異国の装い
近くの服屋になだれ込むようにして、一同は入った。
分厚い天幕が外からの日差しを避け、少しばかり涼しい。
白や生成りの布が吊るされた店内には、乾いた香草の香りが漂う。
足元には砂よけの長布や頭巾が積まれていた。
店主は一同を見ると、目を瞬かせる。
そして、顔を強張らせた。
まるで砂嵐でも入ってきたかのように。
それは火の国の者ではない外部の者を警戒する顔だ。
「ダルグリオ。」
イーヴァが軽く声をかける。
すると店主はじろじろと彼の顔を眺めて、その瞳の色を見ると眉間の皺を緩めた。
「アルダルエデナグ?」
店主が何かをイーヴァに尋ねる。
珍しくイーヴァが曖昧な笑みで返すと、店主は何かぶつぶつと唱えながら手を合わせた。
祈りのような仕草だ。
「なに、どうしたのいきなり。」
ミムラスがイーヴァのズボンの裾を引っ張っる。
「なんでもない、ただ挨拶しただけだ。」
「ただ挨拶しただけで、こんな反応されるのかしら。」
店主はメフェルに気づくと、深くお辞儀をする。
つられてメフェルはお辞儀を返したが、店主は挨拶をした訳ではなさそうだった。
奇妙なやりとりの中で、シーナはとりあえず、近くにあった布を手に取る。
サラサラとした触り心地が気持ちのいい布だ。
側には伸縮性のある不思議な黒い布の服もあった。
ラガルはその布が気に入ったようで、先ほどから手で遊んでいる。
「それはここらで取れる魔獣の皮だな。
意外と涼しいんだぞ。」
「へえ、詳しいんですね。」
シーナがイーヴァの方を向く。
「なにせ俺は旅が好きだからな。
サンオドアルに来たのも一回や二回じゃない。」
「じゃあアンタに任せておけば大丈夫って訳だ。
ねえ、服買うんでしょ?どれがいいの?」
ミムラスは大量にある布と服に囲まれながら、イーヴァに尋ねた。
だがどれもミムラスには大きい。
イーヴァは本人に言ったら怒るだろうなと思いつつ、赤子用の服を見繕うと、仲間の分と合わせて購入した。
*
「どうかしら?」
「似合ってますよ、メフェルさん。」
薄く肌の見える服に着替えたメフェルが、はにかみながら反応を聞く。
シーナとイーヴァは白い布を頭から被り、それぞれが選んだ日除けの服を身につけていた。
ミムラスも全身を布で覆うような赤子用の服を、そうとも知らずに着こなして満足している。
ラガルは、余程気に入ったのか先ほど遊んでいた服に着替えていた。
「お前、熱くないのか?」
肩から腕を大きく出した服装にイーヴァは、少し引いた様子だ。
ラガルは砂よけの布を口に巻くと、周囲を指差す。
「土地の流れと、合っていない。」
現地民に服装を合わせたつもりだったが、多くの人々はラガルのような軽装であり。
イーヴァたちのような重い服装の者は少なかった。
「……まあ、たしかにな。
だが、旅人丸出しの格好よりはいい。」
そう言った直後、メフェルが首を振った。
「いや、ラガルが1番目立つと思うわよ。」
「なんでだよ。」
「焼けてないもの。」
一同がラガルを見る。
白い。
火の国の者よりずっと白い。
「……浮いているのは、俺か。」
「うん。」
「はい。」
「間違いないな。」
全員に即答され、ラガルは少しだけ眉を寄せた。
「……土地の流れが、悪い。」




