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剣狐諸々珍道中・1・男・要山三郎、狐に出会うの話、旅は道ずれの話

そしてこれが問題の第一話

なんというかよみにくい

推敲してる間は楽しかったのだが

流石に読み返して胃もたれしたので第二話くらいのノリがいいねという結論に


でも気にはいってましてよ?


去年(2013)の一一月の作品


 1


 これから語るのは、いまはもう昔の、それこそサムライとよばれる者た

ちがその生を謳歌していた天下太平の時代のこと。

 ひんがしの都で生まれた一人の男の話。

 男の名はかなめ山三郎さんざぶろう

 一人の武士もののふと狐のこと。






 2



 要山三郎はサムライの端くれであった。


 ときの東のみやこでは先年の黄檗の乱、そして遠く欧州から来た招かれざる客人たちを相手どり戦ったサムライの人気がまさに頂点にあって、その勢いのまさに鯉の滝登りもかくやという有様で。

 いわゆる東国の連盟政府、その首府たる東の京の木っ端役人の三男坊としてせいを受けた山三郎も、連年次第に高まるサムライ人気にかぶれて、どうにも痩せて暗い印象の拭えぬ父に頼み込み、東京ひがしみやこの道場なぞに入れてもらったという次第。

 素寒貧とは言わぬが、安月給の中、父の精一杯の優しさ、それを頼みに彼の入った道場こそ、かの村上流西門派の木村泰鉄の道場であった。

 木村道場はいまでこそ名の知れた大きな道場であるが、当時は東連盟を辞した木村が、己の溜めた決して多からぬ給金をどうにもこうにも工面して興したばかりの新興の道場であって、山三郎が此処に入るのもその月謝の安さ故に他はなかったのである。


 「二の太刀は要らぬ、などとは言わぬ。

 サムライの性とは勝つことこそがもとにてさうろう

 使えるものなら、泥でも噛むに躊躇せぬことこそ肝要なり」

 これは木村道場に伝わる言葉として最も人口に膾炙したものだろう。

 

 高名なこの実践哲学に示されるように木村泰鉄の技は泥臭くも堅実、派手さこそはないものの執拗にして強靱なるもので、ときの山三郎もその薫陶を受けたに違いなかった。

 ただし、山三郎が、一般に想像されるような木村門下の剣士と一線を画したのは彼が魔剣を操ったからこそで。

 ときに西洋に存在する魔導邪法の類は、まさに超常なる技にて、我が国における陰陽道、あるいは仏の御技とも、神通力に似へりとも言えるが、サムライの駆る魔剣は規模の上ではそういった西洋の御技に近しいものであった。

 いわゆる小諸豪鬼の終命の太刀。鬼刺しの剣の新堂一郎。水神刀みながみのたちの市方信昭、風竜刃ふうりゅうじんの二階堂遥継。

 木村一門も歴代には数人の魔剣士を生んだが、要山三郎がその初代であって、同時に門下史上最大の異端ともいえた。

 かくのごとく語ってきた要も、このときはいまだ元服も遂げぬ齢十ばかりを前後する小童こわっぱに過ぎず、その名声はおいおいと語られるものであって、このときの要は熱心に素振りに勤しみ、書に学ぶような、それこそひんがしみやこに一石を投じてれば其処此処そこここで見つかるような、どこにでもいる徒弟に過ぎなかった。

 

 さて幼き要は木村の下にて日々を過ごすうちに、もとより些細な憧れだったサムライの剣技の修得を何よりの楽しみとしていくようになる。

 さすれば精励も進み、いよいよ腕が磨かれ、同期後輩連中と比べても並ぶものなき腕前へと上達を遂げていく。

 木村泰鉄も、この覚えの早く、そして浅はかながらも率直にて剛健な性質たちの弟子を気に入っていたとみえ、入念に己が技を仕込んだと伝わる。

 父に似ず肉体が、またその精神も頑強であった山三郎は、技術の要諦を飲み込むのも一等に早く、瞬く間に弟子の中で、最も優れた剣技を身につけていったのだった。

 

 そのうちに要と木村道場が一躍名を馳せることとなった事件が起こる。

 

 珠の河原と呼ばれる、東京ひんがしの外苑に流れる有名な川縁。そこで起こった三条殺しの決闘と呼ばれるそれだ。


 鬼のごとき面貌と、その鍛えた剣技をつかって、方々の道場を潰すことを生業なりわいとしていた三条晴道さんじょうはるみち

 希代の悪鬼と名高き大男を相手取り、木村泰鉄。そして当時齢とおと四つを過ぎたばかりの要山三郎が戦うこととなった。

 決闘は、サムライの矜持と矜持がぶつかる、木村たちにとり道場の存続のかかる敗北の許されぬ立ち会いとなった。

 

 雲一つなく澄んだ空の下、河原のさざめきと、そしてまた見物の野次馬のざわめきの中で、太陽が頂点へと至る瞬間、刃と刃が噛み合わされ、火花が散って、三条が驕りからよしとした二対一の決闘が始まった。

 

 はじまれば殺気が乱れ、剣技は踊るように振るわれて、やいばそらを泳ぎ、風に逆らうように腕が凪いでは、波のようにたおやかに、滝のように速く、板東一郎を思わせるような激しさが、仕合の場に満ちて流れる。


 水もたまらぬ一迅の閃き、木村と要は、たった一人の巨漢、鬼の如き三条に遅れをとっていた。

 はたから見てもわかる苦戦と実力差。

 木村の振るう太刀は堅実、ときに奔放、よく相手を惑わす、妖しげな技であった。見物けんぶつの多くは三条の豪快にして膂力りょりょくの乗った、一見して派手な技にばかり気をとられていたが。僅かな人々は、木村の技が決してそれに劣るものでなく、この東の京においても上から数えたほうが速いことに気づいた。またその弟子の要も、歳を考えればよく練れていたといえる。

 しかしそれでも勝負の形勢は、一目にして三条の有利なものとわかった。

 膂力の違いと、互角の技、そして何よりも経験の差、人を殺めた数の差が浮き彫りとなって、次第次第に木村を、要を追いつめていった。

 光刃こうじんが煌めき、刃が火の涙を流す。打ち合わされる撃剣の連打が雨霰あめあられと舞い散っては目にも止まらず。

 踊るような身のこなしで、と死を躱し、唸るやいばの威力に、飛びかかるは絶命必至の豪腕と。

 やがて木村が腕にを受け、ほとばしるは朱い命の流れ、そしてかすれる小袖こそでは破れ、すでに顔をかすりて傷で真っ赤と染めたる要が見るのは、己が刃を取り落とした師と、そこに刃を振りかぶる三条の姿。

