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ふたりぼっちのヒミツキチより  作者: アゲハ


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2/2

後編 それからのこと

二人はお互いの顔を向き合った。


「え…」「あ…」


ナギサもツムギも生まれてから、この一生の中で一番驚いただろう。


まさかまさか。

お互いの顔や体型がドット絵じゃなくて、鮮明に見えてきた…!


二人は気づいてしまったのだ!!


「ツムギ、君、女の子だったの!?」


「あー…、ナギサって男の子だったんだね…」


もう二人はそのとき寝ようとしていた。


しかし、寝床はシングルより少し広めのベッドが一つだけしかない。

セミダブル…、ほど大きくは無い気がする。


こんなことを知ってしまったナギサはツムギと一緒に寝ることなんて出来ないと思い他の場所で寝ようとした。


「つ、ツムギ…、えっと…ぼ、僕、床で寝るね!」


「ダメだよナギサ。床なんかで寝たら風邪引いちゃうじゃん」


「いやいや、でも、ここ、ベッド、一つしかないよね…?」


ツムギはここで驚きの提案をしてきた。

もちろんナギサは驚いている。

ベッドの自分の横を指さして…


「じゃあ…ここで寝れば良いじゃん」


「え!?」


「ほら…ナギサの分の場所開けてるから入りなよ」


「あ、ああ…、分かった」


ナギサも疲れていたので、ツムギの言われるがままに同じベッドへ入る。

しかし、二人とも悶々とした雰囲気になる。


ベッドは狭い。

ナギサの体に、ツムギの胸の柔らかいところが当たる…。


「…」


ナギサは結構イケメンで、ツムギは結構可愛い。


同じベッドに入ってしまえば、若い二人が意識し合わないことなんて出来ない。


今まで見えなかったものは、『目』だけではないのかもしれない。

『心』も見えていなかったのかもしれない。


同じベッドに入ってしばらくたった。


『初めて』は、ツムギからだった。


「ねえ、私たちさ…、しない?」


「いや、ダメだよツムギ!?そんなの…、だって…」


「だってって何よ。どうせ私たち二人しかここにはいないんだよ?だから誰にも何も言われないんだよ?それに、私たちがしなかったとしたならば…さ」


「しなかった、ら…?」


「この仲間の系譜はもうどこにも受け継がれないんだよ?それに...戦争はまだ続く。何もしないまま死んじゃうかもしれないんだよ?」


「う、うう…」


ナギサは優しいとはいえ男の子。

もちろん、自分の欲には正直だ。

何もしないまま、このまま死にたくはない。


それに、今まで僕たちには先祖がいた。

先祖も、地中で暮らしを続けてきた。

そんな、先祖代々受け継がれてきたこの気持ちを僕一人が踏みにじってしまっていいのか?


でも、何年も一緒に過ごしてきた仲間。

急にそんな目で見ていいのか?


いろんな感情が交錯する。


でも、ツムギは人一倍優しい。

今まで過ごしてきてそれだけは感じている。


「じゃあ、僕…。ツムギに、していいの?」


「もちろん。ナギサだから、私は、嬉しいんだよ」


「じゃあ、僕たち、初めよっか」


その夜は、二人にとって、人生で一番長い夜となった…。



そしてそれから十年後のことだった…。



「ほら、お箸の持ち方はこうじゃなくてこうだよ」


「あー…、こぼしちゃったか…、拭こっか」


あの後、僕たちは安全のため、紛争地域から遠く離れた縁もゆかりもない場所へと引っ越した。


十年前、仲間はナギサとツムギの二人だけだったものの、今となっては仲間は五人。


六人目は今、ツムギのお腹の中にいる。


十年前のあの日の夜、二人は深く愛し合った。

それにより仲間は三人になった訳だが、今もナギサには引っかかっていることがある。


ツムギは、本当に僕で良かったのか…。

何気ない瞬間に、自信が無くなってゆく。


「ツムギ、本当にさ、僕で…、良かったの?」


そう聞くと、ツムギは微笑みながらこう言った。


「ナギサだから、良かったんだよ。ナギサは仲間が40人ぐらいいた時代からめちゃくちゃ頑張ってたじゃん。身を粉にして、体を削って昼夜問わず頑張ってる姿…、そして、みんなを統括している姿…、私はそれを見てナギサのことが好きになったんだよ?それで、あのとき目がちゃんと見えて、ナギサが男の子だったって、これからもずっと一緒にいたいなって思ったの。男の子であってくれて良かったよ」


そう聞いて、ナギサはなんだか安心した。

僕は、これで良かったんだな、と。



僕は、


私は、



今が本当に、幸せだ。




一時は二人まで仲間が減ってしまい、これからどうなるかと思っていた僕たちだったが、今となっては仲間は五人となり、六人目ももうそろそろ生まれてくる…。



幸せだって手にでにた。



これ以上望むものはもう、何もない。


今となっては紛争地域からは遠く離れた場所へと引っ越し、紛争そのものも少しずつではあるが、落ち着きつつある。



僕たちの人生という旅は、これからも続いてゆくーーー。


さあ、行こう。



(※男の人と女の人が一緒のベッドに入ると、たまに人が増えていることがあるぞ!)


おしまい。

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