封印の間にて
白い回廊をメフェルは一人歩く。
監視役もつけないで、彼女は王宮の下へ下へと歩いていた。螺旋階段を抜けて薄暗い地下へと降りる。
同じ壁の白でも、その白は青白く、冷たく見えた。
コツコツとあるく音だけが響く。
彼女の顔は強張り、いつもの温和な雰囲気は形を潜めている。
やがて最深部に辿り着き、それは姿を現す。
地面に幾重にも描かれた紋様。
その下に伸びる管――世界樹の根。
メフェルの目的はその場所であった。
封印の間を彼女は確かめにきたのだ。
メフェルは床に描かれた紋様をなぞる。
その凹凸が指の腹に触れるたび、メフェルの心には苛立ちが募った。
世界樹の根が嘘をついているとしか思えない。
「燃えろ。」
短く、メフェルが言う。
途端、火が手から溢れ出て床を這う。
けれど床は無傷で紋様は薄く輝くばかりだ。
「やはり、エンルフの力が必要。」
そう言った彼女の瞳は仄暗く輝いている。
「世界は正さなければならない……あなたとの約束。けれどそれは……。」
続く言葉は、誰にも届かないまま喉で溶けた。
メフェルは静かに立ち上がり、深い息を吐く。
あの日、確かに彼に誓った言葉が、呪いのように彼女の胸に刺さっている。
そっと彼女は目を閉じると、その場を後にした。
階段を登る音だけが響く。
王都の地下で、誰も知らない物語が幕を開けようとしていた。