 それでも小僧は怖じ気付くことなく、己が師の命を助けんと果敢に吶喊とっかんした。


 後に見た者から聞いたところによると、それは一瞬のことであったそうだ。

 一刀いっとうが、小僧の細腕から振るわれるや否や、その刃は三条を右肩から袈裟に、それどころか、足下の河原にあった黒ずんだ巨岩までも切り裂いた。


 これぞまさに魔剣。


 いったいこの年若い剣士が何をしたのかと、見物人は絶句、呼吸の音一つ聞こえぬ沈黙が河原を覆った。

 とはいえそれも須臾しゅゆのことで、次には歓声が響き、勝者の二人が治療のために速やかに運び出されて、戦いの終わりが告げられた。


 こうして要山三郎の名は京に響き渡り、はやくも各軍、あるいは警邏けいら役所などから士官の誘いが引きも切らずに訪れるというありさまであったが、今だ己の若輩であること、師より技を教わる途上にあることを理由にその全てを丁寧に辞した。

 

 そしてること数年。

 噂も、士官の話も、軒並み落ち着いて長く。

 ようようのこととして免許皆伝を受けた要山三郎は、されどもその浮き名もあって東王ひんがしおうの近衛に入隊を果たし、そしてまた一月ばかりあとにそこを解雇される憂き目にあった。

 歴代の近衛史上、最速での根無し草への転落を果たして、こののち彼は旅に出る。

 数十年にも渡っての、彼の名を歴史に残すこととなる旅に。

 

 さてその要山三郎。

 このときこれが一九のよわいにして、またこよみの上では経東十八年、開闢より一七二二年のことだった。







 3




 編み笠なぞを被って、しきりに首を傾げながら、一人の男が道を歩いていた。

 昨晩の雨が作ったぬかるみに草履がよごれるのも構わずに、ひたすらに道ゆくこの男こそが、先頃あわや刎頸ふんけいの危機にあった一人の頓珍漢、要山三郎であった。

 その木訥ぼくとつと無骨の絶妙に混じり合い、辛うじて精悍せいかんと評することができるおも立ちには、幾筋かの刃傷はきずの痕が。

 面貌めんぼうは鋭くもどことなく愛嬌に満ちて、その顔に浮かぶのは呆然の色であった。


 ああまでにぎやかに、そして師より涙を持って士官を祝われて、また見送られた末の椿事ちんじということで、流石の朴念仁もこれは居たたまれぬとそうそうにみやこを去ることとして数日。すでに珠の丘を越え、葡萄の国との関所が近づいていた。


 両親の呆れた眼差しが、いったいこれからどうするのか問う折り、とりあえずは山海四方、おもうがままに旅でもして精神を養うをする、と答えたのが数日前のこと。

 つまりはあてどもない傷心旅行なのであったが、なけなしの矜持からそんなことを言うことが出来るわけもなく、ともあれ土地を離れようと考えた末の風来坊であった。 

 とはいえ要は元来、心の大きな、正しくいえば野放図でずぼらな性根を、その誠実な心根の裏に隠し持った男。

 傷心の身なれど、どこか脳天気に、見慣れぬ山やら木々の連なりに満足して、むしろその心は解放の喜色と安堵に満ちているのもそのためだろう。

 

 風の音、虫の音、はた言うべきにも非ず。

 古人の言葉などを思い返しては、耳を澄ませ、はだで感じる空気の、なんともなし独特の心地に、まるで仙人にでもなった気持ちを味わい旅情に耽れば、その日は終わりに近づいて、いつのまにやら日が暮れていることもしばしば。

 別に宿のないことに焦ることもなく、頷いて、笑みなぞをを浮かべて木に登り、そこで目を瞑るような自由気儘が、もとより彼の天性に合致していたのか。旅路にはいささかの不便面倒も感じず、この漂流者の如き暮らしをまずたゆまず楽しんでいる節さえあった。

 そこに彼のよく言えば豪快、悪く言えば考えなしの面が遺憾もなく発揮されているのを見ることは容易かった。

 

 そんな彼も葡萄の国を越えてしばし、いよいよ蟲の国へと入らんと峠を越える辺りに至り、これはまずいのではないか、などと胸中に囁きめいた焦りが、ようやっと聞こえてくる始末。

 甲斐性もなく、不逞ふていの根無し草稼業が板についてはお仕舞、はたしてなにかこの浮き沈みの激しい世においてこれという役目のひとつでも見つけることが先決と、ここに至って思うことの阿呆ぶり。

 とうとう蟲の国で士官を探すこととするも、やうやう胡散臭い流れの浪人一匹、如何いかに腕の覚えあれど、とてもではないが雇われるにあたわず。

 関所近くの街なぞでの仕官の口もすげなく断られて幾日が経つのもむべなるかな。

 結局は場末の居酒屋などで、ちんけな豆と熱燗をちびりとやるが精々ときては、今宵の宿にも困り果てて、さあ如何と思い悩むざまである。

 

 そしてそれはそんな日々の、ある晩のこと。

 道の何処で踏み違えたのか、首をひねりその厳めしくも若々しい顔に、苦悶とも煩悶ともつかぬ色を浮かべて一献、一献、また一献と深酒を繰り返しては思いに耽けて、もの珍しくも悲哀を味わううちに起こった。

 舐めるようにその不甲斐のなさに浸っていると、一時いっとき空耳が、ちらりちらりと耳に、ささやくようにかすかな声音を一聴しては奇なりと思いて、ふと格子こうし窓のぞき、外をうかがえば、そこには童女がいる。

 紅葉もみじくれない染め、かみしも。整った顔形かおかたち。黒のおかっぱ頭が可憐なる童女が、ちょちょいと手招きしてかなめに流し目を送る。

 はてこれは幼い。

 幼いが夜鷹の類かと捨て置けば。

 ちろちろと耳に聞こえるは何事か、「はよ、はよこい」などという文句の繰り返されることいよいよ大きく。

 苛立ちとも好奇心ともつかぬ感情に包まれて、要はふらりと立ち上がり「そこ待て、餓鬼」などと吐き捨てれば、童女を追って店の外へ。

 そして不可思議千万、あなおかしこともありや、その童女、振り袖の赤く紅葉たるをふりふりては遠く。要の見たその姿は、一寸いっすん前、たしかに店の側にありしと思えば、なおさらに奇怪、なんともその姿の遠く路地のかすみゆく路辺ろへんにて、いまは踊りつあった。

 「これは面妖!」とかなめが一驚して目を丸くする間も、

 「はよ、はよこい」と声の響きが鈴鳴すずなりに、童女の姿が回りに回って、まるで独楽とも思えるほど。その合間に童女が笑みを浮かべてこちらに手招き、そしてまた流し目とを繰り返す。

 要、これはいよいよ奇怪面妖、外道あやかし狐狸の類に違わぬとおもえども、酔狂またよしと千鳥足にて追うこととした。

 

 進めば遠く、止まれば近く。

 かえで紋様あでやかなる童女の袖振そでふるを追ううちに、気づけば山間さんかん谷底たにぞこ山渓さんけいほど近く、川のせせらぎ聞こゆるが清澄せいちょうなりし心地。

 緑々(みどりみどり)の幾ばくか青い間に、くらしは夜闇よやみ、映えるはくれない空衣からごろも

 要はされども腹くくり、「鬼には拳、狐には、狸には脚」と意気込んでは山間に目を配る。

 やがて進めど足止まり、童女の側にようやっとのことたどり着いて尋ねる。

 「さては面妖な餓鬼、如何な仕儀もて俺を呼ぶ?」

 「さあさあ、さあさあ! 腕に覚えのありたると見て、我は求む、なれの助け、これも縁と、どうかどうか御願いします。

 この先に大岩あり、我が師がその岩に捕らえられてはや数年。

 重く苦しいと呻く声が、年々高まる始末で。

 我が師のことなれば平気かとも思うたが、ここ数日はいよいよ苦しい苦しいの嘆きも極まれて、夜も寝られぬ大絶唱と見れば、とうとうこりゃ不味いと我思い、なけなしの勇気、振り絞ってはお頼み申す、どうか助けて奉れ!」

