銀が鳴る
ラガルの胸奥で、何かが軋んだ。
肌の内側に刻まれた呪紋が、熱でも痛みでもない感覚で、目を覚ます。
――殺せ。
ウラガフが踏み込むのが見えた。
イーヴァは即座に剣を振るう。
剣がぶつかり合う音がして、イーヴァの大剣が折れた。
「は!?」
そんな声が聞こえたような気がする。
即座にメフェルが杖を翳す。
「土よ、起き上がれ!」
ティーソエルを狙った攻撃だったが、横から女が現れると、少女を抱えて飛び去った。
「|インサウラヴァレド、ヨル《助かったよ、ヨルちゃん》。」
「|エラユワイルァイオルコル?《大丈夫?》」
ヨルは外套を振り払うとメフェルを睨みつける。
何かを唸るように呟いて、その巨躯から蹴りを繰り出してきた。
メフェルは杖で蹴りを受け止めるも、そのまま吹き飛ばされる。
咄嗟にシーナがその体を受け止めて、砂埃が舞った。
その間にウラガフはラガルへと詰め寄り、両者は睨み合っている。
「お前は選ぶ役じゃない。
封印を“開くか閉じるか”を決める器だ。」
一瞬、風が止まる。
ラガルは何も言わない。
「私の為に宝珠の封印を解け、それで全てのことは不問にしてやる。」
「それは聞けぬ。」
その瞬間、ラガルの胸奥で、銀が鳴った。
痛みではない。
声でもない。
――動け。
思考より先に、身体が反応する。
踏み出そうとした足を、彼は無理やり止めた。
殺せと言われたなら動けた。だが“決めろ”と言われた時、彼は立てなくなった。
選んだ瞬間、それは彼の罪になるのだ。
歯を食いしばる。
喉の奥で、獣のような音が鳴った。
「……我は」
言葉が続かない。
続ければ、命令に沿ってしまう。
ウラガフは、その異変に気づいていない。
ただ、苛立ちを強めて剣を向けているだけだ。
「どうした、コルプト。迷う理由があるのか?」
ある。
だが、それを言えば――。
ラガルは視線を逸らし、氷を走らせた。




