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触れてはいけない真実

三年という時間は、人を変える。

 少なくとも、私はそうだった。

「神崎、次の現場、行けるか」

「はい、大丈夫です」

 即答する声は、もう震えない。

 新人刑事だった頃の私は、現場に出るたび、必死で先輩の背中を追いかけていた。

 今はもう、自分の判断で動くことも増えた。

 失敗もしたし、怖い思いもした。

 何度も、辞めたいと思った。

 それでも、ここに立っている。

 理由は、ひとつしかない。

 私は、まだ探しているからだ。

 霧島悠真を。

 あの夜から、三年。

 事件の後、彼は完全に姿を消した。

 公式には、指名手配。

 非公式には、もう見つからないだろうという扱い。

 それでも私は、諦めなかった。

 だって、あの夜、確かに感じた。

 銃口を向けられても、

 突き放されても、

 あの人は、生きているって。

 生きて、どこかで、まだ戦っているって。

 それだけが、私を立たせていた。

 探している限り、私は前に進める。

 探す理由がある限り、私は折れない。

 もし、それすら無くなったら。

 私はきっと、立っていられなくなる。

 だから私は、事件を追う。

 表向きは、刑事として。

 裏では、個人的に。

 使われた武器の流通経路。

 裏社会の資金の動き。

 不自然に消える関係者。

 そのどこかに、必ず、彼の痕跡があると信じて。

「……また、似てる」

 資料を見つめながら、無意識に呟く。

 最近増えてきた、妙に手際のいい制圧事件。

 無駄な殺しはなく、必要な相手だけが消えている。

 そして、決まって証拠は最小限。

 兄の事件。

 そして、悠真が消えた夜。

 あの時と、同じ匂いがした。

「……また、動いてる」

 胸の奥が、ざわつく。

 これは偶然じゃない。

 誰かが、裏で整理を始めている。

 それが誰なのか、私はまだ知らない。

 でも、ひとつだけ、確信している。

 この流れの先に、

 必ず、悠真がいる。

 夜、部屋に戻ると、私は習慣みたいにスマホを開く。

 連絡先の一番上。

 もう三年、繋がらない番号。

 それでも、消せなかった。

「……生きてるでしょ」

 誰にともなく、呟く。

 あの夜、最後に交わした言葉。

『次は、絶対、逃がさないから』

 今でも、守るつもりでいる。

 逃げたなら、追いかける。

 消えたなら、見つけ出す。

 それが、私の選んだ生き方だ。

 窓の外で、サイレンの音が遠くに響く。

 また、事件が動いている。

 私は、コートを掴んで、玄関へ向かった。

「……待ってて」

 もう一度だけ、名前を飲み込む。

 まだ、終わってない。

 私たちの時間は。

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