 「ふうむ、面妖な、お主はなんだい?」

 「我は狐である。我が師も狐である。狐狸の類といえど師弟もある」

 「ううむ、師弟の情、見事! これも縁、よかろう助けてしんぜようか」


 要の頷き、童女の喜び。

 喜びの声音高く鈴のよう、あまりに嬉しがるために童女、かなめに抱きつき、その耳をば現す。

 風、耳を揺らし、要の腰に腕回す童女、喜んで頬ずり。

 色のつややかに染めたる表着うわぎのこすれるはさらさらと。 


 「我の目に狂いなし! 感謝!」

 「ははあ童女め、申す。よい、遠慮など申すな、さあさあ大岩へと俺を連れてゆけ」

 「ははあ! こいこい!」

 

 そうして山のなかを進むのは要と童女。

 鴉のいびきふくろうの爛々と光る眼差し、童女の袖振り廻して喜び案内あないするさまに、狐の耳、尾、狐火なぞあらわれて辺りを照らして克明なり。

 丸まると膨らむ箒木ははきぎ一団かたまり海星ひとでのようなくちなしの照らされてまた白く、一面の苔むしたる林の間、とびちがいたる狐火の不思議と青いほむら、尻尾揺れる童女の紅色べにいろ小袖こそでをかすかにて露わと。

 

 一刻も進むうち、険しき山渓さんけいいよいよ傾斜増し、そのうちに大岩が見えてくる。

 その偉容、いと猛々しくあって、まるでさざれ石の如く波打つよう。

 かなめは見上げて唖然、おのが背をば大きく抜いて、いわんや童女をば。なんと巨大な石岩であることか。

 その岩、成人男を幾人か縦に並べたるよりもなお巨大。

 

 「おぉ! これは見事な巨岩きょがん!」

 「……助けてくれや」と何処からかかそけし声。

 「おぉ! お師さん、いま助ける」とはわらべの声。

 「…………うぅ、頼む」

 と震えて闇へ消えゆくはかぼそく。

 その声音の主。これが小狐童女の師であろうか。

 その聞こゆるかたまことに岩のもと

 その姿見えず。その命あることの驚嘆すべしほど、要の意気も一時いっときくじかれて不安になるほどの岩の下にて命のある不可思議。

 されども侍に二言なし、この誠心に曇りなきと思い直して咆哮。

 かなめ睥睨へいげいして見ゆるは大岩。

 乱れ乱れた灰褐色。隣の童女も不安に揺れる。

 紅葉もみじ鮮烈せんれつも色在る粗末な小袖あかばかまのふるふると、童女の不安はさにあれど、侍、仁王立ってのち岩へと正対。


 「如何に?」とは童女狐。

 「魔剣必須」と要。

 

 「ほう」


 「我が神技とくと御覧あれ」


 「頼り深いのう!」


 喜色満面で、狐童女あかあかと袖を振りては笑い、その幼気いたいけな顔は薄桃色の歓喜に染まる。稚児めいて軽い手が胸の前にて合わさる姿は可憐も至極という有様。

 要は笑って、のちを抜き構える。

 上段、雷鳴のかたなりて、思い起こすは三条殺し。河原の喧噪。断つは一振り。

 消えるは空気のけばたき音。さざめく森の風に漂う虫の声が、静まっては無へと消える。

 心一つ鏡と化して、振りかぶるは一瞬。沈黙。

 刹那、叫声の響きが、まさに怪鳥の如く。

 力、山を抜きて。要の肉体が数倍に盛り上がったように見える。

 瞬間、雷鳴かみなりが如き断刀だんとう気圧けあつ、たちこめては破れ、大気切り裂いては光放つ。

 

 いざ魔剣――斬岩剣。ここにあり。

 

 立ちこめる煙。

 晴れてより童女が見れば、巨大な岩の見事真っ二つとなる様が、もうもうとして在った。

 その下に伏せる、お師匠を確認して、喜んでかけつける。

 目を瞑りし要も、やがて正気に立ち返りてはそれをおいかけ、そして師匠狐をば見る。


 「ううん、ううん、怖し、おおおお、怖い」

 「されど師匠よ助かった! 感謝すべし」

 「ううん、ううん、怖しは怖し。されどそれも然り、おおなれが妾を助けたり?」

 「うむ、然り」

 「今だ若く見ゆれども、汝、真の名人なり、妾が誉めて使わす、礼を取らそう」

 「……なに些事なれば、かようなことは気にせんでもよろしい」

 「そうはいかぬ! 妾の沽券に関わればなおさらに」と語勢強めては師匠狐言いて立ち上がり、その鮮烈なる赤衣の泥をはたいては落としてのちに、要の眼を睨んで言い継ぐ。

 侍要さむらいかなめもおなごには弱し。

 狐の師匠、その髪の漆黒、まげるでもなくざんばらにて流し、そのさまの闇にまぎれる滝の如く流麗なるは腰の辺りまで落ちて娟容けんよう

 そしてまた、まことにあでやかなるは紅色べにいろの頬、ほのあかき一輪の桜が如きかんざしが、黒く艶めいて夜空のごとき黒髪にて光る。

 まことまこと、これは如何なる貴人あでびとか。

 そしていかなる艶美うつくしき眼差し。いかなる艶容なめらななる指先。いかなる妖美つやめいた白きはだえ

 その声音の鈴鳴すずなるさま、その笑みは月の如し、はだえは浜の真砂を思わせて清く、それらを覆ううちきの重ねた裾濃すそごの色彩、過去に見ゆることの如何ばかりと思ゆるほどの美しさ。

 泥にまみれてなお豊かなその彩りをもて、振り袖代わりに崩して身に帯び、その師、そこに厳然とあれり。

 

 「おお、なんじ、如何なる狐なりか」と要も思わずしてつい問えば、

 「は! 妾の名こそ聞け、蟲の国、第二の狐。琥珀翠玉の王。紅玉の姫、紅瞳こうがん之大僧正とは妾のことなり!」と狐、見栄きるように応える。


 「……ううむ、知らぬ」とは正直な男の答え

 

