンかギガースの呪いに思えたのよ」

「まあいいけどな、大八洲の男児たるもの細かいところは根に持つな、てな」

「……まあ名前は名乗れないし、貴方が何者かも知らないし、

大体私、男って嫌いなの、その辺りは変わらないから、近づかないで欲しいのだけれど。

というか忘れてないのだけれど、私が寝てるときに何かしようと……」

「お、見ろ、あれが森の入り口じゃねぇか!?」

「私、下衆な男が嫌いなの。殺したいほどに、それだけは覚えておくように、異界の男神」

「……はは」


森林が闇を携えて手招きしていた。

二柱の神は、分かれて行動する筈だったのだが、女神が戦力分散は愚の骨頂と判断したため、こうして二人で森へと向かっていた。


「なあ、まずは俺たちの名前を取り戻せばいいんじゃねえの?」

「私が貴方を呼んで、貴方が私を呼ぶ。

言うのは簡単なことだけれどね、私たちは如何なる手段によっても自分の名前を外に記すことが出来ないのよ?

ヒントが必要でしょう。

それにしたって、私と貴方は住む世界が違う、ヒントがヒントにならない。

私は貴方の由来も全く分からない」

「そして俺はお前の名前の察しがわからない」

「そういうこと、謎を解けば、いづれ答えは出る、筈。

と本当だかは知らないけどあちらが言ってるのだから、とりあえずは進みましょう」









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