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銀の大地-死者に会える鏡を求めて-  作者: すけろくこぞう
開幕:欠落に触れる調律
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今のラガル

 部屋の中、ラガルを除く一同はアルラと話をしていた。

 低くなった日差しが、窓から差し込みリィマを照らす。

 その顔に色濃い影を作っている。


 アルラはリィマの笑顔を思い浮かべる。


 ――アルラ、アルラ。


 軽やかなあの声はもう聞こえない。


「……魔法は魔術では読み解けないわ。無理ね。」


 メフェルがリィマの胸に手を当てて言う。

 アルラは深い絶望の淵にいた。


「どうしてそんなに悲しい顔をするの、アルラヌリィ。」


 リィマが尋ねる。

 アルラヌリィと呼ばれるたびに心に棘が刺さった。


「ごめんなさい、私がもっとしっかりしていれば。」


 メフェルはあのとき、ラガルを恐ろしいと思って、声をかけることを躊躇った自分を恥じた。

 責任を持つと言ったのにその言葉を守れなかったのだ。


「いいえ、私もですから。それにこれはリィマ自身が望んだことです。」


 アルラはリィマの頬に手を添える。


「どれだけ共にいられるかはわかりませんが、私はリィマと共にあろうと思います。」


 そうアルラは言って、薄く微笑んだ。

 笑みは随分と痛々しかった。


「……彼のことですが。

 欠けた魂が、冥府に落ちた可能性があります。」

 

 アルラはメフェルに提案をする。

 その提案を聞いたイーヴァは顎に手を当てた。


「冥府か……。」


 それと同時にアルラの視線がリィマに移る。

 何を考えているのかはわからなかったが、その提案はメフェルにとって悪いものではなかった。


(冥府……どういう場所なんだろう。)


 シーナは冥府という存在をよくわかってはいなかった。

 メフェルが探していたヘレーの鏡というのは、冥府を写すと知っていたが。


(でも、魂は世界樹に還るはず。)


 教えられた信仰と違うことに気づいてシーナは混乱する。疑問を解消しようにも今は聞ける雰囲気ではなかった。


 だがすぐにその答えはアルラの口から語られる。


「――魔族の魂は世界樹の理にあらず、ですからね。」


 それを聞いてシーナは腑に落ちる、けれどまた新たな疑問が浮かんできた。


(どうして魔族だけ違うんだろう?)


 それを聞くのは禁忌に触れることのような気がしてシーナは黙る。

 けれどその口はわずかに開きかけていた。

 ミムラスは急に、何かを飲み込んだような表情をするシーナを見て不審に思う。


 だが、それ以上に彼女は気になったことがある。


 彼女は視線を机の上に落とすと、尋ねた。


「ねえ、それ本当に取り戻していい魂?」


 ミムラスの問いに場が冷える。


「欠けたままの方が、ラガルは“今のラガル”でいられるんじゃないの。」


 誰もすぐに答えられなかった。


 その問いは優しさでも悪意でもなく、

 ただ、あまりにも率直だった。

 

 ふとシーナが外を見る、けれどそこにラガルはもういない。

 ミムラスの問いだけが残された。

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