 「…………」

 「師匠、師匠! ああどうして肩を落とす」

 「汝、どこの出であるか」

 「ひんがしみやこ

 「おお、そうじゃろう!そうじゃろう! この地に生まれし者ならば、如何な阿呆ともいえ、妾の名の知らぬことなどありえぬわ!」

 「おお、師匠、師匠の言の通りじゃ」

 「左様で」とは要の言葉。

 「……左様とは、冷たいのう。とまれ妾は礼をせねばならぬ、汝の望みを言え」

 「言え! 言え!」

 紅瞳こうがんを名乗りし狐が、腕を組み足りて、その美貌に自信を滲ませる。

 その胸を張り、その顎をあげ、その眼差しと鼻を意気揚々とするさまの、何処か持ち前の美貌にそぐわない感じが間抜けさを覚えさせる。

 童女のまた向日葵の如き微笑みで、くるりくるりと回りては躑躅つつじの茂るに突っ込んでは転ぶ。また飛び上がっては笑い、師匠狐の落葉らくよう紋様もんよう赤衣あかごろもの袖を引いてはまた笑い、ときに要の粗末な衣へと飛びついてはまたまた笑う。

 山間やまあいに沈黙。風来たりて夜も更けることを思い、要はさむうなりし体をもみほぐしては言いたり。

 「礼など要らぬ、俺も礼を欲したわけではない」

 「……妾の面目もある」

 「知らぬ」

 「汝、妾の礼を受け取れぬと言うのか!?」

 「いらぬものはいらぬ」

 「くぅ、汝、奇怪なるぞ。妾は汝に尽くしてしんぜるぞ?

 如何様なる礼も思いのままなりて、如何様なる仕儀もしてしんぜるぞ!?」

 「いらぬものはいらぬ!」

 「いらぬ!」とは童女狐の追従なりて、童女笑い、狐耳揺らしてまた笑う。

 「妾の矜持をなんとこころえるか!」

 と師匠狐言い立てる。ついで拳骨を童女の頭へと落として、地団駄を踏む。

 するうちにとうとう尾がはみ出して、その本数は七なり。風になびいた金毛こんもうが、夜山よやまへと飛んでは輝き浮かぶ、月の光、艶やかに照らすは揺れる尾より飛び立つ狐毛きつねげ

 顔を真っ赤に、狐師匠は怒りてキーキーと猿の如く喚き、やがては見事な三角の耳をば現したりて、その耳を垂らす。

 

 「まことか、まことにいらんのか?」

 「くどい!」

 「うぅ、嘘じゃ! なれは嘘をついとる!」

 「師匠、師匠、我思うが、もはや恥ずかしいぞ」

 「何がじゃ?」

 「尾じゃ、耳じゃ」

 「…………っ!?」

 

 カッカッと蒸気の沸き出すが様を彷彿と、慌てて尾と耳へと手が伸びて、狐は絶句。

 要も苦く笑い、狐はなお真っ赤。

 己が振り袖のごとく深紅に頬を染めたりて絶句。しばし絶句。

 狐、ぷるぷると震えに震えて顔を俯かせてことばなし、やがて最後には涙が。

 つぶりつぶりと涙の、雨粒のように、次第に引力に耐え切れぬと頬を伝い落ちる。麗人の肌に跡を残して落ちる水粒に、要も気まずげにするしかない。

 童女狐などはいたたまれず、彼方を見て口笛を吹いている。

 とんびの風切る音響く、と思えば、なんともはや師匠狐の嗚咽とくれば。だめ押し。

 如何にするべしこの空気と、要が童女を伺い。

 童女は、要を見やりて睨み、そしてこうべを振りては沈黙する。

 いつまでもこうしてはいられないと、要、咳の一つをして、言へり。


 「……あ、ああ、折角の言葉、有り難し、そこまでの誠意、受け取らぬが恥と心得り、俺の願いを聞いてくれ」

 「…………すんすん、すん、なんじゃいなんじゃい阿呆が、すん、すんすん」


 師狐の頭より耳が垂れ、その麗容はすでに歪んで、真っ赤な袖に伏せられているために、くぐもって聞き取りにくい。七つ尾は垂れて、ふるふると風に揺れるばかり。その悲しむ姿は犬の如し。

 童女狐がちかづき、その幼き手、師の腰に当てて上下にさする。

  要も必死に、

 「頼む頼む、俺が阿呆だった。礼は受け取るのが物の道理なり、まことに至極、まことにかくのごとし、まことにその言の正しきは人倫の根本なり」と言い継いでやっと、

 「……すん、まことか? すん……すん……」

 「まことなり、なぁ子ぎつねよ」

 「まことまこと! 本当じゃ!」

 「……すん、……すん」

 「俺の礼儀知らずよ、板東の無骨者にてどうか許されたし」


 と要がこうべを伏せて、謝りて数瞬、何かをすする音、拭き取る音してのちに声がある。


 「ま、まことじゃな?」

 

 要は、頭を垂れたまま、言う。 


 「天地神明に誓ってまこと」

 「……それでよい、それでよいのじゃ、頭を上げよ」

 「あげよ、あげよー!」

 

 そして要が頭を上げて、そこに見るの狐女が満面の笑み、稚児を思わせて眉下の歪み、目隅に赤みの残る顔だった。

 師匠狐の取り繕いも叶わず、何処か純真なりて綺麗な顔に思うのは傾げた顔に浮かぶ、素朴真実の印象のためだろうか。


 斯様な美人が嘆き涙して、その跡強く残りて消えぬ。

 

 要の嘆息して思うに。


 瑕疵かし一つなき笑みよりも、この赤み残りて、何処か頼りなき笑みの方が可憐に思ゆる。

 経緯の大概に間抜けであることは失笑に値するが、と。


 言えばその狐の激怒するのが、想像のまた容易く。要はそれを内心に留めた。

 





 4


 要は気づけば穴蔵あなぐらにいる。

 一面の苔にしたたりりし水音みなおと、敷かれた茣蓙(ござ)は三つ。

 心細く灯台とうだいより小さなの風に揺れる中。

 傾城けいせいの女、そしていやに可憐な童女と面を向ける。

 そも、如何な天意のために、このような次第になったかと思うが、ここまで至れば、毒も食らわば皿までと要も覚悟を決めた。


 「此処がお主の住処か? ……虫の国、第二の狐とはいえ、住処はさほどでもないと見える」

 などと要が沈黙を破って漏らせば、狐の師は痛いところを突かれたと腹を揺すっては、その髪も左右に震わす。

 怪訝に見る要に、こちらもまた見事な黒い髪を束ねた童女がその沈黙を補う。

 「ちがわい。ここは仮住まいなるぞ」

 「……ほう、であったか」

 「本来ならば、それは大きく、それは広く、それは見事な寝殿造の館がある!」

 

 ひとみの輝いて言い立てる子ぎつねが、耳と尾を隠した師よりも素直に、尾と耳をふるふると獣のように揺らした。

 その言葉に納得して、要はとりあえず頷く。

 そして沸き上がるのは疑問だ。

 

 「では、なぜこのような所で? この洞穴の整理されている様は、此処に暮らして長く見える」

 「……そ、それはじゃな」とは師狐の口ごもり。

 いまだ幼い小童狐、容赦なく、言い継いで曰く。

 「我らが住処たる迷い家への鍵を落としたのだ!」

 「……むう」と要が言い立てる。

 見れば師の狐、顔を俯かせ、いつのまにか正座して震える。

 それに気づかぬ要が、小童にさらに物問う。

 

