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復讐の赤
少女は一命を取り留めた。
瀕死のところで御者が通りかかって助けられたのだ。
あの日のことは今でも鮮明に覚えている。
手の内の赤、剣に煌めく赤、横たわった相棒から流れ出た赤。
赤く、赤く、視界が染められる。
太刀打ちなどできなかった。
何もできずに奪われた。
ただ一度、相棒がこちらを見た。
「逃げろ」とでも言いたげに――それが最後だった。
それすら守れなかった自分が、ただそこに立ち尽くしていた。
彼はもう返って来ない。
宝珠と共に去ってしまった。
どうしてこうなったのかわからない。
わからないが、一つ確かなのは。
あの男が憎い。
憎い、憎い、憎い。
それだけだった。




