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――望みを託して
空気を吸うたびに胸が苦しい。
ちくちく、ちくちくと音を立てる。
周りの景色が滲んで見えた。
赤、青、白、黄色。
その中に桃色のふわふわが見える。
「今日から一緒に旅をしましょう。あなたの名前は?」
檻の扉を開けて手を差し伸べた女は、誰よりも優しかった。
手を差し伸べてくれた。
いつも隣にいた。
背中をさすってくれた。
助けてくれた。
俺をこの地獄から、救ってくれる。
少し後ろに黄色の小さいやつが震えて待ってた。
並んで歩けば嬉しそうにして、睨めば縮こまる。
あいつも優しくて、ズレてて、まっすぐだった。
瞼の裏の光が強くなる。
誰かが俺を呼んでる。
「トカゲ、よく頑張ったな。」
――懐かしいゼンの声がした。
待ってる。
待っててくれた。
遠のく意識の中、最後にメフェルの笑い顔を浮かべる。
涙で濡れた最高の笑顔を。
どうか忘れないで欲しい。
望みを託して――俺は。