 「お主が落としたのかわらべ?」

 「……」これはしまった、と童狐は耳尾じびを硬直。

 一度師を見てそして再び要を見上げては、ためらいがちに頷く。

 その隣では紅瞳之大僧正を名乗る狐の震えが大きくなりゆくさまが、寒さに震える鼠のように見える。 

 要が、それを横目に問いを重ねる。

 「お主が落としたのか童?」

 頷くのは子ぎつね。

 「もしやすると」

 ぴくりと震えて師狐。

 「そこな狐が落としたのではあるまいか?」

 「ち、ちがう、我じゃ、我が迷い家の鍵を落としたのじゃ、三六〇〇回の月賦払いでうた迷い家の鍵をなくしたのは師匠でなく我じゃ!」

 そこで要は、じろりと視線を戻して、俯き震える狐を見る。

 狐の尻尾が飛び出して、七つ尾の揺れては震えるさまは、まことに居たたまれなく、ほのかに灯火の揺れるなか照らす肌の白も、いまはまた朱く染まる。

 まずいことを言ったと、子ぎつねも師狐を見て、しばしの沈黙が辺りを包んだ。

 時間外れの蝉のひと鳴き、もはやときに至りし時分である。

 穴蔵には瞬くような灯火の光りのほかに、なにもなく静かであった。

  

 「……本当は、妾じゃ」 

 俯いた狐の顔。 

 絶世の麗姿うるわしすがたを誇るその顔を伏せて、言葉がぽつんと水の溜まりに落ちた小石の如く響いた。


 要は顔を外して咳を一つ。

 童女も言葉なく沈痛そうな面持ちだ。

 

 「ほ、本当は妾が鍵を落としたのじゃ!」

 「もういい」

 「そうじゃ、まだ支払いが残っておるのに、家に帰れなくなった馬鹿は妾じゃ!」

 「……もういい」

 「笑え、笑えばよかろう! 二人とも妾を笑え!」

 

 乾いた笑いが辺りにためらいがちに広がって、夜に木霊した。

 






 5


 ようやく乱れた場の空気も取り繕えた頃合。

 顔に朱の名残りあれども、どうにかようようと気をとりなおした師母狐の声が高らかに響いた。


 「で、なれの望みの礼はなんじゃ?」

 「……うむ、そうだな」

 「なんじゃ? なんじゃ?」と小狐が、鈴虫のように心地よい声音で言う。

 小童こわっぱは騒ぎつつ、胴と頭を揺すりたてて落ち着きない。

 その師たる紅瞳も期待を込めてか、ぐっ、とからだを前のめりにして落ち着きないのは一様いちようだった。

 たちまちのうちに二つ尾と、七つ尾、大小しめて九つの金毛が現れては揺れるのが秋口のすすきめく。

 かなめはひしと期待を受け止めつつも唸って腕なぞを組む。

 そも礼などといっても急に思い浮かぶものでもなく、やがては貧乏揺する胡座に思い悩むさまが伺える。

 その沈黙をいかに受け取ったか、狐の師がしだいに躰の揺れを納めるにつれて、だんだんと目元を潤ませて上目遣いに要を睨む。

 

 「……な、なんじゃい、ま、まさか嘘、だったのかえ?」とつぶやく段に至ってはすでに涙の落ちるのが秒読みの段階だ。

 要が慌てて口を開く。

 寄る年波と女のなみだには勝てぬという道理もある。

 とはいえその内心に望みなどある筈もなく、急ごしらえに適当な放言をするしかない。

 

 「よ、用立てを頼みつかまつる!」

 「……よ、用立てかえ?」

 と、どうにか涙の気配が引っ込んだ師狐は唸り、そしてその師を子ぎつねが見守る。

 慌てた要は、己の放言をば天の助けと考えて言葉を継いで曰く。

 

 「俺の願いは仕官……そう仕官のための用立てだ」

 「仕官とは……これはしたり、そなた浪人かえ?」

 「うむ」と要が胸を張りて堂々と言う。

 

 ここに至って狐も満面の笑みを返す。

 悪企みの女怪にょかいを思わせて凄惨な笑みに、要も一瞬どきりと心を騒がす。

 「わかりやすい願いじゃな、やはり男たるもの栄達を望んでこそと?」

 と幾度か頷いてあとに、狐の瞳を閉じて思案するさまは軍師かと思うほど。

 「ふふふ、いいぞ妾の力、存分に発揮してやろう。ゆくゆくは老中か殿様か」

 「俺は仕官の用立てを頼んだのであって、そこまでは頼んでおらぬ」  と慌てたような要の言葉。

 

 要は、見くびってもらっては困ると怒気さえも滲ませて真顔だ。

 狐は顔をかしげると、その黒真珠が如き髪の星海せいかいが煌めいて、ほむらに照らされては意を得ぬと物問いたげに揺れた。

 子ぎつねは、茣蓙に座ったまま二人の顔を彷徨うように見ている。

 

 「つまり、どういうことなのじゃ」

 「栄達を望むにしても、俺は、俺の力で上にいかねば意味がない」

 「呆れた男じゃ、初心うぶなことを言いおってからに」

 「なんと言われようが、この意志は変わらぬ、とはいえこのなりでは仕官もままならぬゆえにな」

 「……あくまでも用立てと申すのは文字通り、そのころもなりなんなりを用立てて欲しいとのことかえ?」

 「然り」 

 

 不満げにして、傾城の美人はため息を。

 その意はつまらぬ、といったところか、目前の男のいかに素直にして純真なることか。

 紅瞳は隣の小童狐を見やりてのちに、改めて要へと目を移す。


 「……よかろう、かような仕儀、妾の力をもってすれば赤子をひねるがごとく容易きこと……お主の衣、かみしも肩衣かたぎぬ、袴に紋付き小袖、妾の力をもって用立てよう」

 狐の言葉に要は大きく頷く。

 人外の力を借りることに抵抗はあれど、かように最低限のことにのみ留まって、そして仕官に望めば、これは卑怯ではないと己を誤魔化す。

 単純にしてどことなく清廉の気風をもった要は、かように面倒な心理を持った男であった。

 されど紅瞳の狐、そこまで言っても、なおその言葉に納得いかないと頬を膨らませては稚児めいた不満足の表しよう。

 色っぽい面貌が童女のように可愛らしく恨めしげに要を睨む。

 朴念仁と噂される要をしてもどきまぎと頬をうっすら赤染まりにするほどのあでなるさまだ。


 「折角の礼なのじゃぞ、この妾の礼なのじゃぞ? 本当にその程度でよいのかえ?」

 「よいのか、よいのかー?」と小狐が声の続く。

 茣蓙から身を乗り出しては膨れている狐のなんと面倒なことか。

 要はなぜこのようなことになっているのか、またしても思い悩んで息を吐く。

 

 「よいと言ったらよいのだ」

 「頑なな奴め……」

 「かたくなめ」

 言って狐は立ち上がり波打つは振り袖。

 棚引くさまに赤が重なった衣また衣を扇ぐようにして仁王立ち。

 慌てて茣蓙より追従して立った小狐は脚が痺れたのか転びかけ、慌てて要が抱き留める。

 柔らかで暖か、人に化けている子ぎつねの僅かに獣めいた匂いと微かな衣より伝わる体温を感じながらに、要は仁王立つ化け狐を見やる。

 「あい分かった。それがなれの求める礼とあらば、この紅瞳こうがん、蟲之国第二之狐の名にかけて、汝を何処の役所に出しても恥ずかしゅうない盛装に変じめよう!」

 「ほどほどでよいのだが」

 「こうなれば一刻の猶予もない。さあなれは妾に任せて大船に乗ったつもりで身を任せるがよかろう」

 「よかろう!」と小狐の、背を要に預けつつ腕を振り立てて輪唱しつつは向日葵の笑みのあどけなさ。

 すでにこれは泥船なのではないか、などと沈痛に顔をゆがめながらも、まあどうにかなる、などと気を取り直す要の噐も野放図に大きく。

 辺りは盛り、穴蔵あなぐらに笑み、灯火に風波かざなみ

 そしてときの更けて夜の深まりぬあと、朝来たり。






 6




 太陽頂点に来たりなば、要、出仕す。

 それは見事なはなだ基調の肩衣かたぎぬ橡色つるばみいろ(;団栗色)の長羽織にて、風流な渋み醸す若武者そのもの。

 ひんがしにおいてもそうはおらぬその男前に目を止めて、誰しもの眼差しを奪うようなその衣装すがた

 流麗な装いに覗くは紋付き小袖のにぶ色だ。

 灰を思わせる色合に、さりげなく家紋を載せて薫るはほのかなかぶきの味わい。

 

 渋い色調がその顔より木訥ぼくとつさを追い出しては残ったのは眼光鋭く無骨な侍としての威厳。

 およそ一九の若者には見えぬ世慣れた風貌は凄惨でさえあり、己のかつて近衛にあることを書状によって説明するも容易い。

 面立ち鋭いその男の歩くさまに年頃の娘ばかりか、人妻年増も淡く頬などを色づかせて騒然。

 ひんがしより蟲之国へすわ板東一の男前現るか?と街は話題にもちきりとなる。


 ここは柵の町――葡萄の国との関所があり狐と問答をした――ではなく、そこより数十里を行った湖のほとりにある蟲之国第三の街。

 人呼んで氷神湖ひょうじんこという。

 蟲之国の東域を監視せしめる要所で、要の出仕する大役所があった。


 人のさざめきに、居心地の悪しきを感じつつも要は背を伸ばして進む。

 次第次第に近づくは巨大な館。

 横に広く縦に二階ほどの偉容、湖を見下ろすように丘にありて厳然と。

 ふと視界を外せば、叢雲むらくもの流れる空の一面青きに、館の反対にある丘にはほんに巨大な社鳥居やしろとりいあかなりて猛々しく。

 神湖しんこを望む両の丘もすでに夏の始まりか、緑の化粧の揚々と。

 青に映えし赤紅あかくれないの鳥居、宏壮こうそうなりて偉容の匂わす群青色の館のまた立派。なこと 


 されども、みやこの王城に比べれば月とすっぽん。

 出仕することの緊張さえも東王おうより面会を仰せつかりし近衛任官の儀に比ぶれば些末なこと。

 要、そう断じて、丘の頂に座する屋敷を睨んでむ。



 

 「よう来た、よう来たの」

 「はっ、この度は不肖の一浪人に拝謁を賜りしこと、まことにありがたく」

 「よいよい、経歴は聞いておる。その身なり、その顔つき、その立ち振る舞い、その座して礼するかたの見事なさまよ。まことに近衛に相応しい」

 「は、ははぁ、有り難きお言葉なれど。それは過去のことなれば」

 

 畳敷き数十畳の大広間ありて、幽玄なる筆致の見事な掛け軸巻物が目に入るさまに、なんとも言えぬ侘びある。

 要はこうべれ伏して、刺草いらくさかおりなぞを鼻にいれてはべる。

 面をあげれば、そこには髪を冠下かんむりしたに括った齢四十よわいしじゅうを越えたであろう中年男。

 濃い青の小袖と半袴はんばかま、紺色の肩衣かたぎぬには蟲之国の紋様たる雀蜂。

 落ち着いた笑みを浮かべては、遙かとしの下なる要にも気安く。

 外の庭よりホトトギスの鳴いてある。

 

 「そう堅くなるでない。お主にはさっそく明日から、衛士たちに稽古をつけてもらうでな」

 「まこと有り難き沙汰なれば」 


 中年男そうして扇を胸元よりさっと取り出しては扇いで庭を見る。

 要も追って庭を見れば、そこには緑の青く広い。

 杜若かきつばたあでなる様に、丸く広い池には磨かれた白い石の点々と。

 池の奥一面にあおい菖蒲あやめ葛篭つづら

 また一方にははちすの淡く桃色にて、牡丹の柔らかな薄紅うすべに、ところどころには末摘花すえつむはなの黄赤色。

 庭師の苦労いかばかりか、かなめの察するに池の形を氷神湖に見立てている。

 そのことを伝えれば、

 「ほう、それに気づくとは流石、武者とはいえどもひんがし者はひと味違う」

 「それは買い被りというもので、たまたま園芸に些少の心得あらばのこと、いやはや見事な庭」

 「ほうほう、若いのに物の分かる奴じゃ」

 などと喜色満面、大いに気をよくした中年男は要を見て笑む。

 要また平伏して黙する。

 そして中年男の笑うが声を聞いてしばし、宏壮こうそうふすま並ぶ部屋間へやまに、ふと沈黙落ちて無音の続く。

 要、怪訝。

 ちらりと顔を相手に巡らせて見るに、そこにあるのは喫驚きっきょうの顔なりて、中年男の皺、いかばかりか歪んで。

 要、慌てて己を見んとすれば、落ち葉、目に留まる。

 そは枯れ葉、あるいは青緑じょうりょくの若葉、そして色づいた銀杏いちょうの葉などが散乱しておのが周りに広がりてあり。

 

 なんたることか、先述した美しきころもの影も形もなく、あるのは襤褸ぼろ寸前の渋い青の着流しのみ。

 一面に広がる葉また葉の中心にてみやこより来たりし男の衣服ころも、葉と変じて散らばるさまありて。

 中年男の一驚も当然のこととして、さてやその驚きの如何ばかりか。

 要、咄嗟に腰を上げては、はや庭へと駆け出して。中年男、正気に返れば「者ども、であえ、であえ!」との叫び響く。

 かなめすかさず庭を荒らすように駆けること一瞬にして塀などにたどり着き、そして一っ飛び。

 後背うしろからの声なぞに足を止めることなく、そのままに風の如く走って坂を下りゆくさまに一切淀みなく。

 はや脱兎の如き逃げ足の見事なこと。

 

 その面立ちには溢れんばかりの怒り。






 


 ところ転じて洞穴。

 昨晩の一仕事にだれた様子で美女が一人、むしろに横になってある。

 わらべが何かをごりごりと小鉢にてかき混ぜる音のみ響く。

 

 「うむぅ、ねむいのう」と欠伸まじりに漏らして長閑のどか

 子ぎつね娘の仕事なぞを横目に腰などに手を当てるのは、数年の石の重み故か。

 「どうしたお師さん、薬は作らなくともよいのか」

 「うむ、妾はどうも腰が痛くてな、しばし暇であろうこと、しばらく休みを…」と言ったそばから足音の猛然と洞穴ほらあなに近づく音あり。


 身構えるよりもはやく、踊り込むのは一人の青年。

 精悍ともいえ、あるいはどこか柔和な印象の男が、いまは眉をつり上げて、こめかみなぞをぴくぴくと怒気に満ちて、狐を射るが如き凄惨なまなざし。

 そして男の狐を見て一声。

 

 「狐ぇ!!」との叫び。

 これには小狐童女も小鉢を取り落として振り返り、また寝たままその髪をざんばらりと地面に広げた狐の美人も素っ頓狂に飛び上がる。

 

 「な、なんじゃ!?」

 「うぅ、声おおきいぞな」

 「お前、わざとやったのではなかろうな!! ああん!?」と矢継ぎ早に怒声。

 狐も意の飲み込めぬなりに、下手したてに出て上目遣い。

 「な、なんのことじゃ?」

 「お前の用立てのことのほかあるまいよ!!」

 「は、はぁ」

 と狐は心外と、そのまま目前の男を見据える。

 如何にもとぼけた狐の様子、腹に据えかねるとばかりに腰に差した長竿へと手をやる要は憤懣やるかたなし。

 

 「ま、待つのじゃ、話せばわかる」

 「問答無用!」

 と惨劇の訪れようかと思う間に、子ぎつねが横より要の腰へとしっかと抱きついて止める。

 「や、やめるのだ、我には理由がわからんが、刃傷沙汰はやめよ!」とは子ぎつねの必死の制止。

 ぷるぷると震えてまたもや涙目の師が咄嗟に頭を抱えるのを見ての懸命なる声の音。

 わらべも怯えに震えるが、それでも、と腰に小さな手を回してぴたりと健気に師を守ろうという心意気。


 「む」と要も毒気を抜かれて唸り、刀の柄から手を離す。

 師狐紅瞳もゆっくりと要へと顔上げて、命の助かったを知る。

 知ったのち、己の幻術なりなんなりで逃げればよかろうとあらためて気づく。

 「す、少し漏れてしまったのじゃ」と何やらしからぬ文句をこぼしつつ立ち上がりて、腕を構えては狐火などを現して、ようやっとのことで要へと相対す。

 要はすでに直立して、怒りも幾分納めたさま。

 子ぎつねなぞはほっと息を吐いて師の傍へと近づく。

 「いきなりの無礼、汝はなんのつもりか!」と紅瞳の僅かに毛の逆立てた調子はまさに異形。

 願わくば、その偉容をもう幾ばくか早く見たかったもの。

 要はもはや溜め息を隠さず、まことにどうしようもない物を見る仕方で狐に目をやる。

 

 「お前は、本当に、蟲之国第二の狐なのか?」

 「そうじゃ、汝のその態度、ひどく不作法であると知れ」

 「馬鹿狐だったか……もうよい」

 と取り合うことのない要の様子に紅瞳も激するが如く。

 しかれどもすでに要は踵を返して背を見せるのみ。

 

 「ま、待て!」

 「……師匠、我おもうのだが、そこな侍のころもを見るに」

 「なんのことじゃ! …………うん? お主、……我の用立てた衣はどうした」などと暢気。

 

 その調子に要は顔を後ろへ、ひどく色のない調子、疲れ冷めた声音。

「お前の用立てか? 全部木っ葉になったよ」

「うん……うん?」

「新たに上司となるはずだった者の前にてな、誠に見事な用立てよ」

 

 そして頭を戻し、そのまま穴蔵の出口より緑界りょっかいひかり満ちる外へと足を向けるさまのすたすたと。

 「ま、待つのじゃ!」

 「うぉっぷ」

 とは突然の背よりきた衝撃に腹からうめく要。

 見れば紅瞳狐、その闇夜の海が如く広がる漆黒の髪より、これまた見事な三角耳を突き出して、必死と要の腰にすがりつく。


 「ええい、離してくれ!」

 「ち、違うのじゃ、これが本来の妾の力というわけでなくて、お、おそらくしばし岩に敷かれていたせいでな……!」

 「言い訳なぞ聞きたくもない、離せっ、くっ、無駄に力の強い」

 「わざとじゃないのじゃ、すまぬ」

 「もうよい、よいから、こんな阿呆な狐に頼った俺が馬鹿だったのだ」

 「そんなヒドイことを言うのではないぞな!」

 と珍妙な押し問答が出口近辺にてしばしある。呆れたように小狐のそれを見る姿、遠くから馬鹿にしたような蝉の時雨響いてある中に。



 

 「正直、すまんかったのじゃ」

 「すまんかった、すまんかった!」

 「……もうよいと言っておるというに」

 「いやはや、此処はまた詫びと、そしてしっかと礼の一つをやり直さずしては狐の名折れである」

 「……もうまことにやめてくれぬか」 

 その沈痛な響きに、うっ、と女狐の呻く。

 沈黙ののち、昨晩と同じ形で座る三者の間を流るる空気の重くなんとも珍妙なこと、また珍妙なこと。

 幾重にも赤味の重ねた、目にもあやなる絢爛の衣を震わせて、しょげた狐を余所に、小狐はどこからか湯飲みなぞ取り出して茶などを出すが、その出涸らしかと思うほどの薄きこと一周して可笑おかしい。

 「……こうなればこの躰で払うしか」

 「……よしてくれ」

 「いや遠慮なぞいらぬ」

 「……遠慮ではないのだが」

 「お主、歳はいくつかえ?」

 「……今年十九になる」

 「ほっほ、若いのう」

 「わかい、わかい」と小狐、とたんに目を輝かせて要を見る。

 

 すでに席を立ちたいが、なんとなしに空気がそれを許さず、要は出涸らしをちょびりと口へ。

 外より野鳥の声、穴に立ちこめる土の匂い、粗末なこうの匂うなかでその甘い声を紅瞳が積み重ね。


 「十九なぞ、若気も若気、もはや獣も同然よ」と自信に満ちた調子で、急に婀娜あだな目つきでぐいと身を寄せてくる。

 そのあやに重ねたうちき振り袖がおもむろに乱れては、胸元が白く匂い立つようにちらちらと見える。

 甘ったるい声と、重く脳へと染み着くような薫りのむんと濃く膨れ上がるなか、要は思わず腰を引いて逃げる。 

 「ぬふふ、わかる、わかるぞ、お主童貞じゃろう?」

 「ぬ、ぬぐっ」

 「ふふふ、この妾を抱けるのじゃぞ、なあに初めてでも百戦錬磨の妾が優しく導いてやろうぞ」

 「お師さんも大して経験のない処女おとめじゃがな」

 とぼそりと小狐。

 またもや沈黙、要が狐を改めて見ればそのすべらかなはだえにふつふつと赤の滲む。

 

 「お、お主台無しじゃぞ!?」

 「お師さん、もはや何もかも最初から台無しじゃと我には思えるのだがの」

 「……くっ、辛辣な奴め。ぐ、ぐぬぬ、どうじゃ、ほれ妾のこの大人の色香満ちる肉体を謳歌せんかえ?」

 そうして流し目とともに、袖より脇を、胸元を、首筋のあこさまをちらちらと見せるものの、すでに空気に満ちた霊力はどこぞへ。

 要には狐の精一杯といったていに不器用さの覗けてしまい、呆れと優しさの混じった気持ちの先に立つ有様。

 もはやこれまでと、要は立ち上がって狐二匹を見下ろす。


 「……あまり、長居はできぬでな、もう行くよ」

 「ま、待つのじゃ」

 「まつのじゃ」

 首を左右に振りて一拍いっぱく、要は嘆息たんそくする。


 「すでに追っ手は撒いたとはいえ、もはや俺の罪人であるに変わらんのだ。有り難きお礼に涙の出そうなほどだ。さっさと旅に出て、味噌の国へと逃げることにするよ」

 

 そして狐が追いすがる前にと足早に、さっさと穴蔵から脱出して走り出す。

 みるみるうちに穴を後ろに要は今後のことを憂うが、結局なんとかなると信じるほかに結論はでなかった。




 そして数刻後、さて要のすでに表街道を歩くなぞをできる身分でなく。

 山裾から山嶺さんれいの麓を転々と、木々の重なりて茂る山界に延びる僅かな獣道を歩くこと刻を重ねて。

 道中に人家じんかのある景色なぞも見えず。緑続くなか。数刻前に関所付近の山村にて握らせたいいと竹筒に汲んだ水のみを友として、空木うつぎの白く並んだ中を歩いてはときにとらつぐみの声を聞く。


 これではまことに三界坊も同然とそろそろ夕闇の近づいて、宵の時分と見れば、どこぞ樹上にて一宿を得ようと思案。

 

 そのとき、歩き始めてはや何度めか、草むらのごそごそと、何者かの枝を踏み折る音。

 もはや隠しおおせていると自惚られても困る。と胸中にて呆れつつ、要は小石を拾って震えた茂みへとそれを投じる。


 すると、

 「きゃんっ!」

 「お師さん!?」

 と甲高い声。


 どこか透き通ったその声も、もはや聞き飽きたとばかりに耳馴染み。

 好きで耳に馴染んだわけでもなく、とはいえこれ以上こそこそとされるのも気分のよいことではないと、要は茂みへと足を進める。


 「お前たち、いったいなんだんだ」

 「ひぇっ、な、なんじゃい、やるのか、やるのかえ?」と混乱しつつ頭を押さえる狐は涙目で、耳がぴんと突き立ってそわそわと。

 見目こそは麗しい赤い目をした狐の豊かにくれなう振り袖すがた。

 その隣にはだいだいの混じった紅葉あかばの小袖に身を包んだ、要の腰ほどに頭が来るような童子が目線の、要と師をゆきつもどりつする姿。


 「お師さん、ばれてしまったようじゃの」

 「な、なんじゃと!? かように完璧なる隠形おんぎょうを見破るとは……こやつ、やはりただ者ではないのう」

 「あれで隠し通せていると思っていたのか……!」


 底値を越して、要の中では底底そこそこ値を付けるその化け狐が、ようやっと気を取り戻して、そそくさと取り繕っては胸を張り、その赤いうるわしが一面の緑に浮き上がる。

 なぜこやつは、ここまで自信に満ちているのか、などと要の心を知ってか知らずか、狐の女は堂々と言い足した。


 「ふふふ、ばれてしまってはもはや隠す意味もなし、妾はお主についてゆく、そしていつか困ったお主に礼と詫びを熨斗付けてくれてやるのじゃ!」

 「やるのじゃ!」

 「……勘弁してくれ」

 

 街道を迂回しての山路やまじで、味噌の国までは長い。

 そのなかを斯様かように抜けた阿呆狐とその弟子の童女狐に尾行されることを思い、身震いする心地、背筋の寒くなるのが止められない。

 もはや斬り捨てるか、と一瞬真剣に考えるも、向かう狐のいやに自信満々の笑みがその玲瓏ともいえる整った顔に浮かぶの見るにつけ、それもまたやりすぎだと思い直す。

 かくなるうえは腹を括って、できることならば今日のような失態のなきことを祈って、要は告げた。

 

 「要山三郎だ」

 「……ぬ?」

 「我は朱麻あかまじゃ」とはその意を汲んだ小狐の声。

 そして要はそれきりと、辺りの樹幹を睨み、空蝉のそこにしがみつく姿三つ四つを見ては、またぐるり。

 木々の合間に広がるような少しの広がりを見つけると、そこに歩いていく。

 「ほら狐、火くらいは起こせるのだろう」

 「……っ、と、当然じゃ、妾が狐火の真価、旧都の大文字焼きが如し」

 「火事なんか起こしたらお前を捌いて鍋にするからな」

 「ば、馬鹿にするでない」

 「なんだったら、火を起こすのが礼でも詫びでもいいぞ」

 「妾の礼と詫びは、かような些細なことでは足りぬからな、もっと大いなること、覚悟しておくのじゃぞ」

 「慄然ぞっとしないな」

 

 言いつつ紅瞳は笑う。

 対する要はその若さにも関わらずめっきり疲れて老け込んだ様子。

 小狐はすでに要の傍で何かをごそごそと。

 道中摘んだらしい野草や果実を取り出しては寝床に木の葉並べての支度。

 大狐も、遅れてはならぬと傍に近づき。

 いよいよ西の彼方へと赤濡れの様相広がりはじめて夜が近しい。


 かくして要山三郎と、紅瞳、朱間、ひょうげたことから出来た旅の道連れ。

 さてさて始まるは奇妙な珍道中。この日の決断こそが要の数奇な人生を決めて、はたしてこれが始まりの、その顛末であった。






ちなみに第三話からは



人間以上の不具たちの奇怪


蛇と蟹と川流れと山椒魚


鏡の洞窟とドッペルゲンガーと狸


禅的尼僧と梟と鳥かごと説破問答


一睡の栄華、邯鄲の夢、胡蝶の夢、ディック的幻想の村


ボルヘス文庫とアレフの輝くアレクサンドリア


猫又とアンドロメダと蛇の頭と『賢者』の梟 


花の精、木の葉の精、そして鬼女たちのアマゾネス村


浅間の伝説とプロメテウスと朱麻


ぽんぽこたぬきと武士の一分


西瓜糖に溢れた桃源郷の風景 怠けものたちの横たわる麻薬の輝く


さらさら越えと天にも昇る竜の川と雪鬼イエティたちとの戦い


九十九神と羽衣と天女の一件


立川流と役の角と修験者と天狗飛翔


川に沿っては鳥の流れに烏の二羽三羽と泉の生首をとりかえすのことにて世界烏会議


味噌の国にて狐と嫁入りと最後までのとほほと大脱走



という感じのネタを用意してあった